日本銀行のHPをご覧になったことはあるでしょうか。面白い資料がゴロゴロ転がってます。経済学部以外の人は、マクロ経済の教科書読むくらいなら日銀の資料を読み漁ったほうがよほど勉強になると思いますよ。
まあそれはさておき、日銀が予告していたこれまでの金融政策の「総括的な検証」を行いましたね。
それに基づきETF買い入れ方針については現状維持であるものの、マネタリーベースの設定をやめて10年物国債金利の「中長期ターゲット」設定に切り替えました。
◆「総括的な検証」(背景説明) [PDF 2,282KB]
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921b.pdf
◆金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 [PDF 270KB]
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf
◆目で見る金融緩和の「総括的な検証」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」 [PDF 397KB]
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921c.pdf
さて、これについてですが、私が最もしっくりくる検証記事はこちらです。
・イールドカーブのスティープ化
・ETF購入方針は現状維持
・オーバーシュート型コミットメント
この3つがポイントになります。
慣れない言葉があって戸惑うかもしれませんが「イールドカーブ」「スティープ化」「テイパリング」の3つの単語だけ意味を調べれば後は理解できる内容です。
つまり、今まではインフレ率ターゲットを設定し、買い入れ額を設定して国債買い入れやETF買い入れを行ってきたわけですが
今後は買い入れ額に制限を設けず、また、期限も設けず、とにかく目標達成まで国債を買うということを発表したわけです。
量的質的緩和に加え、これに時間軸の緩和も加わったという評価になっていますね。
量的金融緩和政策 - Wikipedia
まだまだ強気で日本を買い支えていく、というメッセージを狙ったものと思われます。
しかし国債金利のコミットメント型ターゲッティングは非常にリスクが高いです。
バーナンキ:中長期金利ターゲティングは抜いてはいけない宝刀 – HSCI ニュース&コラム
そして、残念なことに実際に市場評価は日中買われた日経平均先物が、引け後に売られ、円高が進むという形になっています。
なぜか。
今回の日銀の方針は、実質的なテイパリング(金融引き締め)宣言になる可能性がある
いまひとつわからんのが、長期ゾーンの金利が目標より下がった場合、日銀はどうすんのか?ということ。まさか売りオペ?もしくはホントに逆ツイストオペ(長期債売り短期債買い)?目標より上がった場合は簡単だが。
— 安達誠司 (@economistadachi) 2016年9月22日
「この方針により、あと1年強で、マネタリーベースの対名目GDP比率は100%(約500兆円)を超える見込みである(現在、日本は約80%、米国・ユーロエリアは約20%)。」
見ておくべきは、マネタリー・ベース対GDP比率。
日銀はすいぶん遠くまで来てしまったようだ。
もともと、日銀の国債買い入れは限界に近付いていた。
日銀の金融政策のゆがみから、マイナス金利を導入するより前から短期国債金利はマイナスに落ち込んでいた。
それでもインフレターゲットに及ばないため
日銀は1月末に銀行を裏切る形で準備預金のマイナス金利まで踏み込んだが、
これにより銀行や保険業の業績の基盤が破壊され、銀行も国債を手放すことにデメリットが生じることになった。
日銀と銀行の間の信頼関係にひびが入る手前です。
とにかく日銀と銀行がグルになった国債買いのごり押しはもう限界。
しかしいきなり緩和方針をやめて金融引き締めなど言おうものなら、バブル崩壊が決定的になります。
そこで、国債買い入れ金額を設定せず、期限も長期化させることで、何とか緩やかな着地を狙っているものと思われます。
しかし、どう言いつくろおうが、今後国債の買い入れのペースは弱まらざるを得ないでしょう。
つまり、はっきりと明言したわけではないけれども、実質的なテイパリング入りとみておいたほうが良いと思います
明言したわけではないから、いきなり暴落ということはないでしょう。
特にETF買い入れ先が明言されているtopixはしばらく値を保つと思います。
それでも、全体的には緩やかに下落していくのではないでしょうか。
金融政策はそういう意味でこれ以上大きな期待を寄せるべきではなく、
ここからは財政出動や、構造改革という部分次第になるかと思います。
本当はこうなるより早く着手すべきだったと思うのですが……。
これだけの説明ではわかりにくいと思うので、一つおすすめの本を紹介します。
「相場」と書いてるので株の話かよ、と思われるかもしれませんが、
実際には2016年の日本を取り巻くマクロ経済の動きについて詳細に解説してくれている本です。
kindle unlimitedに加入されている方は無料で読むことができますので、ぜひ読んでみてほしいです。