ここ最近書いてる通り、私は自閉症スペクトラム障害(ASD)です。雰囲気で良し悪しを判断することがほとんど出来ません。その人が冗談で言ってるとか、ひねくれたものいいだけど実は応援しているとか、間違ったことを言ってるけど善意だから悪いことにならない、とかそういうのを上手に判断できません。かといって、なんでも悪意を疑っていると何も信じられなくなってしまいます。
なので、「基本的に全員が善意で喋っていると仮定した上で*1、ちゃんと根拠を持って語っているかどうか、ごまかしがない人か」でまず人を判断せざるを得ないところがあります。*2
「ジェンダーギャップ指数」はリトマス試験紙
そういう意味で、私の中で「ジェンダーギャップ指数が何について論じているのかを把握した上で喋ってる人かどうか」は私の中でその人が語るに値する人であるかどうかの判断基準になります。たとえ主張が正しくても、こういうしょうもないところで「とりあえずセンセーショナルな方を採用しよう」という人は、ただ騒いで注目を集めたいだけで、問題を解決しようとする意思が無いと考えます。
よく間違った文脈で(というかおそらくちゃんと中身を知らずに)引用されがちなジェンダーギャップ指数について。
男女平等度ランキング - 世界経済のネタ帳 今年のランキング
日本BPW連合会 【ジェンダーギャップ指数 GGGI】 過去の推移
誰かがこのジェンダーギャップ指数を持ち出す時、中身について論じてる人は少なくて、よく考えずに「ほら、日本は男女差別が激しい国なんだ」と言ってるだけ、というケースが9割以上だと思ってます。
男側も、個別事例に対してつまんないことを言う時にも使うようですが
16歳少女、レイプされた翌日に火を付けられ殺害される インド 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
・男女平等ランキングで日本より上な国なんだよなここ。ランキングがいかに無意味かわかる
・国連は日本なんかに勧告してる暇があったらさぁ
どちらにせよ論外だと思います。
日本のGGIの順位が低いのは経済参画および政治参画のせい
男女平等ランキング過去最低にみるジェンダー後進国の日本 | Glocal Mission Times (グローカルミッションタイムズ)
本指数は経済参画、政治参画、教育、健康の4分野(14項目)をそれぞれ指数化し、順位が決まります。日本は教育および健康分野の格差はほぼありません。世界平均を超える項目もあり、1位のアイスランドとの差もほとんどありません。
日本が順位を落とす要因となっているのは、経済参画および政治参画です。
経済参画分野
労働力率の男女比 アイスランド0.950 日本0.781 世界平均0.667
同種業務給与格差 アイスランド0.807 日本0.672 世界平均0.634
勤労所得の男女比 アイスランド0.727 日本0.524 世界平均0.509
幹部管理職男女比 アイスランド0.519 日本0.142 世界平均0.320
専門技術職男女比 アイスランド1.000 日本0.654 世界平均0.758政治参画分野
国会議員の男女比 アイスランド0.909 日本0.102 世界平均0.279
閣僚の男女比 アイスランド0.667 日本0.188 世界平均0.209
国家代表男女比※ アイスランド0.685 日本0.000 世界平均0.200
政治分野をざっくり除けば日本は159位中21位
国連開発計画(UNDP)が発表する「ジェンダー不平等指数(Gender Inequality Index:GII)」があります。GIIは保健分野、エンパワーメント、労働市場の3分野から構成され、国の発展度合いも加味されるもの。こちらの2015年の調査では、日本は159ヵ国中21位であり、調査分野や項目により結果には大きな違いがみられる
GGIを取り上げる人は、どちらかというと政治進出について論じるべきだと思います。あるいは経済問題、特に「家事に対する報酬」などの問題に関してマルクス主義フェミニズム的な文脈で主張をするのはありだと思います。しかし性犯罪の問題でGGIを持ち出して騒ぐ人は信用できません。そういう人は、真面目に問題に考えているとは思えないからです。
「格差のみ」を問題としているため「男も女も低い」国がランキング上位になることもある点も問題
