頭の上にミカンをのせる

マンガアニメ大好き兼業投資家の日記です

セブンイレブンの利益率が他社より圧倒的に高い理由について考える

セブンイレブンの記事、多くの人からいろいろツッコミや感想いただいてありがとうございます。少しでも参考になったところがあれば幸いです。



ところで、私が一番興味を持ってほしかったのは「セブンイレブンのコンビニ事業セグメントの営業利益率がめっちゃ高い」というところでした。

・セブン     9550億  2540億
・ドンキ(統合前)9415億   572億
・ローソン    7000億   570億
・ユニーファミマ 6170億   453億

この部分について「へー何がそんなに違うんだろう」って考えてみてほしかったんですが、「それだけ搾取してるってことでしょ」で終わりにしちゃってる人が多くてもったいないなと思いました。

「搾取」って言葉はマジックワードというか思考停止ワードみたいなもので、それで分かったつもりになるけど実際は何もわかってない、ってことが結構多いです。そこから一歩掘り下げて「搾取っていうけど搾取とは具体的に何なのか。なぜセブンだけ?他はやってないの?」を考えたら面白いんじゃないかと思いました。

というわけで、合ってるかどうかわかりませんが、自分なりに考えたことを書いてみます。



基本編 コンビニチェーンのPL/BSはどのような特徴があるか


まずこちらでフランチャイズ本部がどのような利益構造になっているか確認してください。


さらに、BSまで含めてみてもらうとより理解が深まります。

※ちなみにこの記事はちょっと間違いがあって、海外の利益率が低いのは直営店メインだからではなく「エリアライセンシー(名義貸し)」が中心だからです。特にアジアはそうですね。

ちょうど昨日、次はインドに進出する計画だとニュースになってましたね。
インドにセブン進出、3~5年で500店 小売市場開拓 :日本経済新聞


比較編 コンビニ3社の中でセブンイレブンだけ突出して営業利益率が高い理由を考える

(1)まず粗利の時点で大きな違いがあるか?

みなさんがイメージする「搾取」は、
①チョコレート工場のように労働力を不当に安い価格で買いたたき、それを高い値段で売る
②一部派遣会社のように、中間で必要以上の中抜きを行う

みたいなイメージではないでしょうか。

コンビニ業界全体がそういう搾取をやっているかいないか、というのは置いといて。皆さんは「営業利益率の差」を搾取のせいにしてましたよね?ということは、今問題となっているのは「セブンだけがほかの2つより明らかにオーナーに対してひどい搾取をやっているかどうか」です。


これについては、少し古いデータですが、粗利レベルで見ればどのコンビニもほとんど変わらない、が正解になります。

売上高総利益率は、セブン─イレブンが 81%、ローソンが 81%、ファミリーマートが 78%。すなわち営業利益率で違いが生じていることがわかる。したがって、セブン─イレブンと他の2社の違いは販売管理費の大小にあるということができる。

https://waseda.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=14905&item_no=1&attribute_id=162&file_no=1

というわけで、皆さんのイメージはちょっと違うということになりそうです。



(2)販管費(コスト)はどのくらい違うのか?
ここで、基本編の記事をちゃんと見てくれた人は、コンビニチェーンでは、売上原価が低く費用のほとんどが販管費であったことは確認してくれていたと思います。

コストの大部分を占める販管費が大きく違えば営業利益が大きく変わってくるのはイメージできますよね。

では実際どのくらい違うのかというとこんな感じです。

セブンイレブン個別
f:id:tyoshiki:20190717153217j:plain

https://www.7andi.com/ir/file/library/kt/pdf/2019_0404kt.pdf
営業収益8735億に対して販売管理費は5616億。64%

ローソン個別
f:id:tyoshiki:20190717153231j:plain
http://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/tanshin/tanshin_h31_rentan.pdf
営業総収入4687億に対して、売上原価がセブンより1%大きい9%として計算すると3772億。80%

ユニー&ファミマ個別(ファミマ単体は来年から)
f:id:tyoshiki:20190717153248j:plain
http://www.fu-hd.com/ir/library/earnings_reports/1902_tanshin_jp_er6.pdf
営業収益5277億に対して、売上原価がセブンより1%大きい9%として計算すると4266億。81%。

