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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「私の少年」  少年の孤独の描き方が素晴らしかった

作品評価★★★(個人的評価★★★★)

類似作品

ELYSION ★★★★★
Phantom of the Inferno ★★★★
ハッピーシュガーライフ ★★(第一話のみ★★★★)

あらすじ

張り合いのない人生を送っていた30歳の社会人女性が、ある日一人ぼっちでサッカーの練習をしている、少女と見まごうような小学生の美少年に出会い、、、というお話。アメリカンビューティーの男女逆転バージョンかな。


この美少年は、父子家庭の子であり、親にはほぼネグレクト同様の扱いを受けている。さらにそれを「普通のこと」として受け止めている。(親に愛情が全く無いわけではないのだが、それゆえ単純なネグレクトよりもひどいことになっている

学校でも、いじめられることはないが空気のような扱いを受けており、誰かに親切にしてもらったり、自分の意思を尊重されることがなく、友達付き合いも無い。(美少年すぎるのでリアリティが微妙だが)

そうした反動もあり、主人公から少し親切にされたことによって、すごい勢いで懐き、依存するようになる。主人公も、孤独をこじらせていたから、ついつい自分に言い訳をしながら、超えちゃいけないラインを踏み越えて関わってしまう



「お姉さんに犬のようになつく美少年」というものを作り出すためとはいえ、その非現実的でエグい設定はなかなかくるものがある。しかも、この作者、絵が非常に上手で、かつ単なるご都合主義だけで済ませるには視点が大人すぎるのか、この関係をかなりグロテスクに描写してしまう。


結果として歪んだ関係に対しては、きっちりと修正力が機能し、主人公と美少年の関係は終わりを告げる。 主人公が真修くんから逃げるような形で。(このあたりにPhantomのツヴァイとドライみたいな関係を思い出す)


数年後、主人公は、成長した美少年と予期せぬところで再会するのだが……。 



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美少年、真修くんの壊れっぷりの描写がとてもエグくて素晴らしかった

真修くんは親からネグレクトのような扱いを受けている。しかし、そこで彼は不良になったり、親を嫌って家から離れたりはしない。なんら問題行動を起こさないので、親は真修くんの扱いに問題を感じていない。


しかも親は、気まぐれで真修くんにサッカーをやらせてみて、上手く行かなかったら、「真修のために」やめさせようとする。本人はサッカーを続けたいと思っているのだが、意思を確認しようともしない。あまりに自分の子供がなんでも素直に言うことを聞くので、親は、真修は自分と同じ考えをしていると感じるようになってしまっているのだ。


そして、真修くんも、親の意思を当然のように受け入れてしまう。自分には意思があって、それを誰かにぶつけるという機能自体が死んでいる。そういうものだと受け入れてしまっているから別にそれを辛いとも感じられない。


主人公の女性からは、この真修くんの異常な壊れぶりはわからない。なぜなら、真修くんは、主人公の女性には心を開いてなついているからだ。


真修くんの異常さを見せつけらえるのは、小学校で同級生の女の子である。

私の普通。

呼び止められたり、おしゃべりしたり、ふざけ合ったり、あだ名で読んだり
授業中に手紙をやり取りしたり、目に見える普通。

私の生きる 普通。

誰かが気づいてくれる普通。

誰かが自分のことを見てくれている普通。

この女の子は、優しい普通の女の子である。しかし、ある日、運が悪いことに空気のような扱いであった真修のことに気づいてしまう。そして、真修が受けている境遇を自分ごととして受け止めてしまう。

これが 早見くんの 普通

目に入らないものは

なにもないのと同じ

だとしたら……

女の子は普通の家庭で育った普通の子だから、自分がその立場に置かれたことを想像しただけで耐えきれずに嘔吐してしまう。そのくらいえげつない状況にあるのに、それを当たり前として受け止めてしまっている真修くんを見て、その女の子は涙を堪えられなく成る。




このあたりの描写が本当に素晴らしいなぁと思った。


自分の境遇を「つらい」といえるならマシな方。本当に本当に辛い人は、そのことが辛いとすら思えないのだ。



なんだか、「ELYSION」のサラを思い出した。

•]˜_^Elysion

ゲオハルトからの常軌を逸した扱われ方も凄みを増しており、彼女の境遇のひどさを強調している。
確かに、主人公でなくともこんなにむごい扱いをされている少女なら、助けたくなるのも道理だ。
(中略)
これは、大概の一般人なら1~2日で発狂してしまう。

さぞかし精神的ダメージを受けたことだろうが。よく耐えていたものだ…

この作品は、この描写がなければ、ただの凡百なおねショタものでしかなかったと思う。この描写があってこそ、真修くんに感情移入してしまう。この女の子(オガタさん)の心の平安は、作品のための犠牲になったのだ……このオガタさんは今のところ、その後それほど真修くんとの関わりがちゃんと描かれていないがこのあとどうなるんだろうかなーとちょっと気になってます。