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ナイキのCMについては、ナイキが現在強くポリコレを発信する(ピンクウォッシュ戦略)必要性に迫られているという事情もおさえておいた方がよくない?

アイデンティティ・ポリティクスとは、人種やジェンダー、あるいはイデオロギーや金銭的利益などの共通の特徴に基づいた集団を形成して、政治に動員することである。「目標を達成するために集団を形成する」ということ自体は政治的な行為としてはごく普通のものであるのだが、問題なのは、近年では「共通の敵に基づいたアイデンティティ・ポリティクス」が盛んとなっていることだ――とルキアノフとハイトは言う。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77812?page=5


www.youtube.com


このCMの件なんですが、

まず最初にマーケティングの観点で語るという手もあるとは思います。

togetter.com


ただ、大前提として、ナイキがちょっと前までアメリカでも欧州でも「差別に加担する企業」としてやり玉に挙げられており
そのイメージを刷新するために強いメッセージを打ち出す必要性がある、というお話が無視されているような気がします。

トランプによるナイキ批判について

アツギと似てる、とコメントしている人もいますが、そういうレベルじゃない。
国家元首から名指しで批判されてるというのが凄く大事。トランプの「敵を作って団結する」タイプのアイデンティティ・ポリテイクスの攻撃を受けた形になっているんですね。



2020年3月の記事

www.bloomberg.co.jp

 米紙ワシントン・ポストは最近の記事で、新疆ウイグル自治区で住民が拘束され、スポーツ用品工場に送られている状況を伝えた。オーストラリア戦略政策研究所のリポートによれば、ウイグル族8万人余りがナイキを含むさまざまな世界的有名ブランドのサプライチェーンで、「強制労働を強く示唆する条件の下」で働くよう送り込まれたとみられる。国連はウイグル族を中心に最大100万人が拘束されているとみている。米国のトランプ政権はこの問題で繰り返し中国を非難。ペンス米副大統領は昨年、中国の「人権侵害を進んで無視」している米国の多国籍企業としてナイキを名指しし、同社にも批判の矛先が向かっている。


こういう状況で、攻撃を受けた側のナイキが防衛の意味も込めてポリコレに対して強めのメッセージを意識的に発信するのはそりゃ当然でしょうとしか思わないので、この流れを理解してるとそこまで腹も立たないんじゃないかと。






ちなみにこちらが2020年7月の記事。

digiday.jp

多くの世界的ブランドが、中国の新疆ウイグル自治区でビジネスをするということは、事実上そこで行われている人権侵害を支持するのに等しいと理解して撤退している一方、強制労働の問題は新疆だけにとどまらないことが我々の報告書で明らかになった

ラコステ(Lacoste)は米国時間6月27日、アディダス(Adidas)に続く2番目の企業として、ウイグル人の強制労働に関する新たな報告書において関わりを指摘された「サプライヤーや下請け業者との活動を全面停止することに合意する」と表明した。

ナイキは3月に声明を発表し、中国でデューディリジェンスを実施中だと述べた。同社は次のように説明している。「泰光は、青島工場におけるXUAR(新疆ウイグル自治区)からの従業員の新規雇用を2019年に停止し、残るXUARからの従業員も全員すでに帰還したことを確認している。泰光はまた、XUAR出身者を含めたすべての従業員が、契約をいつでも問題なく終了する自由を常に有していることを確認しており、過去に多くの従業員がそのような選択をしている」

批判されているのはナイキだけではなく多くのブランド企業であり、もちろんユニクロも対象に入っています。


anond.hatelabo.jp




最近でもこんな報道がありましたね。
www.nytimes.com
このニュースの解釈はどうとるべきか悩みますが。




とはいえ、ウイグルの件でナイキをたたくのはあんまり有効な方法とは思えない

ナイキはすでにこのように報告をしており、一定の問題はクリアされていると思うためいまだにウイグルの件でナイキをたたいてる人は筋が悪いような気はします。

むしろそのイメージを払しょくするためにも強いメッセージを出していきますって返されて終わりでしょうし。


自己満足の世界だからとりあえず脳内でマウントできればいいっていうのでなければ、ちょっと情報のアップデート足りてへんのちゃうのかなと思います。

twitter.com

主に騒いでるのは●田尚樹さんの取り巻きの方々などが中心のようですね。本当にこの人たちは「勤勉」でいらっしゃるなとは思うのですが、上の人たちの言うことをうのみにして何一つ自分でものごとを調べないんだなという印象。
そもそもこの件、「技能実習生」など外国人労働者に対する不当な取り扱いでさんざん日本が問題を抱えてる状況でよく真顔で言えるなと、逆に感心すらしてしまいますね。素人ならともかく、仮にもジャーナリストを名乗っている石●さんはプライドがないのでしょうか? Twitterでネトウヨ相手にちやほやされてる方が儲かって自尊心も満たされるというのであればもうジャーナリストの肩書を捨ててやってほしい。





