今度「異世界レビュアーズ」がアニメ化する天原氏原作の作品。以前「独身33歳女騎士隊長」は読んだことありますね。
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id:mimoriman 貞操逆転世界をみんなに読んでほしい。原作はエロ同人らしいんだけど、商業化で女の子が主人公に。男性が性的な目で見られまくる世界に転移してしまう話。正直ここまで女性はエロと密接に生きてきたのかと衝撃だよ?
というブコメが興味深かったので読んでみました。
単に思考実験ものとしてだけでなく、マンガとして純粋に面白い作品。表紙だけで避けるのはもったいない!
なんだか最近世界がおかしい。
市川桃奈が病院で目覚めるとそこは男女の貞操観念だけが逆転した世界だった。
下ネタで盛り上がる女子高生、女性向け店舗ばかりの風俗街
トップレスの女芸人が出演する地上波にもっこりハイレグのイケメンがジョッキを掲げるビールの看板……。同タイトルで話題になった同人誌の作者、天原が原作を務める
もう一つの貞操逆転世界コミック第1巻!
単に思考実験ものとしてだけでなく、マンガとして純粋に面白い作品でした。表紙だけで避けるのはもったいないと思うのでおススメ!
「貞操逆転世界」のあらすじ
主人公は現代日本の女子高生。当然貞操観念は日本の女性に準拠している。
ある日事故でけがをして入院し、目覚めたら貞操観念が逆転している世界になっていた。
こちらの世界では、
・女が男の前で憚るところなくセクハラ話をして
・小学生の女のコが男のケツを触り、
・女性は無警戒に男の前で胸をはだけ
・街のポスターには、局部を露骨にアピールした男がビールの宣伝のアイキャッチとして使われている。
男のもっこり水着とビールに、何の関係があんのよ……
こんなもんをビル一面に飾って……いや、そう考えると元の世界もたいがいね。
・コンビニのエロ本コーナーは男の裸ばかりが並び、
・風俗では女が男に金を払って買う。
・セッ〇スの交渉は、女から男にするものであり
・男が女に欲情するのははしたないとされる。
実際、周りの友人はこの価値観が当たり前になっているようだ。
試しに、自分の世界の常識を語ってみたらこんな反応。
そ、そうか……「男性メンタル」したこいつらにしてみたら、
元の世界はただの都合のいい世界なのか。
「貞操逆転世界」において、主人公は見るものすべてに「男に対する性的消費」が絡みついていて、女性なのにジェンダーストレスを感じてしまう
一人だけ貞操観念が元のままの主人公にとってはこれは大変厳しい。理解しようとしてもどんどん違和感が襲ってくる。
彼女自身、別に男を性的消費してなかったわけじゃない。乙女ゲーが好きで、「自分に都合の良いイケメンが自分にアピールしてくる」妄想などを楽しんでいた。
しかし、この世界での男性の性的消費は、今までとは全く違うのだ。
元の世界で男性が異性を性的消費するのと同じような感覚で、例えば「男が触手に〇〇される」みたいな感じなので、主人公はついていけない。
「貞操逆転世界」においては学校空間もテレビ空間も書店もすべて女から男の性的消費に汚染されている
退院して学校に戻っても、
・学校では授業中に先生が平気でセクシャルな発言をし、
・家に帰ってテレビを見たら、男の股間を強調したビキニマンの水泳大会。ポロリもあるよ。
・ならばと魔法少女のアニメでもご覧のありさまだよ!
・戦闘アクションものでも、元の世界の常識では明らかに不要な「男のお色気」をアピールするシーンが続く。
見るものすべてに「男の性的消費」が絡みついていて、女性なのにジェンダーストレスを感じてしまい、安心して観れるのは子供番組だけという状態になってしまう。
友人同士のコミュニケーションも、性癖の暴露大会になっていて疲れてしまう
主人公ではないが、女同士は休日に友人宅でお互いの性癖の話をしている。
エロ本は料理カタログのようなものだけど、
この料理は写真を見ながらひとりで咀嚼するだけで充分美味しいし、腹もそれなりに満たされてしまうわけなのよ!
