なんかアズールレーンが燃えてるみたいだけど、ややこしいしまだ良くわからないこと多いです。から「韓国におけるゲーム業界内での反フェミニズム事情」について簡単にまとめてみる。本来こういうのはねとらぼさんやBuzzfeedさんのお仕事のはずなのだけれど、間に合ってないようなのでひとまず中継ぎになればいいなと思います。
最低でも以下の三点は押さえて置きたいところです。
1:まず韓国のネットでは「イルベ」でのミソジニー問題があり、そちらへのカウンターとして「メガリア」が発足したという経緯があること。
2:「メガリア」が相当過激であるのは「イルベ」の鏡映してであること
3:どちらにせよ韓国のネットでは男も女も許容値を振り切った状態であること
一部では2点目のしかも「メガリアが過激」という部分だけが切り取られて広まっているようなのでそういう意見を拡散している人には警戒をしたほうが良いと思います。これは対立構造と認識したほうが良いでしょう。
とはいえ私もよくわかってないので、補足が必要な点や間違いがあればご指摘お願いします。
【追記】
・順序というなら1999年に男性の完全徴兵制のまま軍加算点制を廃止したのがかなり影を落としてるっぽいし、簡単には言えない
・『ミソジニーが先にあった』という人は、『先に家長父制へのフェミの憎しみがあった』のを忘れてるような?
・フェミニズムに憎悪が集まるのってフェミニズムが果たしてきた女性が社会に参加する機会を広げてきた歴史が殆ど知られてないからなんだろう
確かにさかのぼっていくとキリがないような気はしますね……。とりあえずゲーム業界の話なので、ゲーマーゲートより以前はより詳しい人の解説待ちとさせて下さい。
2014年 ゲーマーゲート騒動
韓国は直接関係ないが、ゲーム業界における反フェミニズム問題はここからスタートさせるべきだろうと思うので入れておく。
【特集】今も余波続く「ゲーマーゲート騒動」―発端から現在までを見つめ直す | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト
「ゲーム産業における反フェミニズム」の感情が表面化した
当初は、ゲームメディアとクィン氏の疑惑に対する意見が交わされていた「#GamerGate」コミュニティでしたが、フェミニズムや人種差別、宗教に関する議論も行われるようになり、一部の過激な発言をするユーザーとそれに反対するユーザーとの対立も生じ始めます。さらに、ゲーマーゲートコミュニティを批判した女性ゲーム開発者ブリアンナ・ウー氏などの業界関係者だけでなく、女性の立場に立って発言する一般ユーザーへもDoxing行為と脅迫、虚偽の通報でSWAT部隊を送り込む「スワッティング」が数多く発生
ちなみに欧米の議論を日本に直接持ち込むことは間違い。たまにこのあたりの点を全く考慮してない意見を見かける。
日本では、男性をターゲットとしたゲームと女性をターゲットとしたゲームを分ける土壌がもともとあり
(中略)
欧米のコンシューマーゲームでは男女の対象をあまり区別していない
よく海外の男は日本よりまともだからこんなことはしないはず、とか韓国のフェミは日本より進んでるとか願望で語る人いますが、状況の違いを考えずにそういうこと言ってる人は夢見すぎだと思います。
2015年 「イルベ」(韓国版5ch)内におけるミソジニー・アンチフェミの動きに対抗して「メガリア」が発足
この記事が詳しい。
