感想ツイートまとめ。引用多めですがすみません。
ASCII.jp:アマゾンで年間利益1000万円の衝撃――鈴木みそさんの場合 (1/3)|まつもとあつしの「メディア維新を行く」
で興味持ったので「ナナのリテラシー」買って読みました。内容盛りだくさんですごく楽しかった。
正直元値の700円でも安いと思うくらいですが、今セール中らしく400円で買えるし、プライム登録してる人だと無料で読める状態なので、オススメしておきます。
まずまおゆうのような導入から。熱い。
「それは 戦争だな」「独立戦争です。足首についた鎖を切るには勝って勝つしかありません。自由はそこにしか無いんです」「作者の作者による作者と読者と読者のための・・・・です」「そんなリンカーンみたいな話だったのか…」
「よくわからんから、ナナちゃんに任せるのでお好きな様に」「ダメです」「私は説明するだけで、作業は先生ご自身で進めていただきます。奴隷の鎖は、自らの手で断ち切らないと」
いままで他人に任せていたからお前は奴隷なんだ、またそれを繰り返すのか?と言わんばかり。でもハードル考えたらそのくらいの意識いるか
「私驚いたんですけど、出版社の社員の方で、電子書籍化の作業を出来る人が少ないそうですね。サーバー構築はムリとしても、EPUBの作り方くらい、女子高生でも数日でわかりますよ?」
煽っていく―!
作者と編集者と会社の関係の変化について
「お金では動かない関係が、皮肉にも、お金がなくなることで維持できなくなってきました」
この表現すげえ大事やと思う。
「出版社と作家が対立した時に、編集者は間に入って調整しますが、会社員なので出版社の利益のために働きます」
美味しんぼ問題の時にこれを揶揄する人多かったけれど、これ構造上の問題だし編集者を無能とかクズよばわりするのよくない。
「ナナのリテラシー」はこの構造変える提案にまで踏み込んでて面白い。
ブログでも、批判はわかったから、こういう感じで「批判スべき点」を踏まえて、じゃあどうするかってアイデアの話こそ読みたい。
その業界で飯食ってる人とちがって、外野からの無責任な声でいい。そういう話がもっと増えていくといいな、と。
私は「批判」がずさんだったら全力で叩きに行くけれど、「提案」とか「アイデア」はしょぼくても応援したいと思う。
老害っぽい発言をすると、若者や新人、ニートの人たちは「現状の批判や評価」はしなくていいと思うので
もっと希望や要望をどんどん述べていってもらいたいなと思う。 まぁそれが浮かばないからこそ愚痴が出るんだけどね…
「編集部を独立採算制にすればほとんどの部署が潰れます。仕事ができて作家との人間関係が作れている有能な編集者は・・・として独立できるでしょうが、普通の社員は…」
ネットの有名人の言論は、どうしてもここを無視して有能な人ベースで煽る意見が目立つ。
ただ、そういう意見はネット受けは良くても現実的ではない、と思う。
そういう意見があってもいいけれど、普通の人が生き残りを真剣に考えて、みたいな話が面白いよね。
ちなみに「ナナのリテラシー」1巻で扱われているミソ吉さんも割りと特殊な作家さんだとは思う。
「相談にきた二人は、出版社の重役でも社長でもない。先行きに不安になってる社員に過ぎないの。私達コンサルに望まれていることは、病名を診断することじゃなくて、どうやって生きていく気力を維持するかという方向を指し示してあげること。・・・・・こと。それがおしごと。」
実際にみそさんってアドバイザーとかコンサルさんとかから話とかどのくらい聞いてるんだろう。このあたり興味ぶかい。
巻末で「どこまでが事実だろうって思わせたら勝ち」って言ってたけどまんまと術中にはまっててクヤビク
「・・・はやめとけ。会社の法務がやめろってくらいアブねぇもの、個人で出してトラブったら、とぶぜ? アマゾンはまもっちゃくんねえだろ?」
