頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「蝶の道ゆき」  うつし世は夢、夜の夢こそまこと

1巻で読みきれるけれど非常に面白い作品でした。




この作品のメインとなるのは、遊郭で一番人気である圧倒的に美しい女性。彼女が何を考えているのかは誰もわからないが、その美しさは関わるものすべてを惹きつけられずにはいられない。しかも彼女はカネさえ払うのであればどんな人間でも拒まず受け入れる。偏屈な老人であろうが、不器用な侍であろうが、彼女の前ではつい心をひらいてしまう。
故にみなが彼女を求めるが、彼女は遊郭における一夜という「夢」の世界においては誰のことも受け入れるが、現実においては決して誰のことも受け入れないし誰にも心の中を明かさない。現実の彼女は全く見えないのに、夢における彼女は紛れも無く魅力的である。
いったい彼女の心はどこにあるのか。どうすればそれをつかめるのか。そうやって何人もが彼女という沼に沈んでいく。

序盤は並ぶものがないほど美しいが故に、「遊郭」という男の欲望を食い物にして生きる場所に君臨する存在として、彼女はとても恐ろしい存在のように感じる。彼女のような存在は地獄に落ちるべきだと敵視する男も登場する。

しかし後半になり、彼女の素性や目的が明らかになっていくと、印象はひっくり返る。


・本当に恐ろしいのは誰か。
・誰が誰を食い物にしているのか。
・人間らしいといえるのはいったいどちらなのか。


このあたりはぜひぜひ読んで見て欲しい




<補足>
歌舞伎に「蝶の道行」という演目が有ります。

美しい花々が一面に咲き乱れる大和の野辺、置きは「世の中は夢か現かありてなき蝶となりしが」と唄います。現世で結ばれなかったふたりが、生前の姿で登場し、ふたりの出会いや共寝をした喜びを踊ります。死後、蝶となったふたりが、昔をしのび道行する、という幻想的なかたちで進行していきます。後半は、ふたりとも蝶に化身して狂い、「修羅の迎えはたちまちに」と、地獄の業火に焼かれる責め場となります。最後には、「夢に見る草の露」で、ふたりは静かに重なり合い息絶えていき、幕となります。

http://www.nihon-buyo.com/2006/02/post_39.html

https://www.youtube.com/watch?v=9jUt7no9mcY

義太夫『蝶の道行』 山村流愛ふみ派 家元山村昇 山村昇香 - YouTube


この作品は、もちろんこの演目を意識していますが、必ずしもこの演目をなぞるような話ではないです。むしろ、この作品はこの演目の状況の前の段階を描いている感じ。