俺は、俺たちが決して甘いだなんて思ってない。
これが人間の聖なる力なんだって信じてる娘がいて……
俺は……そいつの期待を裏切りたくないだけなんだ
家を整理してたらすんごい懐かしいものが出てきたのでついつい読んでしまった……。当時オタクとかと全く無縁だった私でもリアルタイムで読んでる作品だったのですごい人気だったんだろうなと思ったら、累計3300万部も売れた作品だったんですね。
で、やっぱりそれだけの価値がある作品だと思います。特に前半はもうほんと文句なしでめちゃくちゃ面白かった。後半は当時理解しきれてなかったのでやっぱり覚えてないところ多かった(「3人目のサンジャヤン」の当たりから全然覚えてない)けど今読むと結構わかるところもあります。
改めて読み返してみると「サンジャヤン」というアイデアをもとにして、いろんな宗教の神仏に関する思想をたどりながら最後の「サンハーラ」に至るまでの思想をちょっとずつ積み重ねていく作品だったんだなと思います。
また、「人と人が力を合わせること」の大切さを訴える作品でもあったなと思います。当時の空気がどうだったのかは今となっては思い出せないけれどこの作品の連載が始まったのは1987年で連載終了2002年。バブルが崩壊し、イケイケだった日本が下向きになって、「自己責任」みたいな空気が生まれ始めたころに「一人でできることなんて限りがあるけれど、みんなで力を合わせるのが大事だ」ってことを愚直に語り続けていた作品だったように思います。
最近ますます余裕がなくなってきて「自己責任」「自分たちさえよければいい」「不寛容な社会」なんて風潮が強まってるいまだからこそ、この作品が輝くかもしれませんね。
しかしそういうテーマとか話の軸の部分を除いてもエンタメ作品として実に盛りだくさんだったと思います。今これと同じくらい詰まってる作品探そうとしてもなかなか大変なんじゃないでしょうか。
というわけで、特に自分がめちゃくちゃ好きだった前半部分についての感想を語ります。後半については当てはまらないところもあるかなと思いますがご了承ください。
主人公は強くはないけれどめちゃくちゃ格好いいよね
まずバトルがすごい。主人公は「メインヒロインさえ死ななければどんなに傷ついても死なない」という設定をもっており、それ以外にも回復能力が高い味方が多い。これを活かして自分より強い敵と戦い続ける。また、すこしずつ仲間が増えてきて、協力プレイでさらに強い敵と戦っていけるようになるところが面白い。
正直主人公はものすごく頑張っているけれどそれほど強くはならない。ただ死なないからゲームオーバーにならないだけだ。いつも追いつめられてメインヒロインに助けてもらったり、敵だった人間に助けてもらったり、常に無力さを味わう展開になることが多い。
しかし、だからこそ、そういう人間がくじけずにヒロインや周りの人間を大切に思って全力を尽くすという展開は、なかなか今のマンガの主人公では見られない格好良さがある。
だからこそ、周りが助けてくれる。それだってその人の力だよねってのが何度も何度もこの作品で繰り返されるテーマになる。
女の子がめっちゃ可愛い(時々えっちな描写もある)よね
綾小路パイとか、今読み返してもかわいいよね。
見た目がかわいいことはもちろんだけれど、感情が豊かで、シリアスとデフォルメの触れが激しく、どちらでも元気いっぱいで主人公のこと大好きオーラがはっきりとわかる。当時ヒロインとして「ギャラリーフェイク」のサラと並んでめっちゃ好きだったように思います。
もちろん綾小路葉子や、パールバティ4世、エピソードごとに出てくるヒロインなんかもみんなかわいいですよね。後半展開がだれてきた後でも、「パイとパールバティ4世」の関係は最後までどうなるかわからず、それが気になって最後まで読まされたという感じがします。
みなさんはパイとパールバティ4世とどっちのほうが好きでした?
各エピソードが「インディー・ジョーンズ」的な冒険譚になってて楽しいよね
長編といっても、中盤までは中身を細かく見ていくと細かくて質の高いエピソードのつながりになってるんですよね。ダラダラ感があまりない。「崑崙」という遺跡巡りや、各地の土着神復活をたくらむ集団など、まず題材が知的好奇心をくすぐられるようなものであり、しかも展開はスピーディーで一つ一つが1巻~2巻分にコンパクトに収まっている。それぞれが1時間幅くらいの映画を見ているような楽しみがあります。 このテンポの良さもこの作品の魅力だったように思います。
読み返してみると、「マレーの赤雨」とか、ヴィシュヌ神「サルラーマ」の話など結構一つ一つのエピソードを今でも結構覚えてました。不条理に苦しめられた人たちが神にすがったり、復讐のため禁術に手を出したり。その結果どういう結末に至るのか。ラストシーンの絵の印象が強くて忘れられなかったようです。 切ないという一言でくくってよいものかわかりませんが、やはり印象に強く残るものが多いということだと思います。
敵がとにかく強いし、なにかかなしさを感じさせる奴が多いよね。
作品全体を通して圧倒的な強さを持つ「鬼眼王」や「ベナレス」は言うまでもないですが、作品前半に出てくる敵もどの敵も一筋縄ではいかない。
しかも戦闘力が高いだけではなく、敵には敵の信念があって単に倒せばよいものではないという厄介さを持ち合わせているものが多いんですね。最初は対立してても話が通じるし、仲間になる存在も多かった。そしてそういうキャラはそのまま魅力的な仲間になっていくわけですからそりゃ話がどんどん膨らんでいきますよね。
そんなこんなで、これについては作品の魅力になるだけではなかったかもしれませんが、私はやはりこれもよかったと思うのです。
作者も最終巻のコメントで以下のように書いています。
単純に冒険活劇を描くつもりが、描けば描くほどキャラクターに情が移り、ほとんど敵を倒すことができなくなりました。おかげでこんな長い話になってしまってかなり反省しております。
本当は山のように化け物が出てきて、それをガンガン倒せばよかったのでしょうが、できなかったんですよねぇ……
などなど、連載しているときは後半「だるいなーまだ終わらんのかなー」などと勝手なことを思っていましたが、やはり読み返すと本当に面白い作品だったなあと思います。
古い作品だけれど今読んでも面白いと思うのでぜひぜひ読んだことない人は読んでみてください。
また、当時読んでて、いまでもまだ覚えてるよーという人がいたら是非コメントください。○○が好きだったよーとかコメントもらえると私とても喜びます。
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で、知らなかったんですが「綾小路パイ」役だった林原めぐみさんのデビュー25周年記念の連動企画で新曲が出てたり、去年から復活して新章連載してたんですね。これは楽しみなので、またまとまった時点で読みたいです。感想も書くよ。
「林原めぐみさんの出世作といえば?」と言っても全盛期にはほとんどのアニメに出ていたのでよくわからなくなる - Togetterまとめ