「メガリア」自体がノルウェーの女性作家ゲルドブランテンベルクの仮想小説「イガルリアの娘」とインターネットコミュニティサイトの「メールスギャラリー」の合成語である。インターネット上で男性の世界と言語を見守った経験を生かして、それらの文化の中に入って、私もその立場になってみようというゲームである。一般的に考えられているかのように「男性も経験してみろ」ではなく、「私たちも男性と同じように振る舞えば、彼らがどのように反応するか」の意味が強かったと思う。
ただし、ミラーリングを主とした活動だけに止まらず、男性への罵詈雑言が目立つようになったことから社会的評価としては「女版イルベ」「反ミソジニー、ミサンドリ」という評価がある模様。
メガリア - Wikipedia
※Wikipediaの記事にしては記述が主観的で不自然でソースも少ないので注意。
また、ゴシップ系のサイトっぽいので信頼性は保証しませんがこんな記事もありました。
女性嫌悪もすごいが男性嫌悪もすごい メガリアのキムチ女子とイルベの韓国男虫の戦い – コリアのリアル]
【寿司女・キムチ女】韓国のフェミニズム、男性嫌悪等について | 中華珍民共和国
韓国ではそもそも男性が「イルベ」を閲覧していることが知られるだけで社会的糾弾を受け職を追われることもあるという状況だったという記述もあり、その女性版であるメガリアの活動を支持している人が職を追われたり仕事を失ったりするというのも、その当たりの反動の可能性もあります。
*1
2016年7月 Nexonのゲームで、声優がフェミニズム運動への支持を表明したことが原因で交代になったことに端を発し、国家機関をも巻き込みかけた「YES CUT」運動
「女の子たちには王子様は要らない」というフェミニズム的メッセージです。このT-shirtsはタンブルバックなどネットで支援を受けたものですが、それをキム・ザヨンという声優さんが来てた事が問題になりました。
それを開催した団体がネットでいわば「メガリアン4」でありネット発のフェミニズムサイトです。その前身であるメガリアはアグレッシブな所を持っていて、簡単に言うと2chの女性Verだと考えたらいいと思います。それに反感を持ったユーザーたちが抗議し契約解除されました
この時点ですでに、「メガリアは反社会的」とみなす人たちが多かったことが以下の記事から示されています。
メガリアの中の一部の「反ミソジニー」の人たちが先鋭化・過激化して犯罪行為まで起こしたために反社会的、のイメージがついた?
日本でも「しばき隊」なる人達がいるそうですが(詳しく知らない)
韓国でもメガリアの人たちのひどい言葉遣いや、会員制サイト「WOMAD」というところでは警察沙汰になるくらいヤリすぎる人がいるようです。
・過程で女性解放という社会的意味は消えて個人を向けて多数が暴力を加えて楽しむ姿だけ残った
・単純に男性に対する抵抗を越して弱者に対する攻撃が強迫証のように成り立っている
・問題の根源である女性嫌悪問題を解決するのではなく弱者をいじめることであるだけ
こういう行き過ぎた人達の存在に対して「反社会集団」というレッテルや強い批判の声が置きているバックラッシュが起きているのではないかと思います。
多分男側でもこういうことしてる人いると思うし、そもそもメガリアやWOMADは男側のミソジニーの行き過ぎへの反動で登場してるので、バックラッシュの正当性にはならないのですけどね
ともかく、こういう蓄積があって最近女性スタッフに対する「魔女狩り」が進行している模様です。……中世かな?
