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「公爵令嬢の嗜み」 Amazonレビューがなかなかどぎつかったので読んでみたら「もしドラ」っぽい作品だった

まずはこちらの作品についたトップ人気のレビューをご覧ください。ボロッカスに描かれています。


公爵令嬢の嗜み(1) (角川コミックス・エース)

公爵令嬢の嗜み(1) (角川コミックス・エース)

女性版『幼女戦記』




②男性向けの転生モノは薄っぺらいミリタリー知識で世界征服を始めるのだが、女性向けになるとスイーツとファッションを必ずぶち込んで成功し民を救うパターナリズム、その両方を悪魔合体させた典型的な素人の駄作。




③既に他のレビューでも指摘されているように、固形チョコレートの量産化は産業革命以降の産物。固形チョコレートの発明以前からカカオを大量に栽培する理由がない。チョコレート原料にならないカカオを低価格で栽培し続ける意味とは?大量のカカオと砂糖を必要とするチョコレート産業にとってプランテーションと奴隷産業は経済上必然で、この構図は現代社会に至るまで何一つ解消していない。服飾産業にしても、現代日本の外国人実習生やバングラデシュ等の途上国での劣悪な労働環境、機械化される以前に奴隷産業としてしか成立し得なかった綿花栽培の事例など、頭に少しも浮かべなかったのだろうか。結果として本作は現代社会でも露骨な植民地的搾取として問題視されるような2つの産業をわざわざ選択している。搾取するほど商品が魅力を持ってしまう消費社会的構造の病理である。この奴隷制の下にあるとしか思えない植民地経営が東インド会社やレオポルド2世などの行為と何が違うのか?「植民地経営である」という意識すら持っていない作者の鈍感には恐怖すら感じる。現代の医療制度に関しても人民が熟練工であることを要求する工業化社会のシステムで、高度情報化社会となった現代でも機能不全を起こしつつある。国民皆保険が存在し得る条件もロクに理解していないらしい。極端な資本投下を行って急激なインフレーションを推進し物価統制の重要性を無視した荒唐無稽な経済政策は確実に人々の生活を破壊するだろう。現代社会制度の上澄みだけをすくい上げた考え方を「資本主義」と称揚し、民のためなどとパターナリズムで上書きする神経は、無思慮で不勉強で幼稚な思考そのものだ。こんなものを同時代の商人が理解するとは思えない




地理的にも疑問だらけで、真面目に地図を頭の中に描かなかったのではないか。公領はカカオが大量に栽培されていることから熱帯そのものであるはずだが、作中の時間経過がよっぽど歪でないならば、王国全体が熱帯に存在することになるのではないか。しかし王都にそんな様子はなく、それ以前に公領すら熱帯であるという描写もない。せいぜい南欧風?だろうか。そんな無機質な「欧風」が描かれるばかり。ファッション=豪華なドレスって発想しかできないところが実に「女性向け」的でどうしようもない。




④ストーリーは幼稚な飾りつけを取り払えば何も残らない空疎そのもの。会計についてはやたら深く描写されていることから、原作(未読であるが)もアマチュア的な構成となっていることが強く示唆されている。なろう系の中でも『幼女戦記』などに近い歪な構造な作品なのではないかと推察しておく。多分外れてないだろう。経済史を描いた作品としては『狼と香辛料』などとは全く比較できない。正確かどうか以前に、努力の過程がないからだ。中世から近代に至るまでの経済史について取材研究の形跡が一切なく、読んでいて痛々しいばかりである。本作は、ジャンルとしてはSFであるのだろうがフィクションであってもサイエンスがない。この手のSFはアイディアよりも博覧強記が要求されており、本作はそれが水準を満たすものだとは到底思えない。というかアイディアも特にない。




⑤人物は流麗だが背景の描きこみは非常に薄い上、マンガ的表現が非常に乏しい。これでは「マンガ」ではなく「マンガ風CG集」じゃないか。なろう系にも質の高い作品がいくつも生まれている中で、このレベルの作品を素直に読むのならばどの面からみても厳しい。少なくとも「男性が読んでも楽しい」という本ではないだろう。別に女性よりも男性向けの方が知的レベルが高いとかいう差別問題ではなく、女性向けポルノに過ぎないシリーズを読んで楽しむ男性は、その逆と同じように珍しい。

やたらとボロクソにたたかれていたので、逆に興味を持って読みました。7巻まで読み終わったところです。



正直とても評価に困る作品です。

面白い作品なのですが、問題点がすごく多い。というか、この作品を読んでると「もしドラ」を読んだときのような感覚になるのです。
*1

じゃあなんでこの本が「もしドラっぽい」と思ったのかですが、以下の3点ですね。

①主人公についての説明が不足しすぎて不気味なキャラクターになっており感情移入できない落ち着かなさ

②感情移入できない主人公によるあまりにも強引な改革と、それを抵抗なく受け入れ成果を上げてしまう優秀すぎる部下たちのコラボにより問題のある行為が留保なく肯定されている気持ち悪さ

③さんざん描いてた内容が茶番になる展開に感じるオイオイ感

もしアドラーが上司だったら

もしアドラーが上司だったら

  • 作者:小倉 広
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: Audible版

このあたりの「面白いんだけど気持ち悪い」感じがすごくもしドラっぽいのです。


とにかく1巻の4話までの描写がひどすぎて、肝心の主人公が何者であるか、どういう動機で行動するのかが全然腑に落ちない

yoshikimanga.hatenablog.com

とにかく導入部分における主人公の描写がひどすぎて???ってなります。

4話で読むのをやめると今まで読んだ作品の中でもワーストに入るレベルでダメな作品だと思います。

これはコミカライズした人が悪い訳ではなく純粋に原作の説明不足、描き方の問題だだと思う。

自分で意識して恋うことではないだろうかと補って読めば一応筋は通るように描かれてるが、
6巻まできてようやく納得できる説明が来るという体たらく。

「もしドラ」を読んでるときには、同様に主人公について「???」と思う描写が多く、作者様の妄想を「そういうものだから納得しなさい」と押し付けられるような不快感を感じましたがあれと似たような感触を久々に思い出しました。



上の酷評についても指摘の通りだと思います。中途半端に現代知識を取り入れようとしたせいで「内政チート」ものとしてはかなり出来が悪いかなと

上のレビューほど正確に批判できたわけではありませんが、この世界の設定は無茶苦茶です。

私も2巻の感想で同じようなことを語っていますが
とにかくこの作者さんものすごい能天気に「現代の社会制度万歳。強引にでも現在の社会制度っぽくすれば世の中はよくなる」という発想の持ち主なんですね。

主人公は悪役令嬢として宮廷を追われた後、父の代わりに領主代行として領地経営を行うのですが、
その領地改革があまりにも急進的すぎるというか、ぶっちゃけ無邪気な現代社会システムのコピペなんですね。

しかも、その急激すぎて何世代分もの常識を一気にすっ飛ばすような改革を行うのですが、
それについて周りの人間がまるで抵抗せず受け入れます。
そして、なぜか優秀すぎる部下や都合よく湧き出る資源などによって次々と問題が解決していきあっという間に領地改革は成功してしまう。



こういうのは「内政チート」ものっていうのかな? でもすっごい雑だなとは感じます。



……こういう姿を見るとこれまた「もしドラ」を読んでた時の記憶がよみがえるのです。


「もしドラ」でも、主人公がなぜか「がんばれ!ベアーズ」と違って
全然経緯の説明に納得がいかない形で「甲子園出場」という目標を立てるのですが、
その際に「ドラッカーのマネジメントこそ至高」という発想で急進的な改革を行っていきます。

そうすると、あまり合理的に思えないむちゃな取り組みでも成果を上げ、生徒が都合よくレベルアップしてしまいます。
やはりあまり抵抗を受けず、周りの人間が超優秀すぎて、問題が起きずにどんどん物事が成功していってしまいます。
あの世界も「ドラッカーの言うとおりにすればすべてうまくいく」という転生チート条件が載ってたんでしょうね。



そういう意味でも、この作品からはものすごい「もしドラ」感が漂います。



ただし、この作品の本筋はあくまでも4巻からスタートする「宮廷における権力争い」と「第一王子との恋」です

ここまでだったらAmazonレビューの指摘の通り、面白いけどただの女性向けポルノみたいな作品です。

ただ、この二つの要素はあくまで前座というか、イントロダクションなんですね。


結局のところこの作品は「悪役令嬢の逆襲」ともいえるものであって、

①恋人を別の女に奪われたあげく一度宮廷から追い出されるという屈辱を味わい、人間不信になりかかった主人公が、
②領主として有能な部下や領民から慕われながら充実した生活を送り
③必死に努力して領地改革を成功させて実力で宮廷に返り咲き、
④自分を追い落とした女や自分を振った男を懲らしめ
⑤様々な困難を乗り越えて第一王子様と結ばれてハッピーエンド

というストーリーが大事なのです。




なので、4巻までにおそろしい急ピッチで進められてきたご都合主義モリモリの領地改革はあくまでそのためのフレーバーであって作者は別にここにリアリティは全く求めてないというか、本音を言えばさっさと終わらせたかったんだろうなと。ここまで頑張って読みすすめれば、そのあとは結構面白い作品だと私は思います。もちろんいろんな描写の雑さは気になりますが(そういうものを描かなくて済むのが異世界転生もののいいところなのに、わざわざ描こうとしたせいですごく雑さが気になる)、そこを割り切ってしまえば「宮廷におけるつぶしあい」や「人間不信に陥った主人公が再び恋する気持ちを取り戻す」みたいな展開はなかなか良いんじゃないかなーって。


そう、「もしドラ」だって、チート能力「ドラッカーのマネジメント」でさんざん俺TUEEEEEを味わった後本当に大切なのはマネジメントそのものじゃなくて友情とか仲間たちだったんだみたいなノリで終わって「これドラッカーに対して失礼じゃね?」って感じの作品になっていましたが、この作品も、異世界チートによる「もしドラ風なにやってもうまくいってしまう領土経営」のフェイズが一段落したその後からが本番なんです。



という感じで、「もしドラ」を読んだときの何とも言えない感覚を思い出させてくれた作品として個人的にはこの先も読み進めていきたいなと思っています。



公爵令嬢の嗜み(1) (角川コミックス・エース)

公爵令嬢の嗜み(1) (角川コミックス・エース)



世間的には1話の段階から評価高いみたいなのでほかの人の感想も聞いてみたいです

私的には3巻くらいまでの描写はびみょーーーーで4巻からようやく楽しめる作品になってきたなーって感じだったんですが

Amazonレビュー見る限りだと1巻や2巻の時点ですでに評価高い。アレ?

そうでもなくて最初から割と面白い作品っていう感想なのかな?

私時々周りと感想が全然違う時があるので、こういう時は「なんか私読み間違ってる?」って不安になったので長々と語ってみました。

www.tyoshiki.com
もしこの作品を読んでる方がいらっしゃったら是非感想をお聞かせください。




なお、わたくし最近悪役令嬢ものが大変お気に入りでございまして。現時点で15作品ほど読みましたが特にこの2作品はぜひほかの方にもおすすめしとうございます。

個人的にはかなり面白いと思っているのですが自分の感想がおかしいのかもしれないので、すでに読んだことあるという人はぜひ感想教えてくださいね。

*1:ところで、改めて思い返すと、「もしドラ」って2008年の時点で「ストーリーの内容がイメージしやすい長文タイトルと萌え表紙」「異世界における俺TUEEEE」に「役に立つ要素をストーリー形式でお手軽に提供」というすでに個別では目立ち始めていて、その後さらに伸びることになる<三種の神器>の神器をすべて兼ね備えた作品だったよね。それを、リーマンという不景気に陥ってドラッカーブームが起き始めたタイミングで提供した。作品としては本当に駄作だったと思うけど、結果論としてはマーケティングとしては完璧な本だったのだなあと今更ながら思ったり。 そりゃ売れるわ。 岩崎さんほんとすげーよ。