マリオメーカー問題や互助会について大真面目に騒いでる人たちについて思ったことを書こうとしたけれど、「言いたいことはわかるけど正直それほど関心がない」という結論しか出なかった。この「私はこの問題についてそれほど関心がない」ということを書くのは難しいので困ったな……と思っていたのだが、そんな時ちょうどいいものがあるぞ、と思い出したので森博嗣の「つぶやきのクリーム」という作品からとあるエッセイを紹介したい。
それが「今コーヒーを飲んだら眠れなくなるという人は平和だ」という短い文章だ。
コーヒーはともかく、「○○すると眠れなくなる」「○○のおかげで眠れない」とう物言いは頻繁に耳にするところだが、その殆どは「寝ている」のである。本当に眠れなかったというケースはめったにない。単に寝付きがやや遅い(せいぜい5分か10分程度)というだけのことだ。どうだって良いレベルである。「眠れない」と訴える人は、それほど眠ることを大切にしているわけで、つまりはよく寝る人なのである。寝ることが心地よく、寝ることが大好きで、もう趣味と言っても良いくらい「いつまでも寝たい」と願っているから、ちょっと眠れないだけで苛立つのかもしれない。
同じようなことが、「食べられない」という物言いにもある。口内炎が出来てしまったとか、歯が痛いとか、腹の調子が悪いとか、そういうたぐいのことで「食べるものも食べられない」と訴えるのだが、もちろん、殆どの場合はそれなりにちゃんと食べている。おいしく食べられない、楽しく食べられないということらしい。これも、食べることに価値を見出している人だからこそ、その楽しみを少しでも奪われたくない、完璧な状況で楽しみたい、という欲求だろう。 (※もちろん、両者ともに、本当の病気で眠れないとか食べられないという場合もある。そういうのは別格である)
僕の場合、眠ることや食べることが人生の目的だとは考えていない。生きるためには眠ること食べることが必要だから、ある意味では「仕方なく」寝ているし食べている、という感じがしている。だから、眠れない、食べられないという話を聞くと、だったら寝なければ良い、食べなければ良いではないか、と素直に思ってしまうのである。寝なければ、そのうち眠たくなるし、食べなければ、そのうち食べたく成るのだろう、という理屈なのだがいかがか。
僕はブラックコーヒーを1日に5杯は飲む。寝る前にも飲んでいる。いまのところ、コーヒーを飲んで目が醒めたという経験はない。カフェインが効かない体質だろうか。眠くても起きていなければならない時には、まず寝ることである。少し寝れば、眠気はかなり収まる。車を長時間運転するときには、これが一番良い。コーヒーはリラックスしたい時に飲む。どうも逆のような気がするけれど、僕にはそういう装置なのだ。でも、リラックスしながら、いろいろなことを考える。これがカフェインの効果だろうか。
さて、このエッセイだけを引用して終わりにすれば、読んだ人は私がマリオメーカー問題や互助会で騒いでる人たちを否定しているように思うだろう。そうじゃない。逆とまでは言わないが、否定するつもりはない。
「あなたたちがニコニコのランキングの秩序や、はてなブックマークに信頼性について他の人間よりも価値を感じていることはよくわかった」と言いたい。
だけれども。同時に。
あなたたちの言っている問題は、「コーヒーを飲んだら眠れなくなる」と言ってる人間と同じだよ、とも言いたい。
ランキングやら、はてなブックマークに君たちみたいにやたらと価値を見出している人は、そんなに多くないよと言いたい。
毎回毎回ちょっとした不都合が起きる度に「ニコニコ終わった」だの「はてな終わった」だの騒ぐあなたたちは、傍から見たら近視眼的すぎる故にオオカミ少年になってるよ、と言いたい。(今回が特別ならその特別性をちゃんと説明しろってこと)
マリオメーカー問題なんてないよ - 最終防衛ライン3
はてブックマーク妨害ごときで殺害予告するような狂人のごとき振る舞いは、たとえネタでもやらないほうがいいよ、と言いたい。
「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり」「偽りても賢を学ばんを、賢といふべし」 - この夜が明けるまであと百万の祈り
個人的な問題なら個人的な解決策を見い出せばいい、と言いたい。
みんなの問題だという割にはあまりにも個人的な感傷に寄りすぎていてみんなに伝えるつもりが微塵も感じられないので、それだけだと「じゃあ見るのやめれば?」って言われるだけだよ、と言いたい。
でも最後に、そういう感傷に全力で身を任せて他人のことなどお構いなしに自分の思い込みを全力で語ってしまえるお前らのことが好きだし羨ましいし憧れるぞ、と言いたい。
「今日も平和なはてな村」ってタグ、最近見かけなくなったけど、こういうつまらないことで真剣に議論してるのははてな村のいいところだったんだよなぁ……。こういうのきらいじゃないぞ、あんまり興味ないけど、と言いたい。
……以上森博嗣の「The Cream of the Notes三部作」のステマでした。
この本は私の知り合いの女性がバイブルのように大事にしている森博嗣のクリームノートシリーズであり、私も熱心に布教されて読んだのだけれど、本当に面白いのでオススメ。
1冊につき100のお題について短めのエッセイが書かれており、一つ一つが「正直者がバカをみるのは、その正直者がバカの時だけである」みたいにズバズバ切り込んでくれてるので爽快だ。
私はこの記事で森博嗣のエッセイを引用しているわけだけれど、同じ本の中に「偉い人の話を聞いて、それをそのままブログに引用しても、これっぽっちも偉さには近づけない」という章がある。得意気に彼の文章を引用してそれに乗っかかって語ってるだけの私はきっちり全否定されてるわけだ。また、別の章では、もし私がこういうことを書くのであれば、ブログで毎日マンガやアニメのことを書いてる私も、興味ない人から見られたときに「お前がこれに価値を感じているのはわかるが私は興味ない」という感じでスルーされることを許容しなくてはいけないぞ、というアタリマエのことを非常に面白く語ってくれている。
こんな感じで自分を肯定したり気分を持ち上げてくれる一方、きっちり否定したり落としたりもしてくれる。本の中に「波」があるので、その時々の気分によって読書感が変わって何度も楽しめる。一粒で何度もおいしいと思う。
ただ、この本の話を何度も読んでると、本気でブログを閉鎖したくなるかもしれないので、自分のブログが面白いと思ってる人は読まないほうがいいかもしれないですね。