相手への配慮のつもりではてなハイクにしたつまりだったのですが、その相手から
ブログエントリーで個人攻撃したら、予想以上に批判されて、擁護もあまりされなかったので、ハイクを使うようにしたそうです
というコメントを頂いたのでブログで書くことにします。こちらの意図をそういう風に邪推されるならハイクを使うことに意味はないですね。
私は「トーンポリシング」を一定のレベルで肯定する立場であるということは何度か書いてきました。つまり、被害者側であっても、それを上手に伝える工夫は必要であり、「相手を不快にさせる物言いでは、相手が話を聞く気にはなってくれないよ」という言い分を認めるということです。
ですがこれは「態度が悪い」からと言って、「被害の存在そのものを否定してもよい」ということではありません。それとは天地の差があると思っているし、そのようなことは一度も考えたことすらありません。ましてそれを「被害者意識が生み出した妄想」といって切って捨てる、ということは絶対にしてはいけないことだと思います。
「その被害があったかどうか」というのは事実の問題であって、相手の態度とは関係がない
「被害が存在するかどうか」は、相手の態度とは関係ない。
被害にあった人が、相手に気遣うことを求めるのは酷だというのは私も理解しています。むしろ人間不信やそれこそ被害者意識から態度が悪くなるほうが当然だと思っています。それが良いとか悪いという話はしていません。
ただ、それでも一般の人は「その被害に対して向き合う義務」が必ずしも存在しない、というのが現実ではないでしょうか。義務があるのであれば被害の実在を証明した時点で、即時救済させることになりますが、世の中そうなっていない。助けたいと思ってもらえなければ周りは誰も助けてくれない。だから伝え方は大事だということです。道徳的な是非の話ではなく、損得の問題として、そう考えています。
トーンポリシングは、現実が不完全であるがゆえの妥協にすぎません。理想としたら、どんな人でも被害を受けた人は、その被害に報われるべきでしょう。しかし社会として公的にすべての被害を救済できない以上、私的な救済を認めるしかない。そして、私的な領域で誰が誰を助けたいと思うか、という話になるとこれは強制することができない。コミュニケーションの問題になってしまうよ、と、私が言っているのはそれだけです。
「不幸」はそれを振りかざすと理を曲げてしまうほどに強力である - この夜が明けるまであと百万の祈り
先祖が戦争に負けたという、自身に責がない理由による迫害。それは確かにいかんともしがたい不幸かもしれんな。だが、その不幸を汲んでやることはできんのだ。そうでなければ、人は不幸自慢を始める。自分はこんなにも不幸だからと不幸を立てにしようとするものもいれば"お前より不幸なやつをしっている、そいつはもっと頑張っている"などと、不幸の格付けや、己の不品行を赦される利権を定めたがる奴もいるだろう。テロや殺人などの凶行に対して、その行動力を境遇の改善に使えばよかったのにと得意気に語るものもいるだろう。人の情報や柵が、まるで天秤の分銅のようにさも移し替えられるかのような口ぶりで。
だが、それらもまた揶揄すべきではない人として当然の反応なのかもしれない。不幸な生い立ちには、それに釣り合う幸せな結末が用意されている「べき」だと願ってしまう。苦に対する社会保障のようなものを求めてしまう。それは自分だけではなく他人に対してもそうだ。それが、人の持つ優しさであり軟弱さであり性というものではないか。
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こうした考え方に対して、女性への差別を訴えるフェミニズムの人たちは、「なぜ被害を訴える人が、話を聞いてもらうために丁寧な言い回しをしなくてはいけないのか」「こちらの思ったとおりの被害者像にならなければ話を聞いてあげないよというのは傲慢だ」と批判しています。私は、これはこれで当然認められるべき意見だと思います。道徳的な理想の話であればそう会ってほしいとも思います。*1
「オタクへの差別は被害妄想」という意見を肯定する人に何故かと聞いたら「差別者意識が先行してるから」という回答が・・・
とはいえ、繰り返しになりますが「被害が存在するかどうか」それ自体は事実の問題です。あるいは少なくとも「訴える人間の心の内面」の話ということになります。それは自体は、聞き手が、相手の態度を判断して良いものではないと思っています。
ところが、これを堂々と主張する人がいた。
まず「オタク差別なんてただの被害妄想 」という人がいまして、それに結構たくさんのスターがついていました。これについて、スターを付けている人のうちの一人に「この意見に賛成しているの?その意図を聞かせて」と確認しました。そうしたらその人の方から来た回答がこちらでした。
①「全てのオタク差別は妄想」とまでは言わないけれど、
