頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「12人の死にたい子供たち」3巻(完) レイプされた側が自殺しなければならないと思い込むまで追い詰められる病理 

イケハヤさん見てて思い出したので「12人の死にたい子どもたち」のアンリさんを紹介しておきます。

もうすぐ公開される映画を見に行く予定の人は絶対に読まないでください。



アンリさんはとにかく心の闇がめちゃくちゃ深いです。

「CARNIVAL」の理沙並みの壊れ具合です。

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どんな感じかというと、レイプにあった女性が、
自分は何も悪くないのに自分を罪深い人間として断罪してしまうことがある、というゆがんだ現象が起きることがあるそうですが
その歪みをさらに極限までひどくしたような感じ。



それと似たようなもので、彼女は、普通の人だったら親を怨むべきような悲惨な境遇だったのだけれど

「その悲惨な境遇を自分の努力で乗り越えたうえで」

親を怨む以上に、自分の存在を否定する。

そして自分のような存在を産み出した社会の仕組みを呪う。

そして、悲惨な境遇を自力で乗り越えるほど意志力が強く、努力もでき、頭もよいのに
その能力のすべてを、「他人を、自分のゆがんだ願望に引きずり込む」ために使う。

その気になれば、いくらでも人を助けたり、世の中をよくする方向に使えるのだろうけれど、彼女は自分がそういう方向性に進むのは許せない。

なぜなら、彼女は自分のことを、存在の根本から間違っていると思いこんでいるからだ。
そんな自分のような人間を消し去り、また生まれないようにすることこそが自分の使命だと思い込んでしまったのだ。
自分は「まとも」とか「普通」であってはいけないと自分に呪いをかけてしまっている。




もちろん、本性を顕わにした彼女の声は誰にも届かない。
終盤までひたすらに知的に優れた様子を見せ、議論をリードしてきた描写を見てから
彼女の豹変ぶりをみせられたこちらはかなり困惑する。
しかし、そんな周りの反応をみたアンリが一番戸惑ってしまう。

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どうしてこんなことになったのか。

家庭環境のせいか、それとも元々その人間がおかしいのか。

なんとも解き明かしがたい問題だ。

アンリさんもそうだったんだろう。

己を救うためにやっとの思いで見つけた答えが

極端な思考だっただけなのだ。

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アンリさんの一番の欠点は、自分を理解してもらおうとしていないことだろう。

誰からの共感も求めていないのだ。

ただ己の主張を通そうとしているだけ。

対話になっていない。

むしろ、誰にも自分のことなどわかるまいと思っている節がある。

鋭い洞察力があり頭も切れる方だというのに……

この主張の根はよほど深いんだろう。

彼女は孤独だ。誰からも理解されない。

イケダハヤトさんが脱社畜サロンを批判する相手をすべてブロックした挙句に意味の分からない空論をわめきちらす様子を見ていると、


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アンリさんと一緒で完全に自己完結してる

この作品において、うつろな目でただ「みんな間違っている」と繰り返すアンリさんを思い出してなんだかとても切ない気持ちになった。

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結局、そうなのよ……まだまだ一般的じゃない考え方なの……
そういうことなのよ……



彼女を縛っている呪縛の内容については、実際に作品を読んでみて確かめてみてください。

いつか彼女が、自分がいいたいことを喚き散らすだけではなく誰かに心を開き、自分も他人からの声に耳を傾けることはできるのか。
作品では少しだけ希望を残すような終わり方になっています。