1話~8話までが、親子そろって「発達障害」という診断を受けるまでの話。ここまでは発達障害者の子育てを描いたマンガによくあるお話です。
個人的には9話以降がすごいと思っていて、9話以降はお子さんが発達障害ではない、幼児教育にかかわってる人にぜひ読んでみてほしいと思いました。
8話までの「なかなか必要な支援につなげてもらえないつらさ」は読んでて心が痛い
①子供の異常さに気づくも、最初は自分の育て方のせいかと悩む。夫は単身赴任でなかなか子育てに参加できない(これは作者さんも了解の上のことです。そのうえで「見通しが甘かった」と書いています)
②医師や担当者に相談にいくも、知識や対応がピンキリであり、あたりを引くまでガチャのようにいろんな場所に相談に行かなければいけないようになっていた。
③ソシャゲーのガチャと違って、古い考えの人だとゼロじゃなくてものすごい否定しまくってくるので心がボロボロになる。
④最初のほうひたすらはずれを引きまくり、心がボロボロになってきたところで、やっと当たりを引き、発達障害であることを前提に支援につながることができる。今って、運が悪いと必要な支援につながることがなかなかできないんですね。
この「当たり」の人に出会ったときの描写がぐっときます。
自分の抱えている問題を頭ごなしに決めつけたり否定せずちゃんと受け止めて「今まで大変だったでしょ」「頑張ったね」「よかったらお話を聞かせて」と声をかけてくれる相手に出会ったとき、作者は号泣してしまい涙で声が詰まってなかなか話せない、という描写が出てきます。その人は話を聞いたうえでその後の対応まで考えてくれます。今までのには自分の話を誰も聞いてくれなかったんだ、ということにその時初めて気が付く、というありさまでした
それまではとにかく周りからは「見て見ぬふり」をされ、専門家からも「お前は異常だ、お前が悪い」という言葉をぶつけられ続けてきたわけですね。おかげで、ずっと「何物にもなれない」「少なくとも他の人たち未満の迷惑な存在だ」という否定の感情だけ抱えていきるしかなかった。カテゴライズされることでようやく「私はそういうものなのだ」「後は自分がそういうものだという前提でやり方を考えればいい」となる。
実際に、それまで悲観しかできなかったのに、発達障害という診断を受けていろいろと受け止めた後は、作者はむしろすっきりした顔つきになっています。
9話以降の「子育てにおける課題解決」の部分は、子育てにかかわる人みんなに読んでほしい
ここまででも心に刺さる内容なのですが、それ以上に9話以降の「発達障害であることを前提にして、専門家に相談しながら子育てを行う」という部分がとても素晴らしかったです。
作者さんは「あくまで我が家の事例である」と前置きはしていますが、一つ一つ子育ての問題を描いて、それについて専門家の意見を踏まえたうえで実践するとうまくいった、という形で話が進みます。
この際に、作者自身が発達障害でストレスに弱い、という性質があるためこの本で作者が描いている方法は
「親のストレス」にちゃんと注目している点が良いと思います。
「問題がおきて、しかもなかなか子供が思った通りにならずにイライラしたり体力を削られる」という状況が多数発生するわけですが
①このように考えて取り組むとストレスが少ない
②焦らなくてもじっくりやっていけばよいことなのかどうか
③その時子供はどのように考えている(とこちらが考えて対応すべきか)
を一つ一つ丁寧に描いてくれています。
程度の差こそあれど多くは子育てにおいて必ず直面する課題であり、お子さんが発達障碍でない人にも役に立つ内容になっていると感じます。
ちなみに、子供が学校に行く頃になると、親にはさらに別の不安が襲ってくるんですよね
「いつまでこのままなんだろう」とか「今の状態のままだと子供は将来さらに苦しむのでは」とか。
そういうのも赤裸々に語られていて良いです。 今も現在進行形で進んでいるので、しばらくチェックしてみたいと思います。
作者様のサイトはこちらです。
発達障碍者の人のエピソードを募集されているので悩んでいる人は一度チェックしてみてもいいかもしれません。