「WORLD END ECONOMiCA」と同時期(2012年)に、もう一つだけ経済をきちんとテーマとして取り扱った美少女ゲーがありました。
覚えてる人、いますか? (クロスチャンネル風挨拶)
「波間の国のファウスト」っていうんですけど……
この作品がどんな作品かというと……
エロゲというのはタイトルではなく「ジャンル名」のところで作品の性質を説明することが多いのでまずそちらを見てみましょう。
この作品のジャンル名は「特殊経済圏における私たちの絆買い戻しADV」という名前でした。 ということでそういう作品です(マテ
「インベスター要素」×「恋愛要素」という非常に食い合わせが悪そうな作品
作品設定は「経済特区」と言って金が全ての特殊な世界観の学園が舞台になってますが……
今となっては「インベスターZみたいな作品」っていえばわかりやすいと思います。
- 作者: お金の特別講義プロジェクト
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
主人公は若くしてファンドマネージャーになるため「世界最高峰の投資スクール」みたいなところで最高の成績を収めるためにこの経済特区にやってきます。
そこで「学生」としての主人公が活躍・成長していく様子を描いていきます。
この作品の特徴は「投資という手段で、思考や交渉によって物事を解決していく」ということです。これは「ヒロインとの絆を深めていいき、人間関係主体で物語が進む学園恋愛もの」とか「バトルによって物事が動いていく異能もの」が多かったエロゲ業界の中では異色でした。
また、インベスターZと違って、主人公に明確に「能動的に金を稼ぎたい理由」が設定されています。主人公は「当時無力だったゆえに〇を失い、幼馴染たちとも離散してしまったが金を手に入れることでその絆を取り戻したい」という動機があります。主人公の動機がしっかりしていたので、作品としてはとても読みやすかったです。
あくまでも「ギャルゲー」の範疇内の作品
ただし、この作品はあくまでも「金よりも勝る幸福」として、恋人や仲間たちとの絆を設定しているため、「投資」や「経済」を楽しむには中途半端な作品になっています。
中盤までかなり面白い作品だったと思いますが、やはりせっかくの投資ものなのに「ヒロインとの関係」とか「学園もの」の制約が強く、最後は「起きている現実はとても大掛かりなのに、人間関係がこじんまり」してて箱庭感が強く投資や経済のダイナミズムを味わうには物足りなかったです。あくまでも、この作品は、エロゲー、ギャルゲー、という範疇の中にあるゲームという印象ですね。
でも、エロゲでこういうテーマにに挑戦しようとしたという意欲はとても評価できるし、当時のエロゲ業界はまだこういうゲームがしっかり商業展開できるくらいには「実験場」として機能してたって話でもあると思います。今となってはちょっと古いかもしれませんが、ギャルゲーが好きな人はプレイしてみてもそんなに不満はないんじゃないかな。
なお、小説も出ています。
波間の国のファウスト:EINSATZ 天空のスリーピングビューティ (講談社BOX)
- 作者: 佐藤心,bitterdrop,ヤマウチシズ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/05/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ギャルゲー要素などぶっちぎって「投資」「経済」のエキサイティングぶりを突き詰めたのが「WORLD END ECONOMiCA」という作品
これに対して、ギャルゲー要素ぶっちぎりで「投資」「経済」のエキサイティングぶりを突き詰めたのが「WORLD END ECONOMiCA」という作品です。
実際、主人公はもうほんとに最初から最後まで投資に取りつかれた人間として物語を駆け抜けていきます。
登場するヒロインたちみんな魅力的なのに、彼が一番ご執心なのはお金であり、人間でいえばとある「おっさん」だからね……。
(まぁこのおっさんがまためちゃくちゃ魅力的なんだけどな……)
もともとは支倉さんが「リーマンショック」の面白さを描くために作り始めた「趣味」の作品だった
それもそのはず、作者である支倉凍砂さんは、最初からギャルゲーやラノベあるあるを意識して作ってないんです。
支倉さんは、「サブプライム経済危機(通称リーマンショック)」について書かれたある一冊の魅力に取りつかれその魅力を紹介するために「WEE」を描こうと思い立ったのですね。そもそもギャルゲーとかボーイミーツガールが目的ではなかった。
ちなみに支倉さんに「WORLD END ECONOMiCA」を書かせるきっかけになった本は「バーナンキは正しかったか?」という本です。これが面白くて3回も読み返したそうです。
- 作者: デイビッド・ウェッセル,若田部昌澄,藤井清美
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/04/07
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 79回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
「おっさんミーツケモミミガール」の巧みさによって狼と香辛料が大ヒットして知名度も高く、その次の「マグダラで眠れ」でもやはり「おっさんミーツケモミミガール」を描いてた支倉凍砂さんをもってしても「さすがにこれは商業ベースに乗らないだろう」と思ったのか、同人ゲ―としてつくっていたあたりから見ても本当に作者の趣味を突き詰めた作品なんですね。
実際に作ってみたらラノベとしても経済もの作品としても最高に面白いものができあがってしまったという奇跡の産物
でも、実際に作ってみたら、投資モノとしても経済モノとしても最高級に面白い「リーマンショック」という題材と、
支倉さんの得意分野である「ボーイミーツガールもの」が見事に合体して、べらぼうに面白いものができてしまったわけです。
アメリカでも屈指のライターであるマイケル・ルイスは「マネー・ショート」を作ったかもしれないが、
支倉さんの「WORLD END ECONOMiCA」は全く負けてない。私の中では「WORLD END ECONOMiCA」の方が優れていると本気で思っています。
そういう奇跡みたいな作品なのです。
だからこそ大好きだし、アニメ化すると知って、ものすごくうれしいです。 絶対に成功してほしいなと思ってます。
本当に面白いから、何らかの手段で触れてみてほしいです。 そして、アニメに備えろ!