それでも本物の料理が食べたいってなってるのが、現在の私たちなわけだ。
食べたいけど身の回りにカタログより美味しそうな料理はどこにもいないわけよね。
みんなが語る性的シチュエーションも、
基本男が恥ずかしそうな顔をしているところを女が責める、という展開である。
「この世界では処女であることには一切合切価値なんてないんだ…」だし
同級生も、できることならさっさと処女を捨てたいと思っている。
ただし、この世界でも「イケメンは正義、ブサメンは死ね」というルールは変わらない。
むしろ、女が性的欲求を素直にアピールできる世界のため、
ブサメンは容赦なくルッキズムによって罵倒され、男はそのために容姿を磨くことを強いられる。
「貞操逆転世界」」の主人公は、性的消費に関係のない空間、異性が関係のない空間に安らぎを求めるようになっていく
最初の数日は、何をやってもどこに行っても、女性から男に対する性的消費がまとわりついてきてしんどいと感じていたが
数日過ごしてみると、カラオケやショッピングやスイーツだ、と性的な話題や異性や恋愛観と無関係なことならストレスなく楽しめることがわかってくる。
しかし、気を抜くとやっぱり「変だな」って思うことが多い。
そうよね…何が違うんだろ。男と女の感覚って。私だってエロ本を読まないわけじゃないし、一人エッチだってたまにはするわよ。
エッチだのなんだのそういうのが嫌いなわけじゃないはずなんだけど。それなのに、どうしてこう変な世界になるのかしら?
この世界は女性は男に性的に脅かされることがなく、女性が気兼ねなくエロを楽しめる世界。
それだけ聞けば女性にとって理想のはずなんだけど、
この世界では、「元の世界の男のエロ感覚で女性が楽しんでる」のであって「元の世界の女性のエロ感覚」ではない。
そこに主人公は強い違和感を感じ続てしまう。
そのあともあれやこれやがあるんですが、疲れてしまった主人公は、アウトドアの趣味に目覚め、釣りキチになってしまったのでした(笑)
とはいっても、こちらの「貞操逆転世界」に順応して彼氏を作るとしたらこちらの世界の常識に合わせなければならない。さてどうする?
元の世界ではこんな感じだった。
私が思うに、男と女でスケベさ事態にそう大した差はないと思うの。
でも、女は「エロいことしちゃうのは仕方がない」という言い訳が欲しいのよ。
男はかわいい子から「やってもいいよ!」っていう単純な許可を求めてる感じよね。
女性が求める言い訳と、男の求める許可は相反する世界だから、世の奥手な童貞と処女はなかなかコトに至らない、というわけね。
つまり、この世界ではそれが逆になっているので、こちらの世界で女が彼氏を作りたければ、
女が男をリードして、「そうなるにいたるまでの流れや雰囲気づくり=いいわけを用意」してやらねばならない。
完全に逆転すると、こういうところまで考えていけないので大変面倒くさいのであった。
主人公のツッコミや思考の切れ味が良いし、周りの人間もキャラ立ちしててめっちゃ面白い
という感じで、twitterの「男女ひっくり返したら」を実際にやってみて、一つ一つを思考実験をしていくこの漫画、主人公のツッコミや思考の切れ味が良いし、周りの人間もキャラ立ちしてて、まずマンガとしてもめっちゃ面白いです。 市川ちゃん可愛い。
フェミニズム的なネタとしても実にスマートで、この世界ならあれはどうなるだろう?って自分で考えても楽しめるようになっています。ぜひ読んでみてほしいです。
- 作者:万太郎
- 出版社/メーカー: キルタイムコミュニケーション
- 発売日: 2019/08/10
- メディア: コミック
余談 こちらの世界では、女性は性的な要素では評価されず、スポーツが得意で自信に満ちた女性がモテる
最初は周囲の友達の影響で、女性のエロ感覚に振り回されていた主人公だったが落ち着いてくると、今度は男が女性にどううい目線を向けているかも気になってくる。
今まで主人公は、自分がスポーツを楽しむことに性的な意味なんて全く考えてなかったが、この世界では女性はスポーツを楽しむことは「モテ」のための手段になってて余計なことを考えるやつらがいてうっとうしいことになってるとか、いろいろと面白い描写が多くて好きです。