爪も牙も鱗もなく、足も遅い人類がなぜ石器すらない時代にも生き残ってこられたか!その理由は、つかむことに適した手の構造と、投げることに適した肩の構造、そして炎天下でも走り続ける持久力。 ただそれだけで人類は最初の魔法を操った!
すなわち、一方的に敵を撃てる「投石」
どんな獣の牙より長く頭蓋すら砕く威力を誇る「棒とか石」
足自慢の草食獣が座り込むまで追い続ける「悪魔の追跡力」そう、人類とは!知能以前にその身体構造だけで魔法使いである。
…ただし、この世界ではそんな魔法も、人類の専売特許ではない! (人類とは別種の人間が多種存在する)
2巻の冒頭のセリフですが、これなんか読んだら、けものフレンズ好きな人とかは興味持つんじゃないかと思います。ちなみに作者さんはこの作品に着想を得てこの漫画をはじめられたそうですよ。
※最初に言っておくと、今でもエロ漫画家として活躍されている「バー・ぴぃちぴっと」先生ことKAKERU先生の作品なのでちょっとエロ要素が強すぎるというか性行為描写がちょいちょい出てくるので、そういうのが苦手な人にはお勧めできないけれどそうでなければかなり面白い異世界モノだと思います。
主人公どころか、そもそも人間が主役ではない異世界もの
様々な説明をすっとばして主人公が俺TUEEEするために都合がよいファンタジー的な文化や設定を用意するために「異世界」を持ち出して、テンプレート的な世界設定の先に差別化を目指していくのがいわゆる「テンプレ異世界」ものだとすると、本作品は「オリジナル異世界」を模索してる感じ。
例として3点ほど挙げておくと
(1)「モンスター娘がいる」ということよりも、「モンスター娘の生態をまじめに考えたら、女尊男卑になるよな」ということで、女尊男卑社会になってたりとか。そもそも乱婚文化だったりとか。
社会的役割や純粋な身体的能力では我々の社会における男側の存在だから、無理やり力づくで犯してくるのも女側だしむしろ男が女から身を守らないといけない。こういう状況だと男がセクハラ的発言するのはOKだが、女側が男にモーションをかけるのはこの世界では基本的にNG
(2)異世界から来て知識無双できるなら、主人公以外がいてもおかしくないよな、ってことでこの世界では特定の知識チートをすると強制ゲームオーバーになる制約があるとか。(だから知識はあってもこの世界のルールにあわせてアレンジしなければいけないし、火力レベルをあげて物理で殴るみたいなことはできない。
(3)主人公は変態だけれど、サイコパスではなくて、殺し合いにおいてはめちゃくちゃビビりまくりであるところとか。主人公はバリバリの理系脳なのでいちいちスライムとかゾンビについても、その構造や動力原理、脳の働きなどを一つ一つ分析していくところとか。
どうせこうなるんだろうな、という予定調和感がなく、この先どうなるの?っていう未知が常にあるので読み進めていて楽しいです。
追記 2巻の「詐欺師商人強盗」のたとえは結構便利かも
普段から私は「結論が同じでも手段が間違ってる人が嫌い」と言ってるんですが、そのあたりを上手に説明しているなと。
きれいごとっていうのはね。そうすることで結果がどうなるかもわからないのに(ついでにいうとそもそもどうやって実現するかが見えてないのに)「なんだか正しいと思わせてしまう」から危ないの。
ちょっと違うけど2巻のレッドキャップの話とかはランスみたいな楽しさがあって好き。このあたりの「ほかの人間だったら不可能な困難を、ランスならではの無茶苦茶な方法で解決する」という部分であって、そういう意味でのランスシリーズのいいところを少しこの作品からも感じます。
ただ「考えが足りてない人道主義者」にダメだししたうえで、第三の道を選んで解決するのはいいんですが、そのあと主人公が示した解決方法はただのチート反則技であり、全然スカッとはしないですね。
エンタメとしては完全に失敗していると感じました。主人公側の人間「だけ」がメタ視点を持ってるのはかなり減点です。
作者のKAKERUさん、一番楽しいはずの「主人公TUEEE」部分をエンタメとして描くのが極端に下手くそで、やたらと説明が冗長な上に、作者の顔が透けすぎているので評価は全然違いますけれど。とにかく作者自身の自己顕示欲の臭みが強すぎるんですよ。このあたりさえなんとかしてくれたらほかの人にもお勧めしやすいんだけどね……このあたり自力で脱臭できる人じゃないときついし、まして、この臭みにハマって同調してしまうような人にはお勧めしにくい。
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この作品見て、逆にランスはなんだかんだ言ってそこすごいうまいんだなって思いました。