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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「なぜアメリカの株はこんなに強いのか」「なぜ最近日本は円高になりにくいのか」などについてちゃんと説明できるようになっておきましょう

株価って買いが売りより強ければ割高でも上がります。
逆に言うと、業績と比べて安いと思っても売りのほうが強ければ下がります。


じゃあ今、アメリカ株って何が買いの主力でしょうか。


これは明確に「企業の自社株買い」です。


アメリカの株価が日本と比べて絶好調な理由について「アメリカは好業績だから」だけだと不十分だと私は思います。それだけで説明できるレベルの株価水準ではないんですよ今のアメリカの株式市場って。


というわけで、私が理解してる範囲でトランプ政権になってからのざっくりとした話をまとめておきます。もし認識間違いがあったらコメントでご指摘ください。



トランプの経済政策の「失敗」によって経済や設備投資に回るべきお金の大部分が自社株買いに回った結果がアメリカの異常な株高につながっている

web.archive.org
gendai.ismedia.jp

①好景気に沸く米国には世界中からおカネが集まり、それらが米国株や米国債に流れ込み、
②自社株買いでさらに株価を押し上げている。たとえば、世界各国の年金基金は株価が上昇するとポートフォリオを一定に保つため、株式の比率を下げようと売らざるを得ないが、自社株買いは基本的には買ったら売らない。
③それを後押ししているのが、トランプ政権が2018年に導入したレパトリ減税です。海外で稼いだおカネを米国に戻す場合は軽減税率が適用されるため、米企業では自社株買いが一気に拡大し

逆に言うと、もはや年金・個人・機関投資家は基本的に売り越し側です。 

アメリカの株価の異常な強さは好業績だけではもう説明つかない水準です。
企業の自社株買いが支えているというのは一応理解しておいた方が良いです。

アメリカの自社株買いは異常なのは皆さんご存じだと思います。

日本だって企業が自社株買いやってるし、それより日銀が買ってるじゃんと思うかもしれません、、、がレベルが全然違います。(むしろ日本も最初はこの日銀による需給ひっ迫効果が大きかったのですが、最近は「日銀が買ってるからこそ上がらない」まである)

本来なら、その資金は工場の建設や製品開発などへの“長期の投資”が期待されそうなものだが、ここでトランプ大統領が次に取り組んだ「通商政策」が影響を与える。中国などとの「貿易摩擦」が激化し、企業にとっては、中国や海外に工場を作るのはリスクという状況になった。その結果、行き場を失ったとも言える大量の資金が自社株買いに向かったのではないか(ブームに乗り遅れまいと、この低金利を利用して借金までして自社株買いしている企業が多いことも、ここでは追記しておきたい)

たまにツイッターとか見てると、安倍政権を批判するために「アメリカはこんなに好景気なのに日本は安部さんのせいで……」と言ってる人がいます。確かに安倍首相はめちゃくちゃしくじってるのですが、実はトランプもしくじってるんですよ。
ただ、トランプのしくじりは経済にとってはよくないのだけれど構造としては株高につながるものになってます。

・アメリカの景気拡大が続いているとはいえ、成長率そのものは低いのです(ことしは年率2%程度と予測されている)。このため、企業にとっては設備投資といった“長期の投資”はリスクが大きく、株主にリターンの多い自社株買いが、最も有効な資金の使い道となる
・企業が自社株買いに傾倒するあまり、新たな投資が先細り、社会に還元されるような繁栄にはつながっていないと断じている。いくら利益をあげても企業のイノベーションが進まなくなった
・5年間のボーイングの自社株買いは340億ドルあまり(日本円で3兆8,000億円)。これに対して新型機の開発などの研究開発費はその半分にとどまっている。「自社株買いばかりに金を使い、『安全』への投資をおろそかにしてきたのです」

Amazonなどの例外はありますが、国からの支援も受けつつガンガン開発に投資してる中国と比べると米国企業も苦しくなってきています。(言うまでもないですが日本は勝負にすらなっていません)


自社株買いによってアメリカ株の需給はあまりにも良い状態になっている。市場全体が「仕手」に近い状態

自社株買いは「需給」という面では最強です。企業が自ら買って、それを市場に放出せずに抱えてくれるので浮動株が減ります。浮動株が減るとますます需給がひっ迫してくるので、ちょっとの買いでも株価が上がりやすくなります。しかも毎年大規模に買うので、売り方はまず買い方に勝つことができません。


もともとそういう構造なのに、さらにアメリカの自社株買いは本当に異常です。低金利状態であるのをいいことに「わざわざ銀行から借り入れしてまで」自社株買いをするんですね。アップルはここ5年で「稼ぎ出した利益以上の金を自社株買いに回している」のは有名な話です。
2018年にはアップル一社の自社株買いだけで、東証一部全体の自社株買いの総額に匹敵するくらいでした。


これだけ買えば、個人や機関投資家が多少売ろうと下がりませんしむしろ売り豚はかんたんにこんがりローストされてしまいます。


そんな状態が続いた結果として、個人投資家もみんな買えば上がると思ってるからよほどのことがないと買った後全然売ろうとしません。そもそもアメリカは日本株と違って大部分がインデックス投資ですからね。個人はあくまでもずっと買ったら持ちっぱなしにしてるだけです。 


すごいでしょ。誰も株価は「上がる」もんだということを疑ってない。


最近ではついに、「最後のカモ」になることに定評がある日本人たちまで次々と資産運用とか言ってアメリカ株インデックスに積立投資始めだしています。「やめろ。君らが来はじめたらさすがにやばい」と思いながら見ています。



こういう構造になるとどうなるかわかりますよね。

①業績以上に割高状態でも普段は買われ続ける

②その分「自社株買いが絶対にできない期間」にだけ株価がめっちゃ下がる

③業績よりも、自社株買いや配当ををちょっとでも緩めたりした企業はぶん投げられる

④プロ経営者はますます自社株買いをやめられなくなり、さらなる自社株買いを行うチキンレース状態になる

という流れがここ数年続いています。


②については「ブラックアウトウインドウ」で検索してみてください。

※米国株投資でこのワードについて触れてないブログはあまり読む価値がないと思ったほうがいいです。




とにかく重要なのは「今アメリカの株価を支えているのは異常なまでの自社株買いだよ」ってことです

この状態になっているため、アメリカではもはや金利の段階的引き上げや市場に供給するマネーの引き締めが難しくなっています。

「借金をしてまで」自社株買いしてるわけですから、金利が上がると借金控えるようになり、そのぶん自社株買いは減りますからね。



実際、パウエルさんは、最初はイエレンさん引き継いで金融引き締めやFRBのバランスシート縮小を行おうとしてまししたが、その結果あっさりと2018年12月に市場が大暴落する催促相場が発生。
 
その後金利引き下げを、さらには短期金利上昇を抑えるために国債買い入れによる資金供給を余儀なくされました。

www.nikkei.com
diamond.jp

FRBは景気回復に伴って、17年秋から長期国債などの保有資産を圧縮する「量的引き締め」を開始した。ただ、19年9月には市場の資金不足によって短期金利が急騰。同10月からは短期国債を月600億ドル(約6兆6000億円)買い入れる新たな資金供給を始めていた。

日本は日銀がETFで勝手に自社株買いに近いようなことをやって、もう後戻りできない状態になっていますが、アメリカはアメリカでトランプさんの政策によってもう後戻りがかなり難しい状況に追い込まれています。

他の国もだいたい同じでしょうし、これほんとどうするんだろうね。



おまけ 日本が円高になりにくくなっている理由は?

最近、日本の景気が明らかに悪くなりそうなのになかなか円高になりにくくなってるよねって話をしてる人がいますが、これもちょっと考えてみましょう。

twitterとかだと、追加緩和期待で強引な円安ドリブルが進んでた(なんせここ数週間の円は世界最弱通貨状態でした)のが黒田さんが相変わらずだったからまた円高のターン!といわれてます。もちろん短期的な値動きはこれが原因です。でもそういう短期的な話じゃなくてもうちょっと構造的な話です。


なぜかというと、なんで日本が今まで円高になりやすかったかの逆を考えればいいんです。日本が円高になりやすかったのは、超貿易黒字国であり、海外債権が多い国だったからです。

oreno-yuigon.hatenablog.com


逆に言うと、今の日本はもはや貿易黒字国ではなくなったってことですね(経常収支は今でも大幅プラスですが)

www.customs.go.jp

f:id:tyoshiki:20200225002612p:plain
https://lab.pasona.co.jp/trade/faq/489/

私の父親世代の人は未だに大きな貿易黒字があると思ってるようですが、今の日本は原油が値上がりすると簡単に貿易赤字になる程度の国です。

経常収支は多いです。経常収支の内訳は「長期資本収支」です。
japanhighgrowthinstitute.com
これは海外企業に投資した配当とか利息収入です。


ちなみに、じゃあ日本企業は全然海外で儲けられてないのか?っていったらそうじゃないです。
海外で稼いだ金は、海外にとどまってしまっているんです。海外で稼いだら、そのままその利益は海外の工場などの設備に投資します。日本に戻しません。つまり、帳簿上は経常収支が大幅に黒字でも、そのお金は日本にないんです。日本国内には投資先がないからです。

円高になるのは、海外にとどまっているお金が日本国内に大量に送金される場合です。
その時は「海外通貨が売られて円が買われる」わけですからすごい勢いで円高になります。


最近は、海外で稼いだ金は本当に日本に戻ってこなくなりました。それどころか、個人投資家だけじゃなく企業もGPIFも日本企業じゃなくアメリカの株買うために円を売ってドルを買うようになりました。その他もろもろの事情で、ドル高円安になりやすい構造なんですよね。


それならなんで最近までなかなか円安にならなかったんだ?なんで円高だったんだって?
インバウンドですね。
海外観光客が日本に来る時に、自国通貨を円に変えますよね。あれは結構大きいんですよね。


同様に考えると、トランプ政権になってからドルが強くなった理由もわかりますよね

上でも書きましたが、トランプが就任後最初にやったのは、海外にとどまっている資本を一度国内に戻させたことです。
(還流してくるお金については一時的に税金を35%→6%くらいまで下げて、代わりに海外に置いてるお金にも25%くらいの税金をかけるようになった)

その額は何と260兆円以上でした。 
そりゃまぁあなた、ドルがめちゃくちゃ強くなるの当たり前ですよね?
これが第一次トランプラリーの正体です。

トランプはアメリカに戻ってきた金はラストベルトなどの地域に投資されると思ってたみたいですが実際は自社株買いに回ってしまったというのはすでに上で述べた通りです。


こんな感じで現代においてはお金のフローが大きすぎて「短期的な業績の良し悪しを完全に無視して相場全体が思いっきり上がったり下がったり」することが時々あります。初期アベノミクスもトランプラリーもそういう流れでした。わかってる人からしたらまさにゴールドラッシュだったんですね……。当時は全然わかってなかったです。本当につらい。


こういった話を理解して、今後の展開を考えてみると金もうけ抜きにしても面白いと思いますよ。