吉田氏もT氏も政府債務は返済されるべきというおかしな観点から議論しているが、海外を考えなければ政府債務がなくなる時とは経済を回すお金もなくなる時。
政府債務は「借金」とは違うというのはわかる。適切な額ならばむしろあったほうが良いとも思う。
「国債は政府の借金であるにすぎないし、国民の借金ではない」ことはわかっている。
「日銀に通貨発行権があること」「統合政府で見れば、金融政策の結果政府の借金は減ってきていること」もわかっている。
ただ、やはりいくら何でも今は「額が大きすぎる」「短期間で急激に増やしすぎ」なのではないかしらと感じている。
大前提として、国債の発行額=国民が返さなければいけない金、ではない
日本の国債の保有者内訳をグラフ化してみる(2016年)(最新) - ガベージニュース
だから国債発行額は「国の借金」ではなく「政府の借金」と説明すべきだと何度以下略 - 【ネタ倉庫】ライトニング・ストレージ
くだけた例えで表現すれば「日本家の家計には955万円の借金(負債)があります。しかしご近所さんから借りているのは51万円だけです。後は同居しているおじいちゃんや、自宅から職場に通っている息子たちから借りています」となる。そして「日本家全体の」借金(負債)は、おじいちゃんや息子たちの立場から見れば「それぞれの債権(資産)」に他ならない。
これは個人事業主なら、社長本人の資産を会社に貸し付けているようなもの。
こういう問題もありますし、そもそもB/Sという観点で見たとき
負債というのは必ずしも返さなければいけない借金のようなものではない。
つまりゼロにする必要は全くありません。
むしろそれが資産や利益を増やすためにつながるのであれば全然問題ない
現在の資産と負債の関係は資産930兆に対して負債1371兆となってるけど。正直内訳はよくわかんない
http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2014/national/fy2014-renketsu.pdf
資産930兆(現金50兆、有価証券310兆、固定資産267兆)
負債1371兆(うち国債残高が716兆、郵便貯金177兆、公的年金預117兆)
となっているんじゃないかな?
ただ、企業のB/Sと違って項目が特殊すぎて、この数字が妥当なのかどうか私には判断しかねます。
とりあえずこの数字が正しいとういことにしましょう。
現在の債務超過の金額は、国債を買う金融市場に受け入れられた結果です。その金額が多いかどうか。世界一多くても、国債の金利高騰がなく、乗り越えられています。問題になるのは過去ではない。将来の純債務の増え方です。
プライマリーバランスは相変わらず大幅マイナスだが「統合政府として見れば」、金融政策の結果政府の借金は減っていっている
「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう! この国のバランスシートを徹底分析 | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]
政治経済:オピニオン:教育×WASEDA ONLINE
そもそも政府の財源には
(1)税金
(2)国債
(3)貨幣発行益の3つがある。ところが、日本の政策当局はこれまで(1)と(2)のみが財源であるとの思い違いをしてきた。それゆえ、景気回復のために国債を財源とした政府支出を行い、景気回復の兆しが見えると、財政赤字を減らすために増税し、景気を後退させるということを繰り返してきた。これではいつまで経っても、デフレ不況から脱却できるわけがない。
日銀が国債を買うことによって、国債残高が減ると言うのは、日銀と政府を連結で見た「統合政府」を想定したときです。
マクロ経済学の教科書にもあるのがこの統合政府という考え方です。日銀を政府の子会社として考えると、統合政府になります。
というわけで、相変わらず日本は慢性的に税収に対して支出が上回っています。
しかし、(3)の貨幣発行益というのを考え、政府が日銀を連結した状態で考えれば、日本政府は自分でお金をたくさんすることによって自分の借金を減らすことができてるよ、という話です。お、おう……。
国にとっては国債は負債だけど、日銀にとっては国債は資産だから、連結しちゃえば相殺するじゃーんってことですね。ついでに、国債を買うためのお金は日銀がいくらでも刷れる。これなら、発行した国債を全部日銀が買い占めちゃえば「政府が発行してる国債なんてなかったんや!」ってことになりますね。
実際、この3年で日銀が保有する国債は短期間で2倍以上に膨れ上がり、日銀のB/Sも大幅に膨らんでいます。
そのせいで、日銀そのもののP/Lを見ると収益が大幅に悪化しているように見えるのですが本当に大丈夫なんでしょうか?
第131回事業年度(平成27年度)決算等について :日本銀行 Bank of Japan
金融政策によって「政府の借金はなくなる」という話はどこまで正しいのか?
高橋洋一氏「日本の借金1000兆円はやっぱりウソでした」論は本当か?=吉田繁治 | マネーボイス
高橋洋一氏の「政府の借金1000兆円はウソ」を信じたい人たちへ | 小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! | Klug FX(クルークFX)
結論から言うと
「インフレが起きない限りは大丈夫」
「でも、日銀が国債を買えば買うほどインフレのリスクは高まるよ」
ということになります。
つまり、完全なチキンレースですね。
インフレさえ起きないならば、どこまでもやればよいということになります。
でも、途中でハイパーインフレが起きたら日本政府は財政破綻になります。
その際に、政府が負担しきれなった時、はじめて「政府の借金」は「国民の借金」になります。
そうなる前に、何とか出口を見つけることで
「統合政府として」ではなく「政府単体で」国債を減らせればよいのですけれどね……。
国債の額が巨大である限りは物価上昇=インフレはやりにくい
金融政策は本来2%をターゲットとしてインフレを起こすことで
経済を刺激したり、市中銀行が積極的に行うことを促し
それにより20年間停滞し続けているGDPを上げようというものでした。
ところが、政府の財政という意味で見れば、インフレは困るわけですね。
せめてプライマリーバランスがプラスになってない状態でインフレになると
政府の財政が不安になるため、日本国の信用が下がる。 国債の利率が高くなってしまう。それは困る。
そういうわけで、
①国債を日銀が買い支えることで国債の利率を低く保っている間に
②なんとかして素早くインフレを達成し、景気を刺激し、税金も上げる
という両方をやらなければいけなかった。
アベノミクスはよく「アクセルを踏みながら同時にブレーキを踏んだ」と言われますが、実際に政府としてはこの矛盾を抱えていて、景気の刺激が思ったように進まないまま矛盾した増税政策を強行した結果、ご覧の有様になってしまったような気もしますね。
株式市場ではバブルのような現象が起きる一方、景気はへんてこなことになり、債券市場はぐちゃぐちゃ。
今の市場のゆがみは半端ないことになっていて、最近は完全に海外投資家の長期筋がどんどん減っています。
裁定買い残高がついに7503億円まで減少 - ZDNet Japan
国債暴落=国債の利率が大幅に上がることは絶対に避けなければいけない
現時点では日銀や生保も買い支えるし1年や2年では下がらないでしょう。
ただ、だんだんと海外の短期投資家が増えてきており、少しずつリスクは高まってきています。
日本の国債の保有者内訳をグラフ化してみる(2016年)(最新) - ガベージニュース
いよいよ日銀に力がないと見られたら、あるいはソロスのような存在に目をつけられたら
日本国債全力売り=国債利率暴騰なんてこともあり得るかもしれませんね。
そうなったら日本死んじゃう。
いくら「統合政府がー」「通貨発行権がー」といっても、やはりこういうリスクが高まっているし
なによりこの巨大な国債の積み上がりが、日本のインフレを阻む形になっていることを考えると
「日本政府の借金は問題ない」みたいな話に組する気持ちにはなれないです。