「RE-TAKE0」　欺瞞に満ちた醜くも美しい世界を憎むべきか、それとも……

私はまだ取り返しがつくはずなので頑張りたいし頑張らなければいけない

この「私」はまだ知らないのだ。
＜碇シンジ＞は、＜惣流・アスカ・ラングレー＞を決して受け入れない。
最後は裏切られ、見捨てられるということを。
そんなシンジをあの「私」は信じるというのか。馬鹿馬鹿しい。

このセカイはシンジに決して救いを与えない。
シンジが持てるチカラの全てを出し尽くし地べたにだらしなく這いつくばったところで
かろやかにステップを踏みつつ真実を教えてやろう。
ごくろうさん、でもあんたの行為は最初から無意味だったのよ。
あははははははははははははははははははははははははははははははは
その時アイツはどんな顔をするんだろう？想像するだけでゾクゾクする

皮肉なことに、私の声は「私」に伝わらない。
間違った選択をしようとする「私」を正すことは出来ない。

許せない。
私が死んだ時には、黙って見てたくせに
私のためには指一本動かそうとしなかったくせに
あの時世界で一番可哀想だった私を
ただ幸せになりたかっただけの私を
見殺しにしたくせに。助けてくれなかったくせに。
逃がさない。
こっちの世界へ帰ってくるのよ。
そしてまた…絶望しなさい

この顔だ。やはり碇シンジにはこういう顔がよく似合う。
これでやっと、世界で一番醜い私のシンジが帰ってくる。

知りたくもなかったのに気づいてしまった……わかってしまったことがある。
私があの二人を見てずっと不快だった本当の理由。
私は認めたくなかったのだ。
シンジが受け入れなかったのは、惣流アスカ・ラングレーという「存在」ではなく私だったということを。
知りたくなんかなかった。私達にこんな可能性があったなんて。こんな未来もあり得たなんて。「私」は何も－－－間違えてなかったなんて
私は……どこで道を間違えてしまったのだろう。
今の私にはもう思い出せないし、その意味もない。
こんな姿に成り果ててしまった私はもう今さらそれに気づいたところでやり直すことなんて出来ない。
一体…どれくらいの月日が流れたのだろう。この見難くも……美しい世界が生まれてから。

最終的には、シンジもこの優しい世界を否定する。いつまでもこの世界にとどまろうという誘惑を否定する。

でも、その決断は決して後ろ向きなものではなく、その決断にたどり着くまでこの優しい世界の存在は確かに意味があった。

ずっと優しい世界に閉じこもるのは正しいことではないかもしれないが、傷つきすぎたときには一度立ち止まって休むことが必要なことだってあるだろう。

その後再び立ち上がれればいい。

頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの？」（ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語）

「RE-TAKE0」　欺瞞に満ちた醜くも美しい世界を憎むべきか、それとも……