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「精神科ナースになったわけ」 

相手の話を聞いてあげること、まずはそこから始めよう、と。

 
が精神病患者からみた精神病棟だとすると、今度はナースさん側から見た精神病棟の話です。(ただしこちらは実話ではありません)

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紹介されている患者さんはやはり自分の常識でとらわれていては理解できない人たちです。

ナースからみた、患者さんたちのケーススタディ

初っ端からでてくる患者さんからしていきなり重度の妄想癖です(帽子を絶対に取らない)

主人公のナースさんは最初「世間の常識で考える」「おかしいから直さなければいけない」という考えで接しようとしていたため、全く取り付く島がありませんでした。
その考えをやめて「この人はこの人のルールで生きてるんだ」とちゃんと認めた上で、そのルールを壊さないに尊重して接するようにしたところ、
この患者は「帽子を取ると一緒に脳みそも出てしまう」という妄想に取りつかれていることがわかります。


・ルールを尊重することで、相手が自分の事情を話してくれ、
・自分の事情を話してくれたことにより、事情を知ってる人として少しだけ信頼されて、
・その信頼の範囲内で、相手のためにできることをやってあげることで、さらに少しだけ相手のことを教えてもらって
・この繰り返しで、最初に全く理解できなかった地点からだいぶ関係が前進していきます。

ついには、その患者さんから帽子を脱いでもらって相手の頭をシャワーで洗ってあげることに成功します。

こんな感じで「ナースさんが精神病患者についてどう考えて、どう接しているか」という本音の部分よりも
「こんな風に接することによってうまくいったケースもある」とか逆に「色々あったけどどうしようもなかった」というケーススタディ集のようになっていきます。

正直言ってちょっと出来過ぎな感じがあって「このはな奇譚」読んでるような感覚になってしまうところもあります。
実際、このはな奇譚もこういうコンセプトのお話ですからね。「妖」という常識外の存在と接し、その存在をリスペクトしながら、求めているものを理解していく、という話。

もっといえば、精神科のナースさんとか、旅館の人でなくても、こういう気遣いをしてくださる人ってのはいるものです。発達障害であり、それだけが理由ではなくそれを言い訳にしてコミュニケーションから遠ざかっていたせいで、対人のコミュニケーションが苦手で苦手で仕方がない私ですが、そんな私がなんとか生きていけるのは、こうした気遣いを私に対してもしてくださる方のおかげ。
私も同じようにしたい……というと荷が重すぎるので、まぁできる範囲で、相手の話を、自分の考えとは違っても聞いて尊重できるようになりたいと思います。


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「達成感」よりも「ままならなさ」のほうが多い職場で毎日働き続けるためには

ただあくまでこれは「精神病」の話です。
いい話で終わってくれる「このはな奇譚」や日常の善意と大きく違うのは、必ずしも問題を解決できることではない、むしろどれだけ心を注いだところでどうにもならないことが多いということです。
何でもかんでもうまくいくなら、そんなに楽なことはないけど、世の中そんなに甘くはない。

うまくいくケースもあるけれど、うまくいかないことも多い。この作品中でも、ほとんどの場合は「多少良くなる」程度です。
たとえばリスカ常習犯の女の子が登場しますが、彼女の根本的な問題やその原因を解決してあげることは、精神病棟のナースでは不可能です。
できることはその彼女の話を聞いてあげることだけ。無力感や敗北感に打ちのめされることだらけの日常です。


「このはな奇譚」のユズのように、深く相手の心に寄り添える人間であってもどうにもならないことのほうが多い。
そこまで受け入れられないと、このセカイで長く仕事を続けるのは難しいでしょう。
そういう環境において、そのままならなさも受け止めながらどんな風に考えたり工夫しながらこの仕事と向き合っているのか。


その部分こそが、私が読んでいて一番グッときた部分です。