評価★★★(お勧め度★★★★)
「学校なんて行かなくても生きるほうが大事」「ちょっとくらい学校休んで街を飛び出してもええんやで」って話がしたいなら、この作品を読んでみてほしいです。
この作品はほんとに素敵なのでお勧めです。結構えぐい展開もあるんだけど、言葉が美しいんだよね。
「青春は、後悔で出来ています」とか「2日前に死のうとしたのに、今日はなぜか となりにいる不思議な女の子のおかげで 知らない街でコロッケを食べてます」という、そのままキャッチコピーにできそうな表現がものすごく好き。
お話はシンプルであっという間に読み終わる。でも、一つ一つの表現がとっても素敵なのん
子供のころから仲良し4人組だったのに。
みんな自分に自信がなくて、ほかの人たちのことをうらやんで、疑って。
そうやって、から回ってはお互いに大事な友達を傷つけあって。
その空回りが、危うく一人自殺しかけるところまで行ったけど。
そこで二人が思い切って街を飛び出して。
一旦こんがらがったしがらみを解きほぐしていったら
なんのことはなくてみんなほかのやつのこと好きだったんだなって気づく。
他には何もなくても、自分には大切な友達がいたって気づく。
そんな、すごく痛々しいけど、ぐっとくるお話。
友達にしてやれることなんて、何もないんだよ。継。
友達が失恋しても、病気になっても。借金をしても、道を外れても。誰かをなくして悲しんでいても。友達が友達にできることなんて何もないんだ。
友達が友達にできるのは、それでも友達でいることだけだ。
化物語の忍野メメのようなことを言ってますが、友情ってやはりそういうことだと思うんだよね……。
しかも、後述しますけど。
この大事な大事な友情もまた永遠ではない。変わっていく、ということを予期させる終わり方になっています。
でも。
そうやって時とともに関係が変わっていって、いずれなくなってしまうとしても。
「銀の手」のように、絶対に色あせない何かはある。
そんな祈りのような思いが込められた作品で、あっさりに見えるけどすごく刺さるお話ですね。
この作品は、なんというか素敵な言葉がたくさん詰まっているので時々それを読み返したいなって思います。

- 作者: 尾崎かおり
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/04/23
- メディア: コミック
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空くん :昔の親友からのいじめを苦にして自殺しようとしていた弱い子。街を出て強くなろうと決意する
2日前に死のうとしたのに、今日はなぜか
となりにいる不思議な女の子のおかげで
知らない街で コロッケを食べてます。
俺は優心が俺にしたこと、一生許さないよ。
だから、優心も、俺のこと一生許さなくていいよ。優心が苦しい時、逃げ出してごめん……
そうだ。俺はこれから強くなるんだ。
あれ、なんで死のうとしたんだろう。全部、これから始まるんだ!
継 :両親が離婚。街を飛び出して父に会いに行くも、父と母が復縁することは絶対にないと知る
私、あれに乗る。もうこの街でてく。
あの山の向こうにだって街はある。
世界はずっと続いてる。
我慢してここで生きていく理由なんて、ないんや。いじめを苦にして死ぬ方がよっぽどおばあちゃん泣くやろ!
とにかく、空が行かなくても私は行く。もう決めた。
もし一緒に来るなら、明日朝の6時、金の羊んとこで待ってる。
いつも、ちょっとは寂しいな…でも、ええねん。
これからおいしいもの食べようって時に、腹いっぱいやったら入るとこがないやろ?
