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「響」は天才的な作者を描いた作品ではなく天才的な読者・批評家を描いた作品なのかもしれない、というお話

明日から、紹介していただいたマンガの感想始めようと思います。今日は他の人のマンガ原作映画の感想を紹介しておきます。

これすごく面白かった。

私は正直言って「響」という作品について、4巻くらいまでは好きだったのですがそれ以降はすごいつまらない作品だと思っていたんですね。上のまとめでいうと、こういう部分です。

・『響』の原作がイヤっていう人は結構多くて、あの世間知らずな全能感、マッチョな自意識が嫌いという声はある。

・「なろう小説」を書いてる子の全能感、超人願望をターゲットにして無双させるコンセプトがあるわけです。

・原作で「これ漫画はともかく実写映画だと見るに耐えないな」という部分は全部カットして再構成している。固有名詞でハッタリをかますつもりが逆効果になってる純文学論みたいなのは全て捨ててるし、無駄な暴力描写

こういうあたりが、最初は面白かったんだけど、なんだかそれ一辺倒になってて飽きてくると、鼻につくようになってしまったんですね。

私は同作者の前作「女の子が死ぬ話」が結構好きでした。病気であと1年しか生きられない女の子について、そうとは知らず仲良くなり、知ったあとも友達であり続ける、というだけのお話ですが、コンセプトがすごく明確でわかりやすく、描写もしっかりしてて惹きつけられるものがありました。「憧れと同情」みたいなのがないまぜになって、言葉では表現しにくい感情が描かれていたし、自分では手の届かない存在になってしまった少女のことを思う残された二人を描いたエピローグはしんみりくるものがあった。こちらの作品は是非読んでみてほしいです。

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だから、この作品も、同じようなものを描こうとしているんだろうなと期待して、むしろサブキャラに注目していたのですが、なんだかだんだん響が無双していき、周りの人間はそれを眺めるだけ、みたいな感じになってしまい、「なんか違う…」「これだと異世界転生チートものみたいだ……」となってなんだかしょんぼりしてたんです。以前書いた感想はこんな感じでネガティブでした。

そして、自分にとって面白くなくなればなくなるほどますますプロモーションが激しくなっていったもんだから、なんかこの作品は「業界での仕込み」臭いなぁと、そんな失礼な印象すら持ってたんですね。欅坂の人気アイドルが主演だったり、その関係でやたらと秋元康がこの作品について言及してたので、その印象がますます強化されて反発すら感じていました。このあたり、完全に偏見だったなぁと思うので反省しなければいけない……。



でも、このtogetterまとめの感想で、だいぶその印象は緩和される形になりました。他人のいうこと鵜呑みにしていいのかいってのは有るけど、映画見てない段階でもかなり納得性は高いと思いました。

『響』って、実は天才的な作家の物語ではなくて、天才的な読者の物語であり、高校生の批評家の物語なんですよ。

・映画は「響という天才作家が現れたから他の作家はもういらない、響だけ読んでいればいい」というカリスマの物語ではないんですよね。作家をして再び書かしめる批評家として響がいる。

月川翔監督の『響』は、モーツアルト的な天才を崇拝する映画ではなく、響というモーツァルトが周囲のサリエリたちに初期衝動を吹き込む映画になっているんですよね。天才でありたいという十代の欲望をすくい上げつつ、天才でなくてもいい、情熱のまま書けばいいというエンパワメントになっている

と書いている。


なによりも作者さんも、ちゃんと頑張って戦ってるんだ、と思わせる描写も有るんだよって感想を読んで、途中からちゃんと作品を読まなくなってたのは私の方だったなぁとちょっと反省する気持ちになりました。

原作漫画の『響』も本質的には熱い漫画だと思うんですよね。あれは編集部側の「なろう小説家を無双マーケティングしよう」という企画を漫画家の力業であそこまで持って行った作品だと思っていて、響が凜夏に「編集者のせいにするな、書くのも責任取るのもお前なんだ」と語るのは作者の決意表明だと思う

なにかと作品の外側がかしましい印象を与える作品だっただけに、もういちどちゃんと作品の方を読み直してみるのもありかなぁという気持ちになってます。

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ここのAmazonレビューで「キーチ」や「RIN」と言った新井英樹作品を類似作品として挙げている人がいました。確かにそういう風に捉えると楽しめるかもしれません。ただ、そうだとすると響はちょっと饒舌すぎるんですよね。なので、私はこのcdbさんのまとめに有るように「天才的な作者である以前に、天才的な読者である」という視点がすごくしっくり来ました。この作品を読まれた方は多いと思うのですが、どう感じられましたか?