国の発展レベルによる差は考慮されておらず、純粋に“男女格差のみ”を測っている調査です。極端な例ですが、大学進学率が男性90%・女性85%の国より、男女ともに0%の国の方が、男女差がないとして上位にランクインされる
https://jinjibu.jp/keyword/detl/902/
GGIを改善した他の国の取り組みについて参考にするのは良い
男女平等ランキング過去最低にみるジェンダー後進国の日本 | Glocal Mission Times (グローカルミッションタイムズ)
スウェーデンを例にとると、1990年代半ばから男女平等政策取り組みが本格的に始まり、2001年施行の改正男女平等法によって男女賃金格差に関する規定が強化されました。オンブズマンによりスウェーデン被用者全体の25%を超える審査対象賃金調査が実施されるなど、相当の時間をかけながら是正が進んでいった
アイスランドでも、1975年に起こった女性側のストライキ(仕事と家事の放棄)を機に男女平等委員会が設置されるなど、男性も男女平等問題を自分事として取り組むようになり、いまに至っています。
男性側が取り組むべきことが多いですが、女性側が取り組むべきことも有るし「順番」も国によって違いますが、そのあたりを考えながら見ていけばいいかなと。
GGIを「相手を攻撃するための道具」とか「結論」として捉えてる人と、現状を改善するための道具や指標として考えてる人では全然アプローチ変わってきますよね。ぶっちゃけ現状をとらえるための指標としては明らかに出来が悪いですが、それでもこれについて皆が言及するのは「政治参画を促しましょう」とかそういう明確な意図が有るので、そういう使い方をしていくべきなのかなと。
都合の悪いところに目をつぶり、いいところ取りだけつまみぐいしようとするのではなく、目指すイメージを明確にしていきたい
なぜ日本のジェンダーギャップ指数はこんなに低いのか。“男女平等”の社会は男性も生きやすい? | ハフポスト
婚活パーティに行ったら、プロフィールに(女性は)「得意料理」を書く欄があって、同じ欄に男性は「年収」を記入するようになっていて驚愕したって。スウェーデンでは福祉がしっかりしているから、経済力で男性を選ぶことがまずないと。女性が結婚で男性を選ぶ条件は、家事・育児が得意であるかがポイント
日本は男性の「弱音吐いちゃいけない」「経済の大黒柱であらねばならぬ」っていう規範がものすごく強いから、そこをもう少し分かち合っていこう。
日本社会は積極的に女性を差別しようとしているのではない:日本、「男女不平等=悪」は早計 | ビジネスジャーナル
各国へ滞在するなかで「世界のどこにだって男女差別はある」という事実にも気づかされました。飲食店で女性へはメニューの価格を表記しないイタリア、共働きで家事もこなさざるを得ないイギリス、専業主婦が財布の紐を握るなんてあり得ないドイツ――。どの国にも課題があり、日本はある面で他国より男女平等が進んでいるともいえる
こういうところで「自分の美味しいところだけつまみぐい」をしようとする人は、話を聞くに値しないでしょう。*3
目指してるところは、別にフェミニズムの人がごちゃごちゃ言わなくてもDINKSみたいな形で広まってるわけです。そういう「実際に起きている望ましい変化」をピックアップして後押ししていく作業をしていくことと、足りないところは法整備を訴えるべきかなと。
家計責任と家庭責任を男女で分かち合えるような仕組みや環境がまず必要です。そういう環境があった上で、実際にどう分担するかは、それぞれのカップルが自分たちで、その時その時の家族の状況で決めればいい
全体として成長していかないと、「他の誰かから奪い取らなければいけない」という発想になりがちですが、男も女もお互いに幸せになれるような方向で考えたほうがいいんじゃないかな。そうじゃなかったら男女で結婚する意味ないと思うし。(結婚自体に否定的な方は知らんけど)
おまけ「女性活躍推進法2016」について
こちらも言葉だけいじっててあんまり中身について触れてる人見かけないけど、まぁ実際中身はしょぼいよね……。
女性活躍推進法特集ページ
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000134501.pdf
「えるぼし認定企業」って言葉を使ってる企業を未だに見たことがない……。どうしてこうなった。