みんなが読め読めいうので読んでみたのだけれど、ハイキュー!めっちゃ面白いですね。
もうほんとに全部面白いんですけど、10巻の月島くんのエピソードはすごい気に入ったのでメモっておきます。
月島くんは過去に色々あったせいで何かにのめり込みすぎることを恐れていて、周りのみんなが目標に向かって全力で突っ込もうとしている時でも常に一歩引いた感じで構えている。
仲間の体当たりの呼びかけによっていざがんばろうと決意はしたものの「他の人はなぜそんなにバレーにのめり込めるのか」がよくわからない。意識して頑張ろうとすることはできるけれど、どうしてもどこかでセーブがかかってしまう。主人公コンビのように「頑張らずにはおれない」「努力だとも思ってない」という状態にはなれそうもない。この月島くんの気持ちに、私はものすごく共感してしまった。
で、月島くんは、この疑問を他の人に直接ぶつけてみる。
「僕は純粋に疑問なんですが。どうしてそんなに必死にやるんですか?バレーはたかが部活で、将来履歴書に「学生時代部活を頑張りました」って書けるくらいの価値なんじゃないですか?
これに対して、それ言ったら全てが無価値だろ、ケインズの箴言かよってツッコミは簡単。
でもそんなことはわかってて、月島くんは自分のどうしようもない気持ちをぶつけるわけですね。
この時点で個人的にはかなりグッと来てるんですが、これについての答えが期待した以上によかった。
正直あんまり期待してなかったんですよ。直前で、谷地ちゃんが主人公コンビに似たような質問した時には「え?勝ちたい理由?負けたくないことに理由って要る?」「知るかそんなもん。ハラが減って飯が食いたいことに理由があんのか」みたいな答だったから。だからこそいままで月島が主人公コンビと咬み合わなかったんだよね。
でも、このお話では、月島が勇気を出してこの質問をはっきり表に出したことによって主人公コンビじゃなくて、敵チームのエースから答えを得ることができた。
「月島くんさ!バレーボール楽しい?」
「いや…特には…」
「それはさ。下手くそだからじゃない?」
「な…」
「俺は3年で、全国にも行ってるし、お前より上手い。断然上手い!」
「言われなくてもわかってます。」
「でも、バレーが"楽しい"と思うようになったのは最近だ」
「!」
「(楽しいと思えるようになったのは)"ストレート打ち"が試合で使い物になるようになってから。
もともと得意だったクロス打ちを、ブロックにガンガン止められてクソ悔しくてストレート練習しまくった。
んで、次の大会で同じブロック相手に全く触らせずストレート打ち抜いたった。
その一本で"俺の時代キタ!"くらいの気分だったね!--"その瞬間"が有るか、ないかだ。」「……」
「将来がどうだとか次の試合で勝てるかどうかとかひとまずどうでもいい。
目の前のヤツぶっ潰すことと、自分の力が120%発揮された時の快感が全て。--まぁ、それはあくまで俺の話だし、誰にだってそれが当てはまるわけじゃあねえだろうよ。
お前の言う、"たかが部活"ってのも、俺は分かんねえけど間違ってはないと思う。
--ただ、もしも"その瞬間"が来たら、それが、お前がバレーに嵌る瞬間だ」
身も蓋もない乱暴な意見だけど、
「なぜ自分は頑張れないのか」「なぜ自分は楽しめないのか」ではなくて
「どうすればそんなに楽しめるのか?」の答えとして
ここまでハッキリと、わかりやすく、自分の体験を交えて語ってくれる人はなかなかいないと思う。
そんでもって、この答え、上手く言えないけど、すごく希望があると思うんですよね。
性格とかトラウマとか関係なくて、自分が下手だから、「まだ」楽しめてないだけ。
つまり、自分がその気になれば、壊せない壁ではないということ。
自分は「楽しめない人間」でも「全力を出せない人間」でもないということ。
そういう意味での「下手くそ」であることって、なんか希望があると思う。
もちろん一歩間違えればこういう下の「十年泥」とか「要は勇気が」の話になっちゃうんだけどさ。
月島くんはバカじゃないからこういう理不尽な話はもともと避けられると思うんだよね。
「10年間は泥のように働け」 | おごちゃんの雑文
株式会社ヨドバシカメラの人事ブログの一覧|リクナビ2016|学生のための就職情報サイト
そのうえで、自分の壁を見出して、それを突破できれば楽しくなるかもしれないってストーリーはとても希望があると思う。
以前に「NOGAME NOLIFE」のイズナについても同じようなことメモったけど
「君は報われない幸せを知らない」 - この夜が明けるまであと百万の祈り
私はこういう「自分次第でなんとかなるかも、という希望」がある話が好きなんだと思う。<余談> スラムダンクがリアルタイムだった世代の人間としてのハイキュー!
この作品すげえ面白いんだけど、要素てんこ盛りでどう面白いのか語るの難しい。
言語化するのがめんどくさいからズルというか手抜きしてみると、
この作品は、ものすごく「スラムダンク」を読んでいた時の気分に近いと思います。
これは黒子のBASKETなど他のスポーツマンガを読んでても感じたことはないです。
こういう感じでワクワク感覚というか、スポーツ漫画に強く感情移入できたのは久しぶりな気がします。
しかもまだ10巻なんだけど時々スラムダンクで描かれたラインを先に行ってるな、って思う所がある。
例えば青葉城西戦の終盤を描いた8巻~9巻。
他者を信頼することを覚えた影山なんかは山王戦の流川くんにかぶるところがあるんだけれど、
むしろ最後の最後でその信頼を読まれて負けてしまった所なんかはゾクッとしました。
そして、その壁をどうやって乗り越えていくか、の試行錯誤なんかは
競技こそ違えど「僕が見たかったスラムダンク第二期」が展開されているのでは、などと感じて胸熱です。
スラムダンクリアルタイムで読んでた時は私は学生として実際にスポーツをやる側だった。
だから純粋に桜木や流川なんかに感情移入しながら読めばよかった。わかりやすかった。
でも、いまってなかなかそういう読み方は難しい。
今だとむしろ「ジャイアントキリング」とか「ラストイニング」みたいに
ちょっと引いた視点から作品のほうが読みやすいと感じるようになっていたのですが、
この作品はプレイヤーをどまんなかから描きながら、自分の心にグッと入り込んでくる感じがすごくいい。
そういう時に、この作品にはそういう「引いた視点のキャラ」であるとか、
「メインで闘ってる選手をサポートする側の立場のキャラ」
さらに、「その一番中心部分に素直に入り込めないキャラ」なんかも丁寧に描かれていて、
私はそういう入り口からこの作品に感情移入することができてるような気がします。
もちろん、この作品はスラムダンクとは別の作品であり、この作品はこの作品として楽しむべきなんだけど、手抜きしていうとこんな感じ。
さらに超余談なんだけど、青二才ことTM2501さんがやたらとブログにのめり込むのも、ここで言われてる「目の前のヤツぶっ潰すこと」と、「自分の力が120%発揮された時の快感」を感じられてるからなんでしょうね。なんでたかがブログにあそこまでのめり込めるんだろうってみんな思うかもしれないけど、こういうことなんかな、と。