②被害者意識的が先行しすぎて、実は権力側・抑圧側でもある場合に、そのことに無意識なケースが多いと認識しています。
③今回はブコメ全体の文意に同意しました
この時点で少し引っかかりを覚えましたが
このコメントの時点ではまだ「権力者・抑圧者でもある」という男女の権力勾配みたいな部分が大事なのかな、と思っていました。
しかしこの人は他の人とのやり取りにおいてこのような発言をしています。
①この主張が、被害者意識が先行しすぎていることを証明しているのでこれ以上何も言うことはない
② 今回の件ではオタク差別は妄想って結論で良いや。
③本筋は性的表現を無分別に晒すなという話で別にオタク趣味に限らない
本筋は③ということでして、そちらの話にも異論はあるのですが、これ読んだ私としてはその前のコメントが気になります。
この人は「被害者意識が先行しすぎているから、今回の件ではオタクへの差別は妄想と結論づけて良い」とはっきり明言されたわけですね。
つまりこの人の中では「被害者意識が先行しすぎているかどうか」が重要なポイントということになります。つまりこの人が被害者意識が強すぎると判断した相手については「言い方が悪いから直そう」ですらなく「そもそも被害は妄想として切り捨てて良い」と主張しているわけですね。
これにはトーンポリシングを一部肯定する私もドン引きです。
「相手の態度が悪いから、被害の事実そのものを否定する」ということを堂々と言う人がいるとは思わんかった……
わたしの発言はもう全然信用がないでしょうから、これはわたしだけの感想ではないということで、この発言を読んだ他の人の感想を載せておきますね*2。私の解釈がおかしいのかと思いましたが、さすがにこれはわたし以外の人も、この発言はやばいという判断をされる人が多いようです。そうだよね…この発言はやばいよね……。
・えー? 「被害者意識の先行」なんて何にでも貼れる万能レッテルでしょ。それこそ「トーンポリシング」ってやつでは?
・ある事象について被害者意識が先行し過ぎてなければ差別になって被害者意識が先行し過ぎていると差別にならないという理屈を主張するって、要するに「お前の態度が気に食わないと差別にならない」って話だよな
・現状が本当にどうなのかとは別に、「何とかなんて被害妄想だろ」って女性の痴漢被害訴えでも度々重ねられるセカンドレイプの常套句だし、事象への具体的批判じゃないし、主語が何であっても見かけると警戒してしまう
・「被害者意識が先行」いい言葉だな。差別とは政治ゲームであるという事実が強く想起される。
・差別を訴える人間は捨てられた子犬のような顔をしていろという有り難いお言葉……
・「お前らが大人しくして俺達に従い殴られることを享受し反抗する態度を一切見せないようでなければ、加害であり被害を受けているとは認定しない」俺はかーちゃんの奴隷じゃないっつーの!
私は自分が主張するトーンポリシングですら「抑圧的で申し訳ない」「理想から遠い妥協だよなぁ」という気持ちでしたが、もうそういうレベルではない。
彼の言葉を素直に並べると
①「全てのオタク差別は妄想」とまでは言わないけれど、
②「被害者意識が先行していない人間以外の訴えるオタク差別は妄想って結論で良いや」
ってことになります。
私はちょっとこれには同意できません。
繰り返しになりますが、「お前の態度が悪い」「もっと穏便に話さないと話を聞く気にならない」という主張なら、人間だし仕方ないと思います。
でも、「お前の態度が悪いから、お前の被害そのものは存在しない。妄想だ」というのは、あまりにも乱暴ではないかと思います。
真面目な話、この発言については、フェミニズムの方こそ怒るべきだと思うんですけど、そのコメントにスターをつけていらっしゃる人が普段フェミニズムを主張してる人たちで、もうこの人達本当にクソだなって思いました。こちらからは以上です。
*1:個人的には、この理想と現実のギャップを埋めるための方策としてカウンセラーによる代弁や、冷静に伝えることができるAllyの存在が必要だという考えです。 事件の被害者も、法的に被害を訴えるには、法的な手続きが必要で、そのために弁護士を雇う必要がありますが、そのハードルが下がったり多様化するといいね、と考えています。こういうのを「マイノリティ憑依」として一律に否定すべきではない
*2:ちなみにこの人はわたしの発言に対して「自分の意見に同意だけ欲しいのかな。随分とナイーブだな」「この人がスター連打を忌諱するのは、自分への反対意見が水増しされているように感じるからなんだろうな」などのコメントをされています。ご自身が「自分への反対意見」が誇張されていても何も問題だとは思わないということと解釈しています。というか、全体的にこの人、人の話に直接受け答えせずに印象論でレッテル張って優位に立とうとする発言ばかりで、すごいいやらしい性格をしているなと思います