グランドジャンプ誌で連載されている作品。GJは本宮ひろ志がFGOみたいな作品を連載している雑誌です。他にも「下町テーラー」「来世ではちゃんとします」などがおすすめ。
「日本では精神医療のハードルが高すぎる」「通院型の精神科医への信頼も低い」という問題
日本では、他人に弱みを打ち明けたり、まして精神科に頼ることを軟弱と考え、そういった人の評価を下げたり排除したりする傾向があります。「本当に深刻な人間以外は精神の病と認めず、一度認められたら社会的に死ぬ。すくなくとも出世は絶望的」という圧力が非常に強く中間がないんですね。
いまだに日本では精神病というと「施設に預けられるようなやばいやつ」「病院に閉じ込めておけ」とか考えられやすい傾向があり、「会社公認でクリニックに通いながら働く」というやり方がなかなか通用しないため、症状が深刻化し長期入院やドロップアウトを生みやすいという悪循環ができています。
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO74827560X20C14A7CR8000/
OECDによる国際比較では、日本の精神医療は先進国の中で断トツで「脱施設化の遅れ」「エビデンスに基づく治療の遅れ」などの問題があることが指摘されています。
https://www.oecd.org/els/health-systems/MMHC-Country-Press-Note-Japan-in-Japanese.pdf
このように
・日本の精神科医療は「制度的に」遅れており。
・精神病や発達障害者への社会の不寛容の歩みは遅く
・実際に勇気をだして治療を受けてみると失望することが多いなど
精神科自身の質の担保や信頼感についてもあまりいい状況とは感じられません。
殺人事件に対し、報道や我々の反応が誤っているとそれが原因で当事者の1%が自殺するかもしれないなんて考えたことなかった - 頭の上にミカンをのせる
「ブラックジャックによろしく 精神科医編1」 - 投資クラスタのちょっと気になる話
さらに精神科医が身近な存在でなく普段精神の問題にあまり興味がないせいなのか。
我々が目にする精神科医というのがまた微妙な人ばかりになりがちです。
ネットだとゆうき○うさんしか知らないという人も結構いるような気がします。
他にも香山○カさんみたいな人が目立っていたり、
ワイドショーで結構適当な発言をしているのを目にしたり、
どちらかというと社会学もどきみたいなことをしている人が目につきやすい。
私たちは、精神科医に行くことでどういうサポートを受けられて
どう状況が改善するかというイメージがあまり共有されているとは言えないのです。
アメリカでは精神科医は「Shrink」と呼ばれ、気軽に利用されている。
さて、Shrinkというのは米国における精神科医の俗称です。主人公がアメリカ帰りの精神科医です。
マンガによると、アメリカでは精神医療は日本と違ってかなりカジュアルに使われており、精神科医に通っていたりカウンセリングを受けることは問題になりません。むしろ自己管理の一つとして時には専門家によるケアを受けることは必要とさえ考えられており、それを怠って深刻なレベルまで精神を病むことを問題とします。
精神科医に行くことで必要なケアが受けられるというイメージが共有されており、実際によく使われているので通院する人が主体的に求めるケアを伝え、それに精神科医が応じるというケースまであるそうです。
アメリカ帰りの精神科医であり、アメリカでの現場を知っている主人公は、日本でもアメリカのようにもっと精神科医が気軽に頼られる社会になってほしい、と考えて活動を開始します。
一つ目のエピソードは「ほほえみ鬱(高機能性うつ)」
最初のエピソードから4話使ってじっくり症例を扱っています。
このあたり少年ジャンプとかとは全然違って面白いですね。
最初のエピソードはほほえみ鬱。
笑顔のうつ病はアメリカでは「High Functional Depression(日本では、「高機能型境界性パーソナリティ障害」と訳されることも多いですが、意味合い的には「社会順応型境界性パーソナリティ障害」と言うべきでしょう)」や「持続性抑うつ障害(PDD)」の別名で、慢性的に悲しみを感じ、睡眠や食欲に影響を及ぼしたり、絶望や疲れを感じたり、パニック障害を起こしたり、好きだった活動に興味が持てななくなる…といった症状が現れる
https://www.esquire.com/jp/menshealth/wellness/a27428265/smiling-depression/
名前はかわいいですが、普通に死に至ることもあります。
このエピソードで登場する患者は一度よく鬱状態になった後「産業医」の指示ですぐに職場に復帰しようとしますが実際には全然回復しておらず、無理をしたことで自殺一歩手前まで行きます。
このように「産業医」は社労士や公認会計士のように会社よりの立場であり、会社員のケアにはどうしても限界がある。また、休職すると会社との立場で交渉力がとても弱くなり、職場復帰してもまた鬱になる人もかなりの割合いるそうです。そういうときのために休職復帰の際は「精神保健福祉士」や「精神科医」の利用も必要だと語られます。
近年においては、企業のメンタルヘルス問題などを取り扱うEAPや休職している人の職場復帰(リワーク)支援など職業リハビリテーション分野での活動を始め、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定される、社会復帰調整官や精神保健参与員としての活躍が認められ、必ずしも精神医療・精神保健福祉分野に限定されない活動が期待されている。
その上で、ほほえみ鬱に対して「病気の治療」というのではなく、もっと広い視野から患者のためのアドバイスを行っていきます。
非常に丁寧で読みやすいので、たぶん「フラジャイル」みたいな感じでドラマ化しそうな気がするので、今のうちから読み始めてみてはいかがでしょうか。
「月子」さんの作品
スクショで見覚えあるなと思った人は結構マンガ好きな人だなと思います。
「このマンガがすごい女性版」の常連である月子さんの作品なので読みやすさについては折り紙付きです。
ぜひ読んでみてください。