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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「こころを病んで精神科病院に入院していました」を読んで「自分を大切にする」ことの本当の意味を考える

ここで過ごした3ヶ月間は、今まで私が否定していた「自分を大切にするということ」を教えてくれたのです。

統合失調症で入院していた作者が精神科病院での回復の過程を描いた作品ですが、この作品は「精神病院」や「統合失調症」に興味がなくても是非多くの人に読んでもらいたいです。記事のタイトルにあるように精神の病気を患っていなくても大事なことを感じられると思います

精神のサイクルが「悪循環」から「良い循環」に変わるだけで、ここまでよくなる

この作品は「精神病院での生活を知る」「統合失調症の人間から見た世界の景色」という特殊な世界を知りたいというニーズも満たしてくれるが、それ以上に、人間として普遍的に直面する心の問題について非常に丁寧に描かれているからです。

①作者はなぜ自分で自分を傷つけるようになってしまうのか(受け入れなければならない事実とは何か)

②自分で自分を傷つける状態から立ち直っていく際に必要な考え方、必要な援助とは何か

③立ち直る過程において、作者が普通に生きる際に最も大切だと思ったことは何か

そういうことが描かれています。

Web上では、心を病んでいる人のブログを良く見かけます。私は結構そういう人のブログをよく見に行くのですが、みんな、私なんかよりずっと真面目で頑張り屋さんだと思います。自分に対して真剣に考えてない人はあまりいない。自分で今の状況を少しでもよくしようと頑張ろうとしてる人がほとんどです。でも。それが空回りしていることも多いなと正直思うのです。「何か、人間関係や自己認識に対してうまく付き合えないから心を病んでしまった」にもかかわらずその「うまくいってない心理状態」について、何が上手く行ってないのか、どうすればよいのかをよくわかってないままの状態でよりいっそう頑張ろうとしてしまう。でもそれは、頑張れば頑張るほどより悪い方向に進んでしまっていて「なにもしないで休んだ方がよほど良い」という結果になっていることも多々ある。

もともと頑張り屋さんなので何が大事なのか、どっちの方向に進むのが良いのか。それさえ合っていれば、元々真面目で頑張りやの人が多いので、うまくいきそうなのに、何が必要かがわからず自分の思いつきで問題に対処しようとする結果、よくない結果やフィードバックばかりを受けてより悪化している人、というものもよく見かけます。私も、大学時代はそんな感じで、頑張ろうとすればするほど悪循環になっていたと思います。

この作品の場合「なぜ悪循環になってしまうのか」「何が問題でやめるべきなのか」という仕組みの理解と「そこからどうすれば良い循環に変わるのか」について体験を通して作者なりの理解を描いてくれているのがとても良い。この本で書かれていることが全ての人に当てはまる正解ではないと思うけれど、「悪循環」が「良い循環」に変わるだけで、これだけ状況は好転しうるのだという全体像のイメージを具体的なストーリーを通してつかめることは、今こころの病に苦しんでいて「私は本当に良くなるんだろうか」と悩んでいる人にとってとても強い励ましに成ると思います。しかも、こころ病んでる最中はあまり難しい本を読めない人もいるので、やわらかいタッチのマンガで書いてくれているのはとてもありがたい。


自分で自分を傷つけたり、過剰に傷つきやすい状態になっている状態から「一人で立ち直るのは難しい」ことを受け入れる

「②自分で自分を傷つける状態から立ち直っていく際に必要な考え方、必要な援助とは何か」については紹介します。第5話や、第9話以降で語られていますが、第5話はWeb上で見れるのでよかったら読んでみてください。

