正直この問題、いろいろデリケートな話があってあんまりがっつり書きたくないのでとりあえず当たり障りのない部分だけ触れておきます。
そもそも、今問題になってる組体操ってどんな感じかというと
ちなみに、普通の学校はピラミッドといっても五段くらいのイメージだと思います。
五段くらいだと、危ないけどまぁそのくらいなら…って人もいるんじゃないでしょうか。
でも、実際にはこんな感じでやってる学校あるからね?しかも大阪とか兵庫にはたくさんある。
んで、年間どのくらいのけが人や死者が出てるのか、もイメージじゃなくてちゃんと数字で確認しておこうね。
こうやって実際のイメージと数字見たら、さすがにやばいからやめさせろって思うよね。
でも、これをやめさせようッて思っても三重の問題があります。
第一の問題 あくまでも教育委員会や各学校の自主判断に寄らなければならない(これ自体は守られるべきルールだと思う)
この組み体操の問題だけが解決できればいいというものではありません。必ず他の分野でも波及し、教育委員会の行政からの独立という制度自体が危うくなります。
結局、教育委員会、各小中学校の自主判断によらなければ止められないことになります。
もっとも、それでは生徒もその保護者も置き去りです。教育委員会の独立性はこうした生徒やその保護者の声を無視してもいいという趣旨のものでありません。
まずこれが大前提の話としてあります。
生徒や保護者が辞めさせたいって声がまとまって教育委員会の声に届くのであれば、教育委員会だって普通にやめようってなります。
というか、各県ごとに調査を実施して、危険を判断したところでは「対策」や「中止」を間接的に求めてます。
県によってはかなり減少しています。千葉県などではすでに実施率が3割程度まで減少。
一方で兵庫県は未だに84%実施しています。これでも減少したほうですが圧倒的なワーストです。兵庫県だけで100校以上が6段以上のピラミッドに挑戦しているなど全体的に狂気を感じます
http://www.hyogo-c.ed.jp/~board-bo/kisya30/3101/310107taiiku.pdf
もちろん兵庫県でも、たとえば明石市教育委員会は市全体で翌年の組体操の中止を決定しています。
特に過激な組体操で有名な西宮市も、段数に制限がかけられるとのことです。
神戸新聞NEXT|総合|明石市、組み体操の実施見合わせへ 20年度
じゃあなんで辞めさせないのか、ですがここでさらに二重の問題が発生しています。
第二の問題 農村部や老人が多い町は、現実を見ようとしない保護者の人たちが中止に猛反発する
この問題について、まず保護者の問題から切り込んでいるのがこの記事です。
mainichi.jp
元々組体操が盛んな地域性みたいなのがあるそうです。
たとえば西宮市には「難易度の高いタワーを達成できる学校」ということをアイデンティティにしてしまってる学校がある。
こういう学校だと教師や、その地域の住人たちの「誇り」「生きがい」みたいになっちゃってる。
子供の安全よりも自分たちの生きがい重視ってなってるので学校と地域が連携して拒むんですね。
また、世代的な問題もあります。
体育教師自身は「猛暑で練習時間の確保も困難。難易度の高い技はやめたい」といってる学校もあるのに
農村部などは運動会が地域ぐるみの行事になっており、町内会長らから「見どころをやめないで」との声が寄せられるそうです。
結局のところ、「保護者」が嫌がっていても、「老人たちが多い地域」だと自治体としては老人たちの意見しか通ってしまう。
そして、老人たちはこういう「伝統」みたいなのに関しては理性的な判断ができていない、ということです。
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第三の問題 低所得者層や特定の地域では「子供自身もやめたがらない」=「自ら進んでやりたがるし、組体操の中止にものすごい抵抗する」
この問題、なぜか子供のためと言いながら子供の意見ってあんまり話題に上がらない印象があります。
もちろん地域で個別には調査は実施してるんですが、サンプルとしては弱い。
http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/49763/1/10
http://school.city.tajimi.lg.jp/seika/wp-content/uploads/2017/02/494c298acbd3e5590764de1932cf2052.pdf