というわけで、確かに販管費がセブンだけ断トツで低いですね。


(3)なんでこんなに販管費が違うの? セブンは人件費ケチってるんじゃないの?
先の資料で指摘されてるのはこの2点です。

①水道光熱費の負担はセブンイレブンのほうが圧倒的に多い。

セブン─イレブン、ローソン、ファミリーマートで販売管理費比率、営業総収入比率ともに差がついているのは水道光熱費、地代家賃、その他の 3 項目であることがわかる。水道光熱費について、例えば 2008 年度は販売管理費比率でセブン─イレブンは 12%を占めているのに対し、ローソンは 1%、ファミリーマートは 5%と差が見られる。この差の要因は本部負担の有無による。セブン─イレブンは全加盟店の水道光熱費の 8 割を本部が負担している。ファミリーマートは、契約形態の一種(2FC ─ N)で加盟店負担の上限を超えた分を本部が負担している。

②地代・家賃はセブンイレブンが圧倒的に低い

各項目でその他を除き最も割合を占めるのが地代家賃である。例えば 2008 年度は販売管理費比率で 25%、33%、37%と差が見られる。営業総収入比率でも 12%、22%、24%と 10%以上の差があり、セブン─イレブンが圧倒的に低いことがわかる。

これを組み合わせると、セブンイレブンの販管費が他と比べて低い原因について「搾取」以外の理由が推測できます。

面白いので一度考えてみてください。





「ロイヤリティーのタイプ比率の違い」と「金融事業の比率の違い」が答え


(1)ロイヤリティーのタイプ比率の違い

上の資料ではズバリ一行でこう書いています。

この差の要因は加盟店の契約タイプが関係していると考えられる。

さらにこのような補足があります。

一般には、セブン─イレブンの競争優位の源泉は、「ロイヤルティー率の高さ」や「ドミナント政策」、「POS システムによる単品管理」などと言われているが、財務諸表に基づき各社の業績を考察する限りでは、販売管理費、特に地代家賃の少なさが競争優位の源泉であるというのが本論文からの発見であり、結論である。そしてこれこそが、他社が容易にセブン─イレブンにキャッチアップすることができない要因ではないかと考えられる

実際、店が開業のための資金や土地を用意する場合、ロイヤリティが非常に高いので売り上げも高くなります。しかし販管費との兼ね合いで考えると個人商店をセブンイレブンに入れ替えたほうが販管費安くなって利益も高いんですね。

f:id:tyoshiki:20190716111624p:plain

その割合がほかのコンビニチェーン店より高い。これがかなり答えとしては近いんじゃないでしょうか。これを検証するデータがあればよかったんですが、見つかりませんでした。

売り上げ収益の比較だけで見るよりセブンイレブンは強い

さて、もういちど冒頭の比較を出します。

・セブン     9550億  2540億
・ドンキ(統合前)9415億   572億
・ローソン    7000億   570億
・ユニーファミマ 6170億   453億

これをみて、セブンとローソンには売り上げでそれほど大きな差がないと思った人もいますよね?


でも実際のコンビニ事業の売り上げ収益を比べるとこのとおりになります。

セブン8735億、ローソン4687億、ユニーファミマ5277億。

さらにセブンの売り上げは他よりも数字が小さくなりがちな個人商店からの切り替えタイプが多い。さすがに昔ほどは高くないですが、今でもセブンの比率が高いです。もともと個人商店やってた人があえてコンビニをやる場合、やはりセブンが選ばれてるってことなのかなあと。

このためセブンイレブンの「店舗売上」における国内シェアは実は42%と言われており、他の2社合計とほとんど変わらないくらいの数字があります。前の記事で思ってる以上にセブンが強いというのがお判りになるでしょうか。

f:id:tyoshiki:20190717153720j:plain
https://irman.site/model/conveniencestore/


(2)さらに「セブン銀行」がめちゃくちゃ強い
セブン銀行は1200億の売り上げに対して400億ほどの営業利益率です。国内コンビニ事業の業績にこの数字がまるまる入るので営業利益率がさらに高くなるというわけです。

ローソンもそこそこやってるんですが、セブン銀行ほどではないですね。ファミマは今まで弱かったのでファミペイには相当気合入れていると思います。ペイ系によってゲームのルールが変わりつつあるのに、今まで築いたポジションに固執したのも7payの失敗の一つの原因といえるかもしれません。

