昨日は人生をゲームとしてとらえて取り組むことの正の側面を描いた作品を紹介しましたが、
www.tyoshiki.com
今日は負の側面を紹介するマンガの紹介です。
悪い意味で「リアルとゲームの区別が」つかない人間が引き起こした惨劇がテーマのお話です。
まずは1話を読んでみてください。
小回りとか演出とか情報の出し方とか見る限りではマンガとしての完成度が高いとは思いません。でも面白かったです。
1話でしっかりとインパクトを与えてくれます。そして、2話以降もきちんと興味を引き付ける内容になっており最新話までスルスル読めました。
2巻で終わるコンパクトなボリュームに多くの内容が詰め込まれてます。
次回2月19日が最終話なので楽しみです。
好きなことして生きていく 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者:大峰大影
- 発売日: 2021/01/04
- メディア: Kindle版
自分が実況しているゲームの内容になぞらえて人が殺されていく……
とある引きこもり女子が「クライムパーティー」という殺人描写があるゲームをプレイしているところから物語は始まります。
彼女はこのゲームの実況動画をYouTuberとして半年間ずっと配信し続けていました。
しかし、今までは何もなかったのにある日から突然様子が変わっていきます。
自分がゲーム中で実行した殺人の内容に沿って、自分の身のまわりで人が次々と殺されていくようになったのです。
最初は偶然だと思い込もうとしましたが、偶然の一致が連続しておかしいと感じ始め、
さらにこの犯人は「この殺人はあなたに向けてのメッセージだよ」と明確にわかる暗号を送り付けてきます。
……一体なぜこんな事件が起きるのか、この犯人は何者で、何が目的なのか?
という謎をめぐってお話が進展していく……。
のではなくて、この殺人事件はあくまでお話の一要素にすぎません。メインのテーマは、彼女にとってあこがれの存在であった「天咲皐月」をめぐるお話になっています。
一話ごとに主観視点が変わっていくリレー形式なのが面白い。
1話 天咲皐月(中身は一河あやめ)
2話 一河あやめ
3話~4話 天咲皐月(本物)
5話 天咲結人
6話~7話 鹿井兆司
8話 蓮見璃々
9話 樋本病院長
10話~11話 樋本阿礼
12話 最終話
すべての人間に繋がりがあって、その結果として今回の惨劇が生まれたという構図になっている。
時系列に起きたことを整理(ネタバレ注意)
短いお話であるわりに人間関係が結構複雑なので時系列に整理します。
見ていただければわかる通り、過去編の比重が重たすぎるためバランスが悪いです。
そのかわり、過去編は間違いなく面白かったです。
現代編が過去編と同じくらいに盛り上がりがあれば、より面白い作品になったと思います。
①天咲皐月の父「天咲結人」は、妻の妊娠と同時に不倫相手と別れる。
②天咲結人の不倫相手は発狂し、樋本病院にて天咲結人の娘を殺害したのち自殺する。
③天咲結人とつながりが深い樋本は事件の隠ぺいを図る。
天咲結人の娘