ちなみにこの規模の企業になると、売り上げもさることながら「機関投資家」への説明としても企業としてメッセージを強く打ち出すことが求められます。

自社の労働問題についてはあくまで契約の問題で済みますが、人種差別的な不祥事があって国単位での反発を招くと、最悪の場合その国での操業が一発アウトになります。ドルチェ&ガッバーナの事例はもう2年近く前ですがインパクト大きかったですね。

jp.fashionnetwork.com

また、アメリカやヨーロッパの国ではそもそも日本みたいにほとんどが単一民族ではありません。人種差別問題をおろそかにするとダメージが非常に大きいです。なのでグローバル企業といわず大企業であっても、労働問題よりも人種差別問題の方が優先度が高いのです。

「自社従業員への扱いの劣悪さ」で話題になるAmazonも、人種差別関連では先進的なメッセージを出しています。むしろ労働環境へまじめにコストをかけるより、リベラル的なメッセージを打ち出した方が企業イメージがよくなりますし投資家のおぼえもめでたいです。



資本主義社会の最先端であるグローバル企業においては「労働者に対してコストをケチり、一方で人種問題については人道的でリベラルなメッセージを出す」ことに強いインセンティヴがかかっています。


このあたりのリスク感覚については、リスクコンサルタントが主人公の「オフィス北極星」という漫画(勇午と同じ原作者さん)がめちゃくちゃわかりやすく描いてくれています。超名作なのでぜひ読んでみてください。




なので、アメリカ企業のトップはどこもかしこもリベラルっぽいメッセージを打ち出します。4年前の選挙の際、シリコンバレーの方々がほとんど「表向きは」リベラルな姿勢を打ち出しており、少数の人間だけがトランプを指示したということで話題になりましたよね。

ja.wikipedia.org

アメリカはとにかく表向きはどんどん「キレイゴト」の世界になってきており、特に大企業ほどそういうネットワークになってるので、そこで反社会的なんてレッテルをはられるのはすごく困るわけです。

(実際はエプスタイン島に限らず、リベラルの不祥事が最近よく暴かれるようになって切るみたいですけどね)




「ピンクウォッシュ」戦略って言葉は知っておいた方がいいと思います

「ゲイフレンドリー」を積極的に打ち出すことで(ピンク色で)イスラエル政府がパレスチナ人への人権侵害を行っている事実を覆い隠し(ウォッシュし)、パレスチナやアラブ・イスラム文化圏に比べて、イスラエルが「人権先進国」であるかのように見せるイメージ戦略を「ピンクウォッシュ」と呼ぶ。もともとはイスラエル政府の政策を批判する用語だが、イラク侵攻で多くの市民を殺した米国政府が「中東でのLGBTへの人権侵害」を非難してみせたり、公園からの野宿者排除を推進する渋谷区が「同性パートナーシップ証明」を打ち出したりと、同様の構図はあちこちにあり、今ではそれらも「ピンクウォッシュ」として批判されることがある。背景には、性的マイノリティーの課題が「個人的な趣味」として扱われ相手にされなかった時代から、「LGBTフレンドリー」を打ち出すことが肯定的なイメージ戦略として機能する時代に変わったという事実がある。「LGBTフレンドリー」であれば何でも無条件に歓迎していればいい時代では、もうないのだ。性的マイノリティーの社会運動の側は、この状況の変化にどう対応するのだろうか。

https://kansai-qff.org/2016/pinkwash_index.shtml

ナイキのようなグローバル大企業とは積極的に結びつきを強め、経済・流行の発信地としたい渋谷区の宣伝戦略にとって、ホームレスは邪魔でしかない。アメリカなどの先進国に向けてはLGBTを「活用」してイメージアップをはかりたい──。LGBTという「多様性」を権力者が「認め」ることで「差別のない社会」を謳いながら、ホームレスや貧困層労働者の生活を脅かしているというネガティブイメージを埋め立てる──こういうのを「ピンクウォッシュ」という。もしかすると今、この社会全体がそうした空気に覆われているのかもしれない。
性的マイノリティの状況は改善の兆しを見せているにもかかわらず、世間は、ホームレスや貧困問題からは依然として目を背け続けている。すこしばかり悲観的に言うならば、それはLGBTの運動がとりわけ成功を収めたからではなく、新自由主義経済にLGBT市場はマッチし、路上生活者らの市場はミスマッチだったから、ということになる

https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_1103/

オタクが保守的な層からさんざん攻撃されつつも排除されない理由もこの新自由主義経済にマッチしていたからであり、攻撃されているからといってゾーニングを受け入れない方が生存戦略として正しいのもこのあたりにありますね。「オタクたたき」自体は話題になるからPV至上主義のネットメディアなんかは活用しますが、それが社会の声だと勘違いして「キモオタ根絶」などを本気で主唱している人たちがピエロに過ぎないのと同じです。

まぁそんな感じでCMの良しあしを単体で論じることはいいとして、それとナイキという会社の評価を一致させてしまう人は自分が「チョロい」人間であり、悪意なく差別に加担する危険性があるという自覚は持っておいてほうがいいと思います。経済の面を除いてナイキのCMを評価することは無意味であり、その点を見ずに「ナイキは差別と闘う先進的な企業だ!」とか絶賛してる人は頭がお花畑だと思いますね。

なので、ナイキはこの件に限らず前からナイキはこういうことをやる企業だと思ってます。実際に過去も非常に意識高い系のCMが多かったですし、なんでこのCMがことさらに騒がれてるのかはよくわかりません。

逆にいうとアツギは仮にも一部上場企業であらせられ、上場企業かつ意識が高くなければならないファッションブランドの一角でありながら

お客や投資家に対してここら辺の意識があまりにも希薄なんじゃないかなとは思いますね。

私はオタク絵大好きですし、例のラブタイツのキャンペーンもやり方次第だと思ってるので、うまいこと工夫してビジネスプロモーションとして成功させてほしかったです( ;∀;)




どうしてこういう反応が出てくるのか……

ナイキが悪いイメージを払拭する必要に迫られているなら、労働問題への取り組みをPRすべきだろう。なぜそこで反差別キャンペーンを打って正義の味方ヅラするのか。

いや、私の記事ちゃんと読んでないですよね?

だから、それをやらない代わりに反差別キャンペーンをやって正義の味方ヅラをするのが今のグローバル企業のトレンドだよって話なのですが。

なぜなら、労働問題はまじめに対応しても顧客からも株主から評価されないからです。割に合わない。

これに対して、反差別キャンペーンは非常にコストリターン的に優秀な上、外部の人間の目から労働問題をそらせるからです。

(ほかにもel-なんとかさんのように誤読してる人がちらほらいますが、私はそれがいいとは一言も言ってませんよ?)

Amazonの例でも示した通り「実際の問題に触れずに、人種差別問題の話をして話題をそらす」→「それにまんまとつられてNIKEを応援しちゃうようなチョロイ人が多い」ってお話をしてます。

という話を上で書いてるんですが。




なので、NIKEはウイグルの問題が起きてる時にウイグルの話はしません。まして中国でキャンペーンなんてやるわけがないじゃないですか。


これは正義の問題じゃなくてビジネス上のリスクリターンの話です。
はてなという限界集落の中にいるとすべてを道徳で考える癖がついてるやばい人がいるみたいですけど世の中それだけで動いてないからね、、、



そのあたりを全く考慮せずにNIKEのCMを絶賛したり、批判を受けても「それはそれ、これはこれ」って文脈を切り離してまでCMを擁護しようとしてる人は本当にチョロイですねってお話をしてるんですよ。


単体のCMを評価することとNIKEの姿勢を批判することは普通に両立するとは思いますが、この件に関してはその文脈を切り離して考えちゃうと思うツボですよってことですね。


今回は火力が高すぎたせいか、あまりにも無邪気にNIKEのCMを絶賛するお花畑の人が多いせいか、反発を招いて結局目をそらさせようとした問題にも言及する人が結構多くなっちゃったみたいですが、最初まんまと引っかかってた人が多かったのでやっぱりこういうの有効なんだなあと思いますね、、、