2018年3月 韓国版5chである「イルベ」閉鎖の可能性が強まる
韓国版2chのイルベ、大統領の怒りを買いガチで閉鎖の危機へwwwwww【画像】 : ドンと来い速報
韓国人「韓国大統領府、イルベ閉鎖を求める20万人の署名に回答…”閉鎖させることも可能”」どうなるカイカイ反応通信! : カイカイ反応通信
信頼性の有る日本語のサイトでこの問題について扱っているところがなかったので信憑性については疑問はあるが引用する。
イルベ閉鎖要請請願は、2月24日までに23万5167人が、25日に締め切られたユン・ソイン処罰請願は同日午前までに23万7860人余りが同意した。2つの請願は、インターネット上の表現に対する違法性に問題を提起したものであり、共に答弁が行われた。
まず、イルベサイト閉鎖請願に対して、キム秘書官は「名誉毀損などの不法情報について、放送通信審議委員会の審議後、放送通信委員会がその情報の処理を拒否、停止、または制限を命ずることができる」と手続きを紹介した。
この「イルベ閉鎖」の危機感や逆恨みのようなものから、メガリアへの攻撃が強まっている可能性もあるのかな?最近になって、立て続けにフェミニズムを支持する女性が個人攻撃を受けるケースが増えているようです
2018年3月26日 韓国人アイドルがフェミニズム小説を読んだことで批判を受ける
韓国の女性アイドルがフェミニズム小説を読んで「炎上」 渦中の作品とは - コラム : CINRA.NET
オンラインフォーラムで「彼女に失望した」「ファンイベントに行くために金を使った男性ファンに中指を立てるのか?」などと書き込み、彼女の写真を燃やしたり、写真を切り裂いたりした画像を投稿し始めるなど、理不尽なバッシング行動に出始めたのだ。
このような反応をしているのは一部のファンだけで、彼女を擁護する声や過剰な反応に出た男性ファンを非難する声が大きいようだ。
2018年4月 韓国オンラインゲームの社員が、SNS上でのフェミニズム支持を理由に会社から「反社会的イデオロギー」ではないかと調査を受け謝罪させられる
10~65歳の韓国人女性のうち、約65%がオンラインゲームを楽しんでいる(男性は75%)。携帯端末用のモバイルゲームでは、女性プレーヤーの数の方が男性プレーヤーよりも多い。オランダに本拠を置くゲーム市場調査会社Newzooによると、韓国の全ゲーマーのうち42%が女性だが、ゲーム開発者となると、女性は4分の1にも満たない。
IMCゲームズの最高経営責任者(CEO)、金ハッキュ(Kim Hak-kyu)氏は、スンさんの行動は「過ちではあるが犯罪ではない」とし、スンさんは引き続き同社で働いている。同時に金CEOは顧客に対し、同様のことが再発しないよう「常に警戒していく」とも述べた
(中略)
紛糾した議論がやまない中、今度は金CEOが謝罪する事態に至った。
仕事と関係のない個人の信条によって職場で制裁を受けることがあってはならないというのは常識です。しかし、この業界では今現在、特に女性に関する問題では、その常識が通用しない
ここまでの文脈があって今回のアズールレーン騒動につながっているようです。
2018年4月28日 韓国人の有名絵師が、フェミニズム支持表明を理由にゲームのイラスト掲載を取り消される
アズールレーンの韓国パブリッシング会社(X.D. Global)との件に関しまして
アズールレーン「フェミニズム不支持を表明しろ」→イラストレーター「断る」 その結果イラストは掲載中止に…… - Togetter
担当「あなたとメガリアの関係が噂されている(URL削除済)。実際の立場はどうなのか。マーケティング的にまずいので絵の差し替えも検討されているが、そうすると認めたことになる」
絵師「私はメガロについて詳しく知らないし無関係」
担当「我々は作家を保護する方針でいる。『メガロと関係はなく、フェミニズムを支持しない』というツイートをしてもらえるか」
絵師「なぜそんなことをすべきなのか」
担当「ツイートでなくともなんとかして立場を示せないか。我々は真剣に作家の保護に努めるつもりでいる」
絵師「社に所属するわけでもない私に意見の表明を要求しながら、真剣に保護を考えているとはどういう意味か。私は立場を表明しないと降ろされるのか。とても不快」
担当「我々は作家の意思を尊重する。他意はない」
絵師「最初から釈明するようなことは何もないと言っている」
担当「今回はご迷惑をかけて申し訳ないが、そうであれば我が社としては協力し続けることは難しい。もし今後意見に変化があれば連絡していただければ再びイラストを使わせていただく。今回のことは大変申し訳なく、本当に残念だ」