ちなみにこんな感じです。7割くらいの子供は自ら再実施を望みます。(意外なことに男子より女子の方が割合が高い)
私は今でもちょくちょく仕事で教育現場見に行くことがあるんですが、ものすごく厄介だなって思うのがこれですね。
「子供自身が組体操をやりたがる。やめたがってない」というのがあります。
特に、最近の子供たち、
ダンスの授業もあって、体動かすの大好きだし、仲のいい友達と組体操するのもすごい好きなんですよね。
子供たちが嫌がってるのに教師が無理やりやらせてるとか、「教育効果があるからやってるんだ」みたいなことがよく言われるんですが
それは自分の実感とは全然違います。
昔はどうか知らないけど今現在の現場の教師の人はもうそこまで組体操にこだわってる人多くないです
むしろ、どっちかというとこんだけ批判されまくってることもあって
「厄介だからそんなにやりたくない」「リスクが気になる」って愚痴ってる人結構多いです。
でも、子供たちは放っておいても休み時間に勝手にピラミッドとか飛行機とかやりたがります。
全然「やらされてる」って感じじゃない。
むしろ組体操って本当にクラス運営のために必要なツールみたいになってるところがあって
安全のこと考えたらやりたくないけど、「ご褒美」として組体操やらせないと生徒がついてこないって言ってる教師もいました。
さらに、こういう言い方をするとよくないのはわかってるんですが、「子供の教育に関心がない世帯」ほど組体操大好きになる感じがします。
昨今の影響を受けて「子供が心配だから組体操やめさせたり安全配慮を求めよう」なんて意識の高いはてなーみたいなことを言う親はそんなにいません。
んで、親や学校から何か言われなければ、子供たちはむしろ喜んで組体操やりたがるのです。
そんなわけで、多分中止にした自治体とかでも、子供たちにアンケート取ったら過半数の子供たちはまだ「組体操やりたい」っていうと思うんよ。
そんだけ、学校教育において「安全」っていう項目が軽視されてる気がする。いや、自分で教えろって言ったら無茶苦茶難しいんだけどね。
教師の人はかなり口うるさく「安全」について子供たちに言ってるのを見てるけど子供たちには伝わってないのがわかるから。
だったら、大人たちがその点も加味して安全に配慮しなきゃいかんわけで、これはめっちゃくちゃ負担が大きいんですよ。
プラスアルファ 組体操って構造上「危険な立場に立たされる子」って少数派になっちゃうから多数派は危険がわからない
そもそもの問題としてこれがかなりデカいなと思ってて。
自分の子供時代の頃思い返してみても、そこまで「安全」みたいなことを考えてなかった気がします。
だって、私は身長が高くて下の土台のほうだったから、上の方に乗らされる子供の気持ちとか全然わかんなかったしね。
覚えてないけど、上に乗る子供が嫌がったりしたら、わがままだなーってみんなが言いそうな雰囲気だった気がする。
でもさー。よくよく考えたらこれめっちゃ不公平だよね。
自分の子供が小柄で、しかも怖がりであるときに初めて問題になるわけですが、そういう人って割合で行ったら絶対に少数派になるじゃん?
なんで素人の子供たちが組んだ脆い地盤を信じて、やりたくもないのに怖い思いしてパフォーマンスしなきゃいかんわけ?って思っても抵抗できない。
「みんな」のことを考えると、小柄な子供さえ我慢すればうまく行っちゃうんですよ。
んで、小柄な子供ってだいたい小学校とかだとスクールカースト上位ってわけにはいかないでしょ。
だから、本当に怖いのに空気に逆らえなくてむりやりやらされるってケース結構あったんじゃないかなーって思ったり。
これ、そういう意味でも「少数派の意見を多数派が圧殺したうえで一体感を醸成する」っていう事例になるので
教育効果的に非常にまずいんじゃないかなって思ったりもする。
自分が小柄な体格だったら90%くらいの確率で組体操がきっかけで登校拒否になってた自信がある。
結論 大人が、メンツとか伝統に対するクソみたいなこだわりを捨てて「望まずに我慢して危険な上の方に立たされる子供の気持ち」を想像できるようになるまで、組体操はなかなかなくならない
と思います。
というか、組体操で検索したらめっちゃいっぱい指導本出てるね。
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そりゃプラスの面もあるんだろうし、子供たちも喜んでるって面も強いことは調査の数字見てもわかるけど、やっぱり「安全」への意識がすごい低いんだと思う。ふぁっくふぁっく!