頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

最近のこのブログのお気に入りは「アークナイツ」です
アークナイツ
kindleセールの紹介
新NISA解説ブログ
発達障害

前澤さんの「節約モードから散財モードへ」という楽観的なスローガンは「サマーズ元米財務長官の長期停滞論」を思い出す



この発言についてしょぼいながらも投資やってる人間としての立場から感想を述べます。
正直、投資やってない人にはよくわからん話だと思うので、そういう人は見出しだけ読んでください。



前澤さんの意見は、「サマーズ元米財務長官の長期停滞論」の劣化版です

あるいは、大前研一氏も「心理経済学」と称してだいたい同じようなことを言っていました。

大前流心理経済学 貯めるな使え!

大前流心理経済学 貯めるな使え!

世界は感情で動く : 行動経済学からみる脳のトラップ

世界は感情で動く : 行動経済学からみる脳のトラップ


一見この話はとってももっともらしいですが、先に結論からいうと国民にもっと消費しようと直接呼びかけるのは無意味だと思います

サマーズ氏の認識には、先進国経済は過剰な設備・貯蓄・労働力を抱えており、これらを十分活用するような投資機会が不足している-との判断が根底にあると読める。


サマーズ氏の論は、過去の高名な学者によっても唱えられてきた「資本主義の長期停滞論」を想起させる。

ケインズは「資本主義が発展するにつれて欲望が飽和し、良質の投資機会が枯渇して収益率が低下し、長期停滞に至る」と見た(ゆえに有効需要創出を主張した)。シュンペーター
は、資本主義を資本主義たらしめるのはイノベーションを主導し、投資機会を掘り起こす企業家であるとした上で、資本主義が発展するとともに合理主義・官僚主義がはびこり、企業家精神の衰退、企業家の没落を招き、「資本主義はその成功ゆえに生き延びることができない」と喝破した。

サマーズ氏は現状に対する処方箋として、①職業教育拡充、企業の技術革新力底上げ等サプライサイドの強化、②低金利の維持と金融安定化のための規制強化、③インフラ更新、エネルギー源多様化などの公共投資の拡大-を示し、「長期的停滞は不可避ではない」と我々を勇気づけている

https://www.smtb.jp/others/report/economy/22_0.pdf

サマーズさんや大前さんは、さすがに前澤さんほど能天気ではない。

「経済を回す大部分のお金は、トップ10%の富裕層や企業の投資」なので、富裕層がお金を貯めこまず投資することが重要だと述べています。

富裕層や企業が設備投資をすることによって経済が活性化したり、緩やかなインフレが起きたり、
個人の所得が上がったりいろんなキャンペーンを仕掛けることで消費が加速されます。

これはにわたまではないです。動く額が全く違うので、先に企業や富裕層が積極的に投資や消費を行うことが先です。


日本の金持ちや企業は稼いでる金額に比べて全然お金を使ってない

サマーズの長期停滞論によるならば日本ではこの動きが2015年ころからすでに鈍っているので景気が停滞し始めています。

f:id:tyoshiki:20190928225323p:plain
https://pixy10.org/archives/610592.html

※「貯蓄率」のデータを見て貯蓄率上がってるばんざーいってなってる人は統計のトリックに騙されています。リーマンショック以降の貯蓄率のデータが示すのは、資産の8割くらいを持ってる富裕層の資産動向を示しているにすぎず、国民全体の動きを意味しません。要するに2015年からは超富裕層は、使う以上に稼いでいるか、お金を使わずにため込む流れになってしまったってことです。

また、日本企業の内部留保が過去最高に高まっていることからわかるように、企業もたくさん稼いでる割にそれらは積極的な投資に使われていません。現金のままため込んでたり、ほかの会社の有価証券を購入したりです。

つまり、日本の金持ちや企業は稼いでる金額に比べて全然お金を使ってない。そうやって庶民のお金は日本の金持ちや企業の方に流れてため込まれて、一般時の家計や市場にはお金が流れません。この状況で、国民が積極的に金使うと思う?無理でしょ。



さて、こういう状況下において上のような発言をする前澤さん、率直に言って環境会議の前日に牛ステーキ肉を食いに行った小泉進次郎さんとかぶりますね

kabumatome.doorblog.jp
この時と言い、良くも悪くも無邪気な人なんだろうなあって思いますね。




ちなみに、アメリカの場合は日本と違って「投資」効果で、富裕層以外の資産もそれなりに増加しています

①国民の7割が確定拠出年金401Kを利用しており、
②彼らの大半はインデックスファンドを買い、
③大企業は株主の利益第一で債務超過寸前まで自社株買いや配当を出して株価をあげ続けるので
④かなりの国民が所得以上に金融資産が増えて余力が得られるので旺盛な消費が持続しています

金融資産残高に約3倍の差? "両手で働く"アメリカ人と"片手で働く"日本人 | ファイナンシャルフィールド


安倍さんも、日本でもアメリカと同じ①~④の流れができればもっと消費も活性化すると思っていたと思うんですよね。
アベノミクスって結局それが狙いだったわけですよ。
でもそうはならなかった。アメリカのパクリだけじゃダメってことです


そもそも、「サマーズの長期停滞論」自体に疑義が提示されています。

jp.reuters.com

サマーズ氏は、経済低迷は主に、実質的、構造的な貯蓄増加が原因だと主張する。そのような貯蓄の増加は、投資減少とあいまって、金利を低く抑え続けていると。

しかし、IMF報告書の作成者は、貯蓄がさらに減少すると見込まれ、金融危機以前の低水準にまで戻る可能性があると指摘している。資産市場が上昇し続け、消費者の純資産を増やし、彼らに借金してもっと消費するよう促すとすれば、これは現実味を増す。これは、すでに米国史上2番目に長い景気拡大を、さらに延長させることになる一方、経常赤字に「ネガティブな圧力」をかけることになり、成長の足を引っ張る要因となる。

何が言いたいかというと

とりあえず前澤さんの発言はイラっとするってことですね(笑)


「一般庶民に金もっと使え」なんて呼びかける暇があったら、
①自分以外の金持ちや企業にもっと金使うよう呼びかけるべきだし、
②自分自身がどんどん好きなことにお金を使えばいいし
③一般庶民に金を使わせたければそのための仕掛けやキャンペーンをやるべきだし
④自社社員に対しては給料を上げるべきだと思います。


とはいえ、前澤さんは②と③と④は実践してきた。
だからほかの人よりもはるかに有言実行の人です。いう資格はある。
②はちょっとやりすぎて、担保にしてた株を孫さんに引き取ってもらわないとにっちもさっちもいかなくなってしまいましたが。


理想を言えば、足りてない①について、実践者としてメッセージを発信してほしかったってところでしょうか。
我々は我々で、ZOZOの奇妙な借金や散財をもっと歓迎しないといけない。



なお、企業留保の方ですが……

こちらはおそらく、今後自社株買いや親会社による子会社買収に使われることになると思います。

例えば日本最大の企業であるトヨタは、ミサワやスバルの子会社化をすすめてるほか、今後も日野自動車なども子会社化していくでしょう。
日立もだいぶ子会社化を進めていますし、これからどんどんそういうラッシュが起きてくると思います。
さらになんで上場してるかわからんし株主を軽視してる会社も国にせっつかれる形で株主ファーストなお金の使い方をしだすでしょう。

「株主としては」恩恵が得られるけれど、ここまで来てもなかなか従業員の給与を上げる方向には進まないと思います。


結局我々は、投資とかしないと、「企業の投資や金持ちの消費」が増えてもその恩恵が受けにくくなってしまった。
そういう時代に生きているってことは理解してた方がいいと思います。