自分は素人なので信頼性は個々で確かめてほしいが、なんともモヤモヤするな…
蛇足 あくまで個人的な印象ですが……
個人的な印象では、
(1)最近までは日本ではこの手の集団クレームは、個人ではなく企業に向かい、またそういう活動をするのは男オタクではなくフェミニストの人が多いと感じていました。 これに対して韓国の場合は個人攻撃が多く、しかも職を追われるまで追い詰めたりするなどえげつない形のものが多く、さらに男から女への攻撃が目立つのも日本とは違うかなと思います。
韓国人はバッシングで自殺まで追いやられる芸能人の数が多く、ネットの民度については前々から問題になってますしね。
(2)また、日本の場合はフェミニズムを主張する人は多いものの、個人が思い思いの主義主張を騒いでいる印象が強く(一人一派)(草の根フェミ)、自由である代わりに無責任で、きちんとした組織や集団化されておらずとらえどころがない印象です。複雑というか、もともとちゃんとした実体がないように見える。韓国のメガリアに当たるような存在ってあるんでしょうか?(あったら困るけど)
metooの時に初めて組織化・ネットコミュニティ化されそうな雰囲気はありましたがいろいろあって失敗したなと思います。私も批判してた人間で知らんぷりするつもりはないけど、やはりアレは問題が多すぎて支持できなかった。一人一派で力を持たない間はいいけど、今のようなノリで組織化されだしたらかなり抵抗がある。
(3)また、日本に関しては、個人主義的で明確なコミュニティ化はあまりされておらず、5chも主導的な立場を維持しておらず、その代わりにミソジニー、ミサンドリ双方の陣営にtwitterで直接やばい発言をする人が結構多いと感じています。そのあたり韓国はどうなんでしょうね。
(4)以前Ta-nishiさんから教えていただいたリベフェミの方などを見て、ちゃんとフェミニストとして活動をしている人が居るのは認識出来始めたところですが、はてなだけ見ていると、フェミニストというよりミサンドリやアンチミソジニーの人たちが目立ちすぎてうんざりしてる。はてなだとfont-daさんくらいしか信頼できる人がいない気がする。絶対にそんなはずはないのだけれど、普通にネット見てたら駄目な自称フェミにあたってしまうので交通整理をしてほしいと思う。
(5)最近になって、日本でもmetooへのバックラッシュで個人への女性への攻撃が集中したり、本来女性の生きづらさを訴える活動だったはずの「ウィメンズマーチ」も、日本ではマルクスさん界隈のような過激な意見やフェミニズムの皮を被ってミソジニーへのカウンターや、それを通り越した男性憎悪を煽るような人たちが目立ち始めるなど過激化の兆候が見え始めたりと、これまた双方向ともにヘイトが溜まってきていて非常に良くない傾向が起きているように思います。
正直、この話題についてはとても不安です。 そんな日本の行き着く先を考える際に、韓国の状況は参考になるかもしれません。
おまけ1 韓国の「非実在青少年に関する著作物」を取り締まる「アチョン法」について
id:s_tsukiyama 韓国人の女性絵師が日本語まで覚えてこっちの仕事してるのって、この辺の事情があるのかな(市場の大きさもあるだろうが)
というコメントがあったので、アチョン法についてもご紹介しておきます。
2011年から始まった仮想物を含めて「児童ポルノ」を取り締まるアチョン法によって2,200人あまりが逮捕されていることを説明。現在、最高裁では取り締まり範囲を制限する判決を下したが、憲法裁判所が仮想物の規制について合憲判決を下し、国会でも創作物規制の条項を廃止する法案は廃案となっている
韓国では著作権法の非親告罪化が行われた2008年に9万1,840人が逮捕。青少年に午前0時~午前6時の間のインターネットゲームを禁止し、成人でも本人確認を定めた「青少年夜間ゲームシャットダウン制」の実施により、関連企業の従業員数が12年に5万2,466人から14年には3万9,221人まで減少し、急速に産業が縮小している
海外は、日本より国家が表現に介入しやすくなっている。上の「YES CUT」でも国家機関に訴える人が少なからずいたらしい。お隣の国でこういう事例があるというのはサイド確認しておくと良いかもしれませんね。
*1:いつも思うんですが、過激な言動で他者を追い詰めようとする人たちは、自分たちがそれをやり返される状況について想像して自重したり、それに対する備えを行うって発想がないんでしょうか。バランスって一回壊れたらもとに戻すの大変だと思うんだよね。相手を完膚なきまでにたおせば世の中は良くなるとか思っちゃう人たちってホントに相手にしたくない