おすすめ度★★★★(2巻までは普通ですが、3巻・4巻の展開はとても楽しかった)
eBookJapanで1~5巻までのまとめ買いセールやってので買いました。BookWalkerやeBookJapanでは1巻が無料なので、とりあえず1巻を試しに読んでみるのをお勧めします。
とある王朝で後宮に使えることになった侍女の話
妃の地位は、家柄に加え、美しさ・賢さを基準に選ばれる。仲でも賢さが一番難しく、国母にふさわしい教養に加えて貞操観念が必要だ。自分と国に都合の良い妃をそろえさせ、子を産ませ、その能力がなければ、切り捨てる。わが主ながらひどいお方だ。
後宮というというシステムの中で、妃たちは出世争いに明け暮れ、下女たちは日々与えられた仕事をこなしつつ、女の子どうしキャッキャウフフしながら玉の輿を夢見たりする様子が描かれる。
そんな世界に、主人公は望まずして放り込まれる。彼女は花街に住む薬師の弟子だったのだが、ある時人さらいに攫われて後宮の下女として売られてしまったのだ。(流血女神伝を思い出すなー)

- 作者: 須賀しのぶ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/06/30
- メディア: Kindle版
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そんなわけで、彼女はこの世界において異物である。男顔負けの知識や知恵を持ち、出世には興味なく調薬といったほかの人が興味のない部分に熱意を燃やす。さらに、あえて不細工に見えるように化粧をするなど面倒ごとを避けるよう立ち回る。
そんな感じで、明らかに周りから浮いているのだけれど、後宮を実質取り仕切っているお偉いさんが彼女を気に入ってちょっかいを出してくるように来て、そのせいで後宮でおきるゴタゴタ話に巻き込まれることになってしまう。
中世の王朝ものというスパイスがついた刑事サスペンスもの
日常の謎を現代ではなく中世ものでやるのは結構難しい。ちゃんと中世の日常を描かなければいけないから手間がかかる。その点、この作品は、漫画家さんの力か私の知識がないせいか、描かれている後宮での日常やイベントに特に違和感を感じるところはない。むしろきっちり設定を描いてくれているおかげで、ただの薬屋見習いの少女である主人公が探偵をやってもおかしくないように見えるのはとても上手いと思う。
また、現代でも役に立つ知識が描かれてるから読んでて退屈しない。寒さ対策にショウガやミカンの雨を用意したり、肌着にポケットを作ってカイロを忍ばせたり。
ミステリに関しても、そんなに難しいものではない。「水銀のおしろいが毒」だとか、「アレルギーのあるものを食べさせるは毒と同じ」だとか「指紋は意外と簡単に採取できる」とか、「赤ん坊にハチミツ飲ませたらあかん」とか。
そういった現代人であれば当たり前にわかることをこの時代の人は知らない。この現代と中世との知識差を利用して、読者である私たちも気軽に楽しめるように物語を作ってくれている。
とても上手だと思う。
花街編の主人公が生き生きしていて好き
主人公はもともと花街生まれであり、運悪く人さらいにつかまって後宮に売り飛ばされたが
後宮で上手く立ち回ることで人気途中で一度里帰りに成功する。
その際に起きた殺人未遂事件の際に、師匠でもある親と一緒に事件を考えるときは後宮にいるときよりもずっと生き生きしている。これは本来のマオマオちゃん(主人公の名前)なのだろう。
でも、最終的には花街もまた厳しい世界であるということをあらためて確認する。
ずっと帰りたかった花街も、本質は後宮と変わらない。
花園であり、鳥かごだ。みんな、閉じこもった空間の空気に毒されていく。
妓女も周りの毒を食らうことで、自分も甘い毒へと変わっていくのだ。
(中略)
関係ない。どちらでもいいことだ。そんなことをいちいち考えていては、この街では生きていけない。
3巻からがこの作品の本領発揮
2巻までは、話つくりが丁寧だしマンガもうまいよなーくらいな印象だったけど3巻からがミステリとしても非常に面白かったです。
①里樹妃と阿多妃の対立が原因と思われる毒殺未遂事件から始まり、②侍女の水死事件。③16年前の東宮病死へとどんどん話がつながっていく。さらにそこに自分の父親が関与していたり、いつも自分をからかう上司の正体まで……。ただの食物アレルギーの話から、ここまで話が綺麗につながっていくのはすごい。
私が好きな「氷菓」を読んだときのような「話がつながる快感」を感じました。1巻2巻でウォームアップしつつ伏線を張っておいて、4巻できっちり回収してくるのものすごくうまい!正直1巻か2巻の時点ではそれほど熱心に読む気はなかったんだけれど、4巻まで読んだ後はこの先も続けて読みたい!って気分になりました。
これは間違いなくおススメ作品です。

- 作者: タスクオーナ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2012/09/01
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余談ですが、里樹妃は可哀そうだわ……。先帝がペドフィリアだったせいで、物心つかないころから後宮に入れられ。先帝の死後このようなスライドが発生し、
しかし現在の帝が逆に巨乳の熟女好きなせいで、里樹妃は何も悪くないのに立場を失う。
その結果、自分に使えるはずの侍女からいじめられるはめに。
さらに、全然本人の性ではないのだが、ある秘密に関与していたせいで「恨みは一切なくただ邪魔だから」殺されそうになる。
この娘がちゃんと後宮争いを生き延びてちゃんと大人になれたシーンを外伝とかで観たいなぁと思いました。
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- 作者: 日向夏,ねこクラゲ,七緒一綺,しのとうこ
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