ただ、私はセブン銀行使ったことないので、なんでこんなに使われてるのか全然わかりません。セブンイレブンたくさん使ってる人はどんな風に使ってるのか教えてほしいです

<追記>

hyperlexia539 セブン銀行は個人客の手数料収入もあるだろうが、加盟店収益が大きいと思う。ネット銀行は大抵セブン銀行での入金引き出しに対応しており、セブン店舗だけでなく他企業店舗の売上入金までセブン銀行でできるので

ありがとうございます!こういうコメントいただけると本当にありがたいです。


なるほどそういうことかと思って調べてみたら確かに。
セブン銀行が超高収益を実現できた訳 銀行の従来モデルを真っ向から否定 - ライブドアニュース

セブン銀行はATMの利用料で稼ぐシンプルなビジネスモデルである。しかも利用者が手数料を支払うのではなく、600以上ある提携金融機関(銀行も含まれる)が手数料を支払うというのがミソだ

“ATMだけ”で高収益、「勝ち組」セブン銀行 (2ページ目):日経ビジネス電子版

1104億円のうち9割以上の1022億円はこうしたATM事業が稼ぎ出す。つまりセブン銀の主な顧客は、冒頭に紹介した新生銀のような金融機関なのだ。支店網を充実したり、預金集めを強化したりすれば、むしろ顧客である金融機関と競合してしまうという立ち位置にある。

f:id:tyoshiki:20190718005540p:plain

セブン銀は国際送金ビジネスを手掛ける米ウエスタンユニオンと提携。2011年3月から同社の代理店網を活用して割安な送金サービスを始めた。200以上の国・地域、50万以上の拠点に現金を送ることができる。手数料は送金額が1万円以内なら990円、5万円以内なら1500円などと定めた。



(3)ちなみに、ローソンは店舗レベルで見ればセブンイレブンよりも営業利益率高いです
https://www.huffingtonpost.jp/hirofumi-tanaka/japanese-store-lowson_b_12093950.html

細かくは説明しませんが、ローソンはローソンでメガフランチャイジーが多かったり出店についても「郊外店が多い」「関西が強い」など別の理由で販管費が抑えられています。セブンと違って拡大一辺倒ではなく、投資収益率にこだわり、不採算店舗はちゃんと閉めていきます。過剰な出店でカニバリにならないように一番気を使っていると思います

なので実はセブンとそんなに利益率変わりません。年によっては勝つこともあります。今販管費がとても大きくなっているのは、いちはやく無人化・省力化に向けての投資を先行していることと、明らかに一社だけ遅れていた海外進出を始めつつあるかららしいですが、これはこれで別途調べる必要があるかも。今のところローソンがそんなに無人化でリードしてる気はしないなぁ……。

逆にセブンはカニバリ状態になってもまだ出店を推し進めたり、来客数の減少に対して省力化の代わりにますます人をこきつかって単価を上げようとさらに負担を増やしました。このため人手が確保できなったコンビニオーナーから負担がえげつないことになって真っ先に問題化したと思われます。

コンビニ各社は人手不足を背景に、無人レジなど業務の自動化を検討しているが、セブンは逆に人による接客強化を強く打ち出している。食洗機の導入など店員の負担を減らす施策は実施するが、大胆な無人化は考えていないようだ。同社では、店員の接客研修を強化しており、レジ・カウンターでの商品販売を増やそうとしている。客数が頭打ちになっても、売上高の増加を維持するのが狙いである。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55314

関連会社にも負担がかかっているそうで、いろいろとやりすぎ感が出ているかもしれません。
セブン‐イレブン主要取引先「初の減収の訳」 -- 米飯、惣菜、調理パン製造のわらべや日洋に何が? | 時事とトレンド | 山本解説委員の「今、注目の企業はここだ!」 | 商業界オンライン

今の様子を見ていると、将来的にこのあたりからセブンの戦略が壊れていく可能性はありますよね。今後がどうなるか楽しみです。


まとめ

違いがないように見えて結構違うコンビニのモデル。

それぞれの会社のポイントをまとめると、

セブンイレブン…ドミナント戦略
ファミリーマート…攻めの経営
ローソン…ターゲティング戦略・投資収益性
でしたね。

でも、「コスト管理や兵站」部分といった面で見るとセブンの強さと問題点が見えてくると思います。こういう比較って面白いなあと思ってます。

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