きっと今日みたいな。これから起こる楽しいことが入るためにいつもちょっとだけスキマがあいてんねん。
だから、さみしくてもええねんで。
常に満たされていないと不安な人はこの言葉ぜひ覚えておいてほしいなって思う。
さみしくてもええねんで。 さびしすぎたらあかんけど、
ちょっとさびしいからこそ日々の出会いがうれしくて感謝できるわけだから。
常に飽食になろうとしてはいけない。いつもの幸せを当たり前だと思ってはいけない。
なんでみんな変わってしまうんやろ…
なんでずっと一緒にいられへんのやろ。
みんな…どこへ行ってしまうんやろ。
優心 :優等生で誰よりも優しかったのに、親の不祥事で周りから攻撃され、世界のすべてが敵に見えるようになってしまう。不良になろうとして、特に友人だった空を執拗にいじめる
空。本当の俺を覚えていてくれよ。
俺がいつか、今と全然違う人間になっても。
おまえだけは、本当の俺を覚えていてくれよ。
何かになりたい クズ以外の何かに
なんでお前らだけ出ていけるんだよ。
おまえらだけ……ずるい
お前らは最初から持ってるくせに。
俺は、こんなにもがいても何にもなれない
朝里 :スクールカーストにおびえ、かついじめられてからも親に相談することも不登校になることもできず固まってしまう
継への嫉妬で我を見失い、友達だったはずの継をいじめようとする。継が街を飛び出した後自分がいじめのターゲットになってしまう
お父さん、お母さん。
あなたたちのお姫様は、みんなに嫌われてるの。学校という囲われた場所にいる限り、私たちはスクールカーストという見えない階級に縛られ続ける。
いじめの標的にならないように必死で立ち回ってきたのに。
今私がいるのはド底辺。
スクールカーストから逃れる方法としては、
その1 不良になってドロップアウト。
ただしまともな人生からもドロップアウトする可能性高し。
てゆーか、私には無理。
その2.不登校になる。
ただし学校へ戻るにはスクールカーストへの最下層からしか復帰できない。
……出口がない。でも、あいつらは?
そうだ。あいつらは学校の外へ出て行ってしまった。私だけおいて。
私がこんな目にあっているのに助けてもくれないで!
いつもいつも。 私だけ置いてきぼり!あいつらの願いなんて、だいなしになればいい!


みんな
僕たちは、ぜんぜん変われません
散り散りになった4人は、羊の下に戻ってきました。
あの時、僕たちが飛び乗った飛行機。
あの山の向こうにも街があって、誰かが暮らしてる。
僕たちの道はいつか別れて。
もう会わなくなる日も来るのかもしれない。
でもきっと。僕の血や肉や骨は、あの頃の君で出来ている。
関連作品として、私が好きで好きでみんなに読んでほしい「やさしいセカイのつくりかた」を思い出しました。
tyoshiki.hatenadiary.com
前作「神様がうそをつく」を読んでいると、この終わり方がものすごく幸せなものに感じられて涙出そうになる
前作「神様がうそをつく」では最後まで逃げられなかった理生のことを思うと、
この作品で継ちゃんが思い切って街を出る決心をするの、本当に涙が出そうになる。
というわけで、「金のひつじ」も前作「神様がうそをつく」もすべてセット購入で半額還元されるので、ぜひこの機会に購入してみてください。
コルキスの金羊
テッサリアーの王アタマースは妻ネペレーとの間に息子プリクソスと娘ヘレーがあった。
アタマースはのちにイーノーを後妻にめとり、イーノーはネペレーの子供たちに悪意を抱いていた。テッサリアで起こった不作のため、アタマースが神託を受けようとしたとき、イーノーはデルポイへの使者に工作して、プリクソスを生け贄にするよう神託があったといわせた。土地の住民から強いられ、やむなくアタマースはプリクソスを祭壇に連れて行ったが、ネペレーがプリクソスを奪い、ヘルメースから授かった金毛の雄羊の背にヘレーとともに乗せた。羊は空を飛んで海を渡った。
その途中でヘレーは海に落ちてしまい、その地は「ヘレースポントス(ヘレーの海)」と呼ばれるようになった。現在のダーダネルス海峡である。しかし、プリクソスはコルキスに到達して王アイエーテースに迎えられた。プリクソスは金毛の羊をゼウスに捧げ、その皮をアイエーテースに与えた。アイエーテースは金毛の羊の皮をアレースの杜にある樫の木に打ち付けた。これがコルキスの金羊毛である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%BF%E3%82%A4