このあたり、ニコニコやメジャージャンルの同人界隈で人気の人がAmazon進出する際に今後問題になってきそうだな―。
多分、大抵の人は出版社に取り込まれるだろうし、独立思考の人がいろいろトラブル起こしそう。
アマゾンは天使でも悪魔でもない « マガジン航[kɔː]
つきあいかたはちゃんと意識しておかないと、契約主義ベースの国の企業だからね。
「本来マンガ家が出来る仕事ってもっと多かったけれど、今まで細かい仕事を出版社は受けなかった。これからは、全国津々浦々に届く本だけではなく、・・・方向にシフトしていく。今まで仕事だと思ってなかったところに、商売の種があるもんです」
ここすげえ面白い。pixivの絵師さんを安く買い叩く問題がよく話題になるけれど、
大きな構造でいうと、買い叩かれないためには、このあたりから考えて、戦略持たないとダメなんだろうなと思う。
単なる電子書籍出版実践報告ではなく「女子高生・コンサル・作者の協力体制」という形でわかりやすく構成されているのがスゴイ
「初めてセルフパブリッシングに挑戦したオレは気づくと出版社になっていたんだが」
でもこの作品の女子高生とプロのコンサルのタッグという発想ほんとにいいなぁ。 「もしドラ」は女子高生の視点だけだったから、煽り能力は高かったけれど、どうしても高校野球限定にスポットせざるをえなかったし、その解決策も中盤まではよくとも後半は微妙で、応用がかなり難しかったと思う。「もしドラ」読んで忠実に実行するだけだと成果上がるのって多分体育会系のサービス業なんじゃないかなと思うし、その先の問題への対処とかどうなってるんだろう、て印象だった。
一方で、この「ナナのリテラシー」だけれど
①まず「現状の問題把握および、今後の大雑把な方向性」を、旧来の常識にとらわれない若者代表の女子高生が指摘する。
②業界通のコンサルの先輩が丁寧に仕上げる
③作者が実際に体験したトラブルに作中でも個別対処
という感じでホントコンサル受けてるみたいで非常にわかりやすい。
もちろん個別事例に特化してるのは一緒だけれども
①の段階の背景事情の掘り下げがあるので、自分で考える余地作りやすい。
実際は、作者が周りの人に相談したり試行錯誤しながら得た知見なんだろうけれど、
それをここまでこちらが飲み込みやすい形に再構成してくれてるのスゴイありがたい。
単なる実話ベースのルポのように淡々と絵描くでもなく、
かといってフィクションベースでむりやり理論通りに話しを薦めるでもなくで、
非常―に丁寧な作品だと思った。漫画家のしごとだと思った
これ並みのビジネス書10冊読むより、これ一冊繰り返し読むほうがいいと思う
「電子書籍は、より・・・な、・・・な作家を救います。みそ吉先生はその先鞭をつけます。変わりますよ、人生が」
「大化けするネタは、そんなところに有るはずがないと思ってる場所に何気なく埋まってるんですよ?」
プロの応援の仕方と、女子高生の励まし方、これどっちもいい。
ああーいいわー。 これほんとどっちも必要だと思う。
「褒め方」とか「励まし方」もよく一般論で語られるわけだけれど、
実際のところ、自分がどういう立場で、相手がどういう立場かによって
最適のものって変わるわけで、こういう時複数のキャラクターが
それぞれの立場から己の最善をつくすって形をとれるストーリーで説明するのはすごく便利だと思う。
というわけで、盛りだくさんでした。2巻への引きも非常に上手で、絶対続き買うと思う。
余談。
作中で作品のマーケティングについて語られてましたけど、実際いろんなところでこの作品紹介されてますね。
作中でさんざん最初のめんどくささは強調されているし、さらにこういうメディア対応もこなして、
ようやく利益1000万(印税率を75%と考えると売上1333万?)かー。どう考えるべきだろ。
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