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=manga&illust_id=51033160

作者が入院した原因は「自殺未遂」と「統合失調症」ですがそれ以外にもかなり深刻な症状を複数抱えていました。

・生来の吃音によるコンプレックスが非常に強くいじめを受けなにかちょっと出来ないことがあっただけですぐに自分が人間として失格であるように感じてしまうようになってしまいました。中学の頃からはいじめられないために自ら「道化」「間抜け」キャラを演じるようになり、
みんなからバカにされるのが当たり前で、そうすることによってしか自分は受け入れられないと感じるようになります。さらに、作者はその頃読んだ太宰治の影響もあって積極的に自分を傷つけたり貶めたりすることに快感を覚えるようにまでなってしまいます。 「精神的なリストカッター」とでもいうべきか「自己イメージが低い」どころではなく「自己を否定する・自分が否定される」ことにむしろ快感を覚える状態にまで歪んでいた。だから、普通の人ならたいして気にも留めないちょっとしたつまづきでもすぐに自分を強烈に否定してしまう。

これは病院生活の初期でも顕著に描かれています。病院は作者と同じような境遇の人たちで、誰も彼を責める人などいない。それでも作者は自分で勝手に、自分と他人を比べ、自分が劣っていると責めて自ら傷ついてしまう。そういう状態までなってしまうと全ての思考が苦痛につながっていたわけですね。

それが親だったり、クラスメイトだったり、先生だったりすると「合わない自分が悪い」と思い込む強迫観念が僕はすごく強かったから負い目を感じてしまうんだよ。

悪者になっちゃいけないと思ってたからオタクの中でも硬めな趣味のものにしか手を出せなかったり、理屈っぽくこじらせた方向に走ってしまった

http://tm2501.hatenablog.com/entry/2016/03/02/213000

ここまで歪んでしまった人は、いったいどうやって立ち直っていけばよいのでしょうか。


「自分を大切にする」って言葉で言うのは簡単だけど具体的にはどういうことなのか?

いいんですよ。泣いてください。ここにいる人はみんな最初は泣くんですよ。
男性も女性も区別なく。若い人もご年配も。全員が泣くんです。

心を病んでしまった人は「自分には何が足りないか」「何が出来ないか」ということは一生懸命考えます。でも意外と「何が自分にとって不要か・邪魔になってるか」ということをなかなか考えられない。また、自分を変えるというと「間違った自分を徹底的に否定して違うものに作り変えなければならない」というように考えてしまいがちです。でも、そうではない。「自分」は変えようとしても変えられない。だから自己評価を「まっすぐ受け止められて、肯定できる」ところまで段階的に引上げていく。「自分を大切にする」とはそういうことなのだと感じました。

この作品での流れを大雑把にまとめるとこんな感じです。これが「自分を大切にする」ことの第一歩になります。

「自分にとって不要なものを捨てる」
 ⇒「自分を苦しめている強迫観念に気づきそこから離れる」
 ⇒「自分で自分にウソを付くことをやめる」
 ⇒「自分をまっすぐ見て受け止められるようになる」
 ⇒「自分で自分を否定することをやめる」
 ⇒「自分の悪い点だけでなく良い点も認められるようになる」

作品中にはまだ続きがあるのですが、まずここまで進めば、少なくとも「マイナス面」ばかりを見て自分で自分を傷つけることからは遠ざかれるはずです。そして、ここまで進むためには、途中で「悪い刺激やフィードバックを受けやすい環境」から遠ざかり「良いフィードバック」を受けることが重要に成るのではないでしょうか。今自分は周りからどういうフィードバックを受けているかを振り返ったり、本当はこういうフィードバックが欲しいのだ、という理想のイメージをこの本読んで得られると良いかなと思います。




おまけ。自力で頑張ってみようとする人に自分が読んでてよかったと思った本を。

活字が読むのが苦にならない人はこのあたりの本めちゃくちゃおすすめです。私がブログずっと書いてるのって今でもこの時の書く習慣の一貫だと思ってます。



余談:この作品はpixivで途中まで読むことが出来ます。

http://www.pixiv.net/member_illust.php?id=112762&type=all&p=2

作者がwebで公開しているリメイク前の精神病院と合わせて読むと、体験には色々な角度があって色々な表現方法があるのだなと感じさせてくれる。リメイク前は鋭くて痛みが強くて描くための漫画だと感じたけれど、本書は温かくて読みやすくて伝えるための漫画だと思った。再生の物語。