おすすめ度★★★★★(お気に入り度★★★★★)
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素晴らしいとしか言いようがない……。
上記に挙げたような今まで私が読んできてものすごく好きだった少女漫画作品などと同じ方向性を向いていて、それでいてこれまでの作品を越えてくる、そんな作品です。
上記のような作品が好きな人は問答無用で買って読んでほしい。
- 作者:鈴木望
- 発売日: 2020/12/10
- メディア: コミック
作品あらすじ
生まれつき顔に太田母斑(おおたぼはん)と呼ばれる青いアザを持つ女子高生・青山瑠璃子。
アザのことを気にしすぎないよう、周りにも気を使われないよう生きてきた。新たな担任教師の神田と出会った瑠璃子だが、ある日神田の手帳を目にしてしまう。
クラスメイトの手帳がびっしりと書き込まれているのに、自分だけ空欄なことに気づいた瑠璃子は神田を問い詰めに行く。しかし、神田は‘相貌失認(そうぼうしつにん)’という人の顔を判別できない症状を患っており――。
このあたりのキーワードでなんとなくストーリーは想像できると思います。
相貌失認、マイノリティが理解を得ることの難しさと孤独、ルッキズムといった問題を描きつつ、
主人公が「やさしくされると余計に傷つく」レベルまで自分をむしばんでいるコンプレックスを自覚し、それを克服していくという話です。
作中での一つ一つのやり取りが自分の心を揺さぶり、心の底の方にあるクソデカ感情が湧き上がってくる感触を覚える
でも、この作品はそういうストーリーもさることながら、キャラクターの描き方が秀逸すぎます。
一つ一つのやり取り見てるだけで、過去の自分を思い起こさせられたり、自分の中のクソデカ感情が心の中から湧いてくる……。
主人公である瑠璃子サイドのお話だけ紹介しておきます。
主人公である瑠璃子は生まれつき顔に大きな痣がある。
ほとんどの人はその顔を見ただけで距離をとってしまう。
美人とかブスとかそういうレベルですらない、その枠外の存在だと感じてきた。
そんな自分にコンプレックスを抱いていたけれど、
そのことを表に出すことすらできなかった。
なぜかというと家族はそんな自分の顔のことを全く気にせず愛してくれているからだ。
自分がそのことをコンプレックスと感じていることを表に出したら家族が傷ついてしまう。
だから、自分の顔の傷を化粧で隠すこともできなかった。
「大事な家族にも愛されているし、自分の顔でも受け入れてくれる友達もいる。
コンプレックスなんてみんな多少なりともあるんだから自分も気にしない。自分は幸せなのだ」
と自分に言い聞かせながら、毎日笑顔を絶やさないようにずっとずっと努力してきた。
「幸せである」ことと「傷つかない」ことは全く別問題
でも、本当は自分をごまかしているだけで、傷ついていた。
いつもものすごく傷ついていた。
ただ、それが言い出せなかっただけなのだ。
優しくされたら、傷つくこともできない。
顔がこうであるというだけで人から一歩距離を取られることはどれだけ繰り返しても慣れられなかった。
自分に優しくしてくれている人はいたが、ある時よりによってその人から心無い言葉を投げかけられたりした。
そんなこともあって、一度はついに耐え切れなくなって中1の時不登校になってしまった。
それでも彼女はいろんな人の支えがあって、一度は立ち直り、
これまで以上に明るく振舞ってみんなに受け入れられるように努力してきた。
もっと強くあらねばいけないと自分に言い聞かせた。
そんな時に「相貌失認」で自分の顔が見えない先生が、自分のことを思いもかけない形で肯定してくれた
今まで、家族や友人のように「この顔でも受け入れてくれる」という人はいた。
それでも、瑠璃子は自分の顔の半分を受け入れることはできなかった。
でも、この先生は本当の意味で、自分自身を見つけてくれた、と感じた。
この先生と一緒なら、自分自身の顔と向き合って受け入れられるかもしれないという希望を持った。
こんな気持ち、初めてだ。
笑いたいのに泣きたい気持ち、泣きたいのに笑いたい気持ち
しかし、そんな簡単に長年積み重ねてきたコンプレックスを克服して自分を好きになることなどできない
暫くは先生への憧れを抱えながら幸せな気持ちで過ごしてきた瑠璃子だが、
ある時、先生と自分の間には絶望的な壁があるということに気づく。
先生は「イケメン」だった。
それに対して、自分は「それ以前の問題」の存在だった。
そのことを考えた時に、また自分の中で弱くて醜い部分、長年抑え込んできたコンプレックスが暴れだしてしまう。
あれ?
努力って、何?
努力って、なんのためにするんだっけ?
一度希望を持ってしまったがゆえに、今まで自分がどれほど傷ついて、どれほど諦めていたかを自覚してしまう
瑠璃子は今まで気張っていた反動で、また中1の時のように力が出せなくなってしまう。
それでもまだ、自分では頑張らなきゃいけないと思うのだが、いくら気合を入れても身体がついてきてくれない。
そんなときに先生は「人のせいにしたっていい。傷ついたといってもよい」と言ってくれる。
この言葉が、瑠璃子の心のタガを少し緩めてくれるのだけれど、
しかし今まで心を抑え込み続けてきた瑠璃子は素直に心を表現することなどできない。
うまく心を制御暴走した心のままに、先生に理不尽な八つ当たりをしてしまい……
と、ここまでがだいたい1巻の内容になります。
ここまで読んで面白いなーと思った人は絶対に後悔しないと思うのでぜひ買って読んでみてください。
※7月13日まではDMMで半額になっているので、DMMのアカウントがある人はこちらがおすすめです。
希望と絶望の行き来が激しくて酔いそうになりそうになる作品。心揺さぶられたい人はぜひ読んでほしい
これだけでも十分面白いと思いますが、これはあくまで話の半分です。
この作品は、主人公の瑠璃子の描写も良いのですが、
それ以上に「相貌失認」をかかえる神田先生の描写がめちゃくちゃ素晴らしいのです。
かつて「彼氏彼女の事情」という作品において、有馬君の力によって雪子の話が解決したと思ったら彼女を助けてくれた有馬くんがそれ以上に重い闇を抱えており……という展開があったようにこの作品も、神田先生の描写こそがカギになりそうです。
今まで読んできたいろんな作品を思い返しますし、繰り返しになりますが、自分自身がいままでの人生でいろんな体験を通じて経験し、感じてきたことと重なる部分もあってめちゃくちゃ感情揺さぶられます。今まで私のブログ読んでくださってて、何かしら共感できるところが少しでもあったような人には絶対に面白い作品だと思います。
この作品はもっと評価されてほしいと心から思います。今年下半期はこの作品推しです。みんなー読んでくれー!!!
最後に関連作品を紹介した過去記事にリンク張っておきます
このあたりの私が好きな作品とのつながりを強く感じながら読んでました。ホントにこの作品めちゃくちゃ先が楽しみです