頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

最近のこのブログのお気に入りは「アークナイツ」です
アークナイツ
kindleセールの紹介
新NISA解説ブログ
発達障害

「ダーウィンズゲーム」 どうしようもないクソゲーの中でもなんとか生存戦略を見出していくこと

俺はさ、思うんだよ。途中どんな道を辿ろうが最後に生き残ったやつだけが勝ちなんじゃねーのかって

最近はやりの「いきなり説明もなく殺し合いゲームに取り込まれてその中でサバイバルしていく」
という系統の作品です。私はこの系統の作品たいがいは好みじゃないのですが、そういう話をしたらこの作品はその中でも面白いということで他の人から紹介してもらいました。


タイトルの通り「適者生存」を軸にしており、単なるバトルものと比べると考え方に幅を感じせるところが良いと思います。


ソーシャルゲーム」の中で殺し合いゲームに巻き込まれる

ある日携帯に友人から「ダーウィンズゲーム」というソーシャルゲームへの招待が届き、その招待を受けたところ、いきなり殺し合いゲームに巻き込まれるという最近よく見かける設定。

この手の設定正直飽きが来てる上、どれも微妙な作品が多いのですが、この作品はこの手の設定の話(※余談1)としてはかなり面白いと思いました。



「ソシャゲー」としてみるとゲームバランスも運営も最悪というまごうことなきクソゲー

ゲームのルールはこんなかんじ。


①プレイヤーはポイントと個別に異能の力を与えられる。ポイントは1点10万円で換算できるほか、ゲーム内で使える特殊効果を付与してくれる様々なアイテムと交換することができる。

②「他プレイヤーとのバトル」を行い勝利するとポイントを奪うことができる。また「イベント」を達成すると運営からポイントが付与される。

③ゲームでは一度対戦が始まると中断することができない。一定時間以内に「敵を戦闘不能にする」か「降参させる」ことで勝利できる他、「制限時間を越えた時の判定」でも勝利できる。

④戦闘に敗れてポイントがゼロになるとアカウント削除=死亡する。逆に、降参したり判定負けしてもポイントさえ残っていればゲームオーバーにはならない

ソードアート・オンライン」などのMMOを題材とした作品とは違って、原則としてプレイヤーのレベルアップや新しい異能を獲得することは全くない(イベント報酬でのスキル獲得は存在する)。つまりいくら頑張っても個人としてのレベルアップはたかが知れている


⑥「クラン」を作成して複数で協力プレイをすることができる。対戦は1対1にかぎらず、複数複数でも可能というかほとんどこれが前提になっている。だがこれのシステム制御がどうなっているか不明瞭。ぶっっちゃけここの設定かなりガバガバである。

チュートリアルが不親切すぎる上、ネットワーク上にいる限りどこからでも通信対戦で試合を挑めるようになっており、初心者狩りを防ぐ仕組みは存在しないない(「シェルター」というアイテムを使って対戦を拒否することはできるがポイントを消費してしまう上、接近されるとそれも防げない)

Dゲームでソロが初戦を生き残るのは珍しい

感想としては、ソシャゲーの欠点、あるいは現実そのものゲームバランスの欠点でもあるけど

先行者利益があまりに強すぎる。先に開始してポイントを貯め、「クラン」を形成しているチームが圧倒的に有利で、後から入っても勝てる要素は殆ど無い。

・ゲーム開始時に与えられる「異能」の強さのバラ付きが大きすぎる上、特にステータス成長などがないためこの点でも強いスキルを持って早くその使い方に習熟したほうが圧倒的に有利。

・つまり、ほとんどの後発組(若者)は先行プレイヤー(老害)のエサになるように設計されている

と言った感じでゲーム設計としては極めて劣悪。

H☓Hに出てきた「グリードアイランド」なんかと比べるとソシャゲーとしての出来は非常に悪いです。フォローのしようもない正真正銘のクソゲーです(これは作者は意図的にそうしているのだと思われる)



どうしようもない「クソゲー」の中での生存戦略を考えるのがこの作品の楽しみどころ

繰り返すけれど、このゲームは後発プレイヤーにとってはクソゲー以外の何物でもない。

じっさいにしょっぱなから堂々と初心者狩りがまかり通っており、その初心者狩りを撃退しても先発プレイヤーの「エイス」というグループがその勢力を元に暴虐の限りを尽くしている。よく知らずにこのゲームに取り込まれてしまった主人公は普通に考えたらシステムにすり潰される虫けらのような存在でしかない。

だが、そんな最悪の状況でも、なんとか頭と限られた能力を駆使して生き延び、自分たちのリソースを増やし、少しずつそのクソゲーに抗って生き延びる選択肢を拡げていく。

この作品はそんな「生存戦略」がテーマになっている。

進化とはより優れた種への進歩を意味するわけではない。進化とはより環境に適応すること。

戦いに勝てなくても生存するための戦略はたくさんあるし、その生存戦略は発展させていくことができる

このゲームでは主人公の能力は特別強いものではない。また、主人公は後発組である。そのため「戦って勝つ」という戦略では絶対に生き残れない。「戦って勝つ」という発想しか持たない場合、上で述べたように

①本人の能力はゲーム開始時からレベルアップできない
②ゲームスタート時での能力に大きなばらつきがあること
③圧倒的に先行者有利という仕組みがある

という条件のため、絶対にどこかで行き詰まる。

でも、このゲームでは「戦って勝つ」以外にいろんな選択肢を選びうる。例えばこのゲームでは「逃げ」という選択肢がかなり有効だ。

何をふてくされているのか知りませんが、逃げまわって何が悪いんです?私はそうやって生き残ってきましたよ。自然界において、逃げるは戦うより生存戦略としてむしろ一般的です。このゲームにおいてもそうです。判定勝負になった場合、プレイヤーの危機回避は芸術点として評価されます。挑戦された側のプレイヤーは大怪我をセず逃げ切りさえすれば大抵判定勝ちになるんです。

他にも「交渉」「協力」などを使って、少しずつ「チームとしての戦力」を強化し、さらに戦略の幅を拡げていくことが可能になるし、同じ「逃げ」という戦略をとるにしてもその効果をアップしていくことができる。むしろ、こういった方法を使わないと、自分自身の能力を大幅に強化する方法がない以上詰んでしまう。

感謝します。ホテルであなたと出逢えたのは幸運でした。このイベント間違いなくソロじゃにげきれませんでしたよ。

このゲームはあまりにもシステムも運営もクソなので普通にやったら絶対に詰むが、こういった感じで工夫すればなんとかかんとかギリギリ生存することができるようだ。


まとめ。

・「戦って勝つ」以外に目を向ければ、詰みにしか見えないゲームにも活路を見いだせる。
・ただしコミュ力必須。コミュ力とは、生存戦略を拡張していける力である。



有能かつ能動的に動く主人公は見ていて気持ちが良い

こういう作品なので、このゲームの主人公はなかなか見ていて気持ち良いです。俺TUEEEEで敵を虫けらのようにすりつぶすわけでもなく、状況に翻弄されてあたふたしているだけでもなく、常に「生き延びる」ことを目指してあがき続ける。それでいて、きちんと信念をもって行動している。

あんたは確かにめちゃくちゃ強いよ。殺しにかけてはひょっとしたら世界一なのかもな。だけど殺しじゃ解決できないことだってたくさんあるだろうが。俺は殺さなかったからこそここまで来れたんだ。殺すしか脳がないやつの風下にたつ気はねえ

こういう主人公はなかなか気持ちが良いものです。


そんなわけで、現実というクソゲーの中で行き詰まってる人は、一度この作品を読んでみて「自分の生存戦略」を見なおしてみるのも面白いんじゃないかと思います。









余談1 「この手の作品」について

この手の作品、なぜかわかんないけど主人公は「いいやつ」だけど「受け身」だったり「煮え切らない」タイプが多いです。「誰も傷つけたくない」とか「大事な人を守りたい」みたいな要素だけ突出してるけど、身近な人間に危機が迫らない限り能動的に行動しなかったりする。

*1

いくつかの作品では後で主人公が覚醒したりしますが、全般的には理不尽な状況に翻弄されてそれに対していいひとやってたら仲間の人が犠牲になってなんとか助かる、みたいのを繰り返すことが多い。次から次へと手を変え品を変え脅威を登場させれば次へのヒキを作りやすいというのでいいのかもしれないですが、私としてはある程度主人公視点からみて状況をコントロールできないと読んでてツライものがあります。

ひどいものになるといつまでたっても主人公が能動的に物事を解決しにいく、という展開にならない結果として、途中で夢オチとか超常現象によって解決、みたいなオチになってしまうケースもあって、もうちゃんと完結するまではこの手の作品読んだらあかんかなって思ってしまいます。

①「自分たちのちっぽけな力ではどうにもならないような理不尽な状況」を描くみたいなのは、不況や震災などで無力感を感じる今の時代のテーマとして適しているのかもしれませんが、一方で
②「そういう理不尽な状況におけるサバイブ」において大事にスべきもの、作者が訴えたいもの

が最後までよくわからなかったりするとかなりがっかりします。

ちゃんと「対人」要素が取り入れられることによって、主人公がちゃんと能動的に動くような話の方が見応えあると思います。「fate」とかもそうだし「月見月理解の探偵殺人」も好き。


余談2 FLIPFLOPSさん懐かしい!

私にとってFLIPFLOPSさんといえば東方同人で「異聞」シリーズやってる頃からちょくちょく読んでた人なのだけれど、東方同人の頃と比べるとだいぶ絵が違っててびっくり。「猫神やおよろず」についでこれもアニメ化するのかな?

「異聞紅魔郷」においてこういう会話があったけど、このあたり「ダーウィンズゲーム」に通じる所あるかも。とにかくまず「選択肢を持つ」ことが生存戦略の基本だと思う

博麗霊夢「もう悪さするなよ」
チルノ「な 何で殺さないんだ!?」
霊「だから言ったでしょ 遊んであげるって それとも 殺されたかったの?」
⑨「こ 殺されたくなんかないけど・・・!」
霊「ならいいじゃない それじゃあね」
⑨「なんだよッ! お前本気じゃなかったのかよッ!
  こっちは 死ぬ気で戦ったのにッ!!
  お前の気分で殺されたり 生かされたりしてたまるかよッ!!
霊「残念だけど今のあんた達じゃ 私から選択肢を奪うのは無理ね」

*1:自分がイメージしてるのは「バトルロワイヤル」「エデンの檻」「BTOOM」「神様のいうとおり」「王様ゲーム」「シークレットゲーム1」「ハカイジュウ」「DOUBT」「ハイスクールオブザデッド」「人狼ゲーム」「奴隷区」あたり。もっとたくさん読んできたはずなんだけど頭に浮かんでこない…。