頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「双亡亭壊すべし」 恐怖・怒り・理解と複数アプローチで「理不尽な存在」と対峙する話

評価★★★★(個人的評価★★★★)

OPまでに6巻をかけた作品。相変わらずの熱量です。是非ここから追いついて読んでみて欲しい!



必ずしも全て上の記事タイトルに当てはまる話ばかりではありませんが、「テイルズオブファンタジア」や「まほろまてぃっく」「ヴィンランド・サガ」「天元突破グレンラガン」「ガンダム00、ガンダムAGE」「シドニアの騎士」「宝石の国(アニメの所で終わりじゃなく8巻まで読んで!)」などいろいろ思い出します。 


そして、こういう作品が好きな人には「双亡亭壊すべし」超オススメ!(一番近いのは「とある魔術の禁書目録」かもしれんけどねw)


作者は「うしおととら」「からくりサーカス」などの作品で知られる藤田先生。
「うしおととら」9話 本当に欲しかったもの - 頭の上にミカンをのせる


この作品は、タイトルや一巻表紙の印象とは異なりSF的展開です。具体的には宇宙災害「黒い星」と戦うインディペンデンス・デイみたいな物語が進行します。「白面の者再び!?」という感じですね。 ただ、そこはやはり「うしおととら」の作者。当然正体不明、意思疎通不可能な敵をただ撃退して終わり、みたいな話ではなく、「怒り」「理解」という2つのアプローチが描かれます


怒り(青一)サイド

「なんで嫌だって、怒らないのさ!怒るんだよ!」
「我々は、怒るやり方を、知らない」
「僕が教えてあげる!!」
「教えてくれ。戦いに必要な感情を。怒りを!教えてくれ、私はどんな形を取ればいい?
 教えてくれ。怒りはどのような形をしている?」
(中略)
「わかった、青一。この形でいいのだな。これが怒りの形なのだな」

なんでも、自分の思う通りになると思ってるんだろ?
この星が、僕たちが、なんにもしないから。おとなしいから……
でも…見せてやる。
僕たちは、黙って死んでいかないってことを。
大声で言ってやる。お前たちなんか大っきらいだって!

僕たちは、一人ひとり違う怒りの形を持っていて、
あの人達のカラダは、どんな形にもなってくれた。侵略者との戦いは、45年続いた。

戦いの中で、異星の仲間と戦友を失い、ただ一人生き延びた青一たちの話が紡がれる。
こちらは、ただただ、「黒い星」を滅ぼすために行動する。


恐怖(志波総理)サイド

これはわかりやすい。
「双亡亭」なる謎の存在に脅かされ続けた人間たちが、それを乗り越えようと戦いを決意するという展開。
この作品ではメインにならないが、物語の最初は彼らから始まっている。


理解(凧葉)サイド

なんでやつら、絵の中に俺たちを取り込んでから取り憑く、なんてまどろっこしい段取りを踏むのかってこと。

お前は本当のとこを確かめもせずに思い込んでる!
だから苦しいんだ!やつらに付け込まれるんだ!
過去は過ぎちまったんだよ!戻ってこねえ!
お前にもろくろうにも、もうこれ以上何の影響も与えられねーんだよ!
だったら、これからジャネーか!これからお前はどうしたいんだよ!?

そうだ。やつらの思い通りになるな。
心を自分で壊すことはねえ。
つらい過去にまけんな、辛くて弱かった自分にまけんな。
全部引き受けて、そいて自分を許してやんな。

こちらのサイドでは、彼らの存在を理解していきます。受け入れるとかそういう話ではなく、別の対抗策を見出していきます。
「敵」はこちらの人間を取り込んで乗っ取ってしまう性質が有るのですが、取り込まれた人を救ったりもする。

こちらサイドの主人公である凧葉には「とある禁書目録」の男女平等パンチのようなわかりやすい能力もない。
ただただひたすら命がけで自分を殺そうとする相手の懐まで近づいていき、その人の心に言葉で訴えかけていく。
主人公のメンタルどうなってんだよーwww


そして、主人公達のスタンスが明確に描かれた後、「敵」の姿も少しずつ明らかになってくる

単に「黒い星」という宇宙生命体と戦うだけの話なら、主人公たちのスタンスがきっちり固まった時点で
後はバトルして終わっても構わないと思うのですが、この作品はここからがようやくスタートライン。

その「黒い星」を地球に招きこんだ存在が居る。やつらは何者なのか、その目的は何なのか。 
というわけで、ミステリのように少しずつその正体が見えてきます。


言葉だけだとうまく説明できないけど、こういう物語をど迫力の絵と一緒にやってくれるので、非常に面白い


「理不尽な存在」との戦いにはいろんなアプローチがある。どれか一つだけでは心許ない

まぁ言うまでもなく藤田先生の作品なんで、すでに読む人は読んでると思いますが、
私がいいたかったのは「理不尽な存在」との戦いにはいろんなアプローチがあるってことです。

この作品はそれぞれの勢力が結集して展開になっているのが良いですね。

あんたらはまだ十分に戦ってねーよ。
お互いの情報や経験を全然喋り合ってねーからだ。
互いに自分だけで勝手に戦って、勝手に自分たちだけで生き残って。
十分に戦うってのは、最強の技を出して勝つってことだろ。
俺たちの最強の技ってのはよ、みんなで力を合わせてやるってことだぜ。
知恵を出し合って戦うってことだろうが!その業も使ってないのに、一流の能力者が逃げるのかよ!


「差別」と戦ってるみなさんも、力づくで戦おうと言うならそれもいいと思います。
でもそれってネットで喚いたり、弱いやつをリンチするして自己満足したり、所構わず放火するだけじゃなく、本当に強くならないと難しいと思う。
そうでなければ、結局リアルでは全く立ち向かえないからネットで愚痴吐くだけになる。 他の力を呼び込むような動きをして欲しい所。

これについては「ランス6」っていう作品が本当に見事にそれを成し遂げてたりするのでまたそういう話もしてみたい。



おまけ 私が好きなエピソードは5巻の凧葉の話

俺の行ってた美大ってさ。すっごい金持ちや変人とかいてさ。経験や知識とかで、なんか人の上を行こうとするやつが多かったのよ。
おれなんかオヤジのアル厨の世話してた後は、親戚中を小さくなって転々として、それから奨学金で学校いったから、たいしたいい経験してないんだよな。外国のきれいな街も見たこと無いし、インドを一人で旅行したこともない。かといって本だって、バイトバイトでろくに読んでなかった。口だってうまく回らないから、「お前の言ってることは俺の経験からいってアウトだよ」とか「知らないのか?それは常識だよ」ってな感じでいろんな物知りや経験した奴らに「お前は黙ってな」って言われてばかりだった。


俺は、そう言われるたびに、下を向きながら、思ってたんだ。「知ってることや見聞きした経験は、他人を黙らせることに使わないで、これからの自分がマシに生きていくために自分で使えばいいのにってさ。


だからおれは、ふざけて笑い飛ばしたかったんだ。俺が絵を描く時は、金がなくても、物知りじゃなくても、親に恵まれていなくても。やすい絵の具がアレばいろんな物が描けるんだぞ、ざまーみろって。
なるべく愉快で面白いもんを描いて、そんな足りねえものはみんな笑い飛ばしてやるぞって。そんなつまんねーこと考えて描いてんだよ。

これいいよね。時々忘れそうになるけど、私もあんまり他人の批判ばっかりやっても得なんて殆ど無いし。もうそろそろ自分を豊かにする方向に持っていかないと。

これからも生きていかなきゃ行かないんだしね……。生きるのって大変だぁ。