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『アメリカンビューティー』と同様に、「主人公が近い将来に誰かに殺されて死ぬ」という確定した未来描写から物語がスタートする。
特にこの作品の1話の描写において、主人公はめった刺しにされており、そうとう深い恨みをぶつけられている。どうしてこんなことになってしまったのだろうか……。
主人公を筆頭にして、一人を除き登場人物にまともな奴がいない物語
「奈落の羊」で描かれたような「ジェントリフィケーション」によって荒廃した地区の物語であると思われる。
とにかく登場人物にまともなやつがいない。
一人を除いて、どの登場人物を見ても家庭が破綻してたり学校生活にトラウマ抱えたりと人間として大事なものが欠けてそうな人たちばかり。弱い立場の人間をいじめたり、チームメイトを過剰に束縛したりして、他人に「依存」したり他人から「略奪」しないと一人では立つこともできないやつばかりだ。
まるで、ひどいいじめ描写が話題になった「聲の形」や「ミスミソウ」の世界である。あの作品は小学生時代の話だったからまだギリギリ我慢してみられるが、この作品は高校生の物語なのに、「聲の形」と同じかそれより幼稚な登場人物ばかり。しかし身体は成長しているからやることはえげつなくなっている。
そんななかでも特に壊れているのが主人公の少女「かなえ」
現実には薄幸の美少女など存在しない。あるのは無気力で、容姿も見難く、性格も(障害のため)可愛らしさがなく、「どうしようもない」ため打ち捨てられている存在である。たとえ本人の責任ではないにせよ、助けるためのハードルが極めて高く、かつ助けたいと思えるようなパーソナリティではない。
なんだこの主人公は、、、あまりにも邪悪すぎる。
特に3巻まではあまりにも邪悪過ぎてみててイライラする。育ちのせいや過酷ないじめ体験のせいではあるので同情の余地はあるかもしれないけれど、それにしてもあまりにもひどい。
自己肯定感が低く、意志薄弱で周りの顔色ばかり窺っているが、実際はめんどうごとは避けて全部他人のせいにしたいだけの自己中心的な性格な人間。ところどころ統合失調感情障害のような描写もある。
被害者意識が強すぎて、自分の加害行為は一切気にしない。自分の発言で周りがどういう気持ちになるかも考えない。「いじめ」や「被害者意識」というのはここまで人を卑屈で自分勝手な人間にするのかという見本になっている。
容姿はすごく整っているのに、全く可愛いと思えない。ただただ化け物じみているなと感じるだけ。
そんなわけで、3巻までで読むのをやめたらただひたすらに胸糞悪い話です。
主人公は恋をすることで「まともに」なるわけではなく、「より壊れる」のだが、その壊れ方は見てて不快じゃない。
でも、そんなかなえは、「寛」くんとの出会いによって2巻くらいからすこしずつ変わってくる。
決していい方向というわけではない。
寛くんに恋をすることにより、ますます視野は狭くなり、自己中心的な性格はますます顕著になっていく。
でも、今までただなんでも周りのせいにしておびえてただけだった主人公が自分の欲望や感情を隠さずに外に出すようになっていく。相変わらず彼女は頭が悪いし自分勝手なので、考えることは感情に任せたろくでもないことばかり。でも、そのろくでもない考えを今までは自分の中で抑え込もうとして自分ひとりで苦しむのをやめる。
26話は、一瞬「・・・・・え?」ってなった後爆笑しました。
その後から、急に吹っ切れたのか急に行動が変わる。
打算や保身のためでなく、一緒にいて楽しいと思える友達もできる。
4巻での彼女の行動は、今までイライラさせられていたのが嘘みたいに爽快感がある。
28話でのかなえは、「このまま幸せになれる未来もあり得るかもしれない」と思わせるくらいいい表情をしている。
ただし、運命はすでに確定している
1話の冒頭のシーンがなかったら私はこの作品をここまで読んだかどうかわからないけれど
今は逆に、1話の冒頭シーンのせいでこの先を読むのがつらい……。
ただ、今までずっと完全に受動的だった人間が、殺意を抱かせるまでに他人に影響を与えるようになる、と考えるとやはり続きも読みたくなってしまう。 どうすればいいんだ……。

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- 作者:知るかバカうどん
- 出版社/メーカー: 新潮社
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