頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「トクサツガガガ」 毒親との対決エピソードがいよいよ本気出してきたので目が離せない

本作品は、基本路線としては「特撮」という題材を通して、他者理解を志す物語です。
主人公が社会人であり、かつ原則隠れオタであるため、必ずしも距離を縮めたり心を打ち明けることを絶対の善としないのが特徴です。

「理解はするが立ち入らない」「割り切るべきところは割り切る」など、個別の案件ごとにお互いにとって良い距離感を模索する、というアプローチを採用しているのがとても読んでいて納得度が高い。結論が異なる人でも、ちゃんと思考の過程が示されている上、相手の立場への配慮があるためとても読んでいて安心感があります

個人的にはラノベ俺の妹がこんなに可愛いわけがない」や「とらドラ!」の大人バージョンだと思っており
どちらが上とかじゃなくて、お互いに良さがあるので、こういった作品が好きだった人はぜひ読み比べてみてほしいです。


毒親に傷つけられた子供の心を癒やしていくいう側面

「大人の自分」と「トラウマを抱えた子供の自分」を交差させながら、少しずつトラウマを解消していく物語でもあり、交流分析の知識があるとより楽しめると思います。

交流分析 - Wikipedia

自分は「毒親に苦しめられている」という認識がある人は、まず入り口として「毒親」本や、「毒親」への否定を煽るネット言説読んで自分の怒りを認める、というところをスタート地点にするのはとても大事なことだと思います。

でも、そこで止まることを私はお勧めしません
そこでとどまってしまうと、一生周囲に呪詛をまき続ける人間になる危険だってあるからです。私はこの「トクサツガガガ」のような作品を読んだうえで、交流分析の知識をもとに、自分の傷ついたインナーチャイルドや人生脚本を点検する作業を一度はやってみるのがいいのではと考えています。 カウンセラーにかかるにしてもここら辺の下地となる作業を経由していないと、なかなか効果が出にくく、費用対効果が悪いです。また、「子どもとしての自分」に無自覚・無防備だと、心の傷を肯定するかわりに見返りも求める他人*1に利用される危険すらあると思います

本作の「娘」と「母親」について

トクサツガガガ - Wikipedia

仲村叶(なかむら かの)
本作の主人公。
自分で受け入れらない要素を子供から排除しようとする母親の影響で一度は特撮を卒業したものの、高校卒業直前の出来事と大学入学後の一人暮らしを機に特撮オタクに返り咲いた。本作は、仲村さんが職場や日常で起こった問題や疑問を、周囲の協力や影響で劇中の特撮作品内容や、実際にある製作事情などの「特撮あるあるネタ」になぞらえて理解して受け入れたり、勇気を出して物事に対処する過程がエピソードの胆になっている

仲村母
仲村さんが父親を憶えていないくらいの幼いころに離婚し、以来シングルマザーとして2人の子供を育ててきた。仲村さんが小学生になっても特撮にハマっているのを毛嫌いし、一貫して仲村さんが好まない女の子らしい趣味や装いを半ば強いてきた仲村さん最大の敵。仲村さんがこっそり買っていた『てれびくん』で焚き火をした「『てれびくん』焼きイモ事件」は仲村さんの強烈なトラウマとなっている。

この二人が対立しています。というか、物語開始時点では力関係は明確に母親が強すぎて、娘が母親から一方的に逃げ回っているだけです。

この作品の主人公は、自分の母親以外には積極的に他者理解を志しており、
自分に攻撃的な姿勢を示す人間相手ですら、ちゃんとそこに関係を構築して見せます。

tyoshiki.hatenadiary.com

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そういうコミュニケーション能力(ここでいうのは、他人との関係性を構築・維持できるということです)が高い人間でありながら
母親に対してだけは、怯えや嫌悪感が抑えきれず、理解すら拒んでいた。


ようやく二人の「対決」からの「対話」が始まる

特撮オタクを通じて、いろんな人と知り合って、
過去の自分を肯定していったり、心の支えを得て、
15巻まで来て、ようやく母親と向き合う覚悟が出来ました。

最初はまず拒絶や怒りからスタートするようです。
娘としての主人公はずっとトラウマや恐怖に支配されてきたわけですが、
それを怒りに変えることで、立ち向かう勇気を振り絞ったわけですね。


なので、最初はドロドロしたケンカになると思います。

この作品は、決して安易に「親なんだから感謝や理解しなきゃいけない」なんてことは言わない。

主人公である叶の兄が「親になってから、親の悩みや気持ちだって少しはわかるようになった」
「百点満点でないと許されないというのは酷だ」という言葉を叶に伝え、
叶もその考え方には十分に理解を示しつつも


それはそれとして、親とは一度徹底的にやり合う必要があるのだ、という決意で母親に向き合います。

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でも、多分単に拒絶して終わり、というはなしにもならないでしょう。

そこから、どんな対話になるのかが今から楽しみです。



ちなみに私自身は「子どもが親を否定する」ことは全然あってもいいと思います。

私はそうやって、自分を正当化するのではなく、
恨み続ける自分はあさましく苦しいだけだと理解していながら、
覚悟をもってへの憎しみを抱き続ける人に美しさすら感じてしまったことがあります。

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わかっている。ここにいる限り解放されることはない。
いつまでも傷口は開き、裏切りは重く、幸福はただあさましく。
そして私は全てを許せないまま
許せないことをたった一つの証明として---
(papa told me 22巻 ep108 モーニング・グローリー)

全てわかっていてもなお、自分の意思で被害者意識を糧に動き続ける彼女の姿が
自分の中にどっかりと居座っていてつらい。

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なので、とにかく今まで他者理解を志していた叶が、どういう結論を出すのかが、とても楽しみです。


*1:ブラック企業や宗教、ミソジニー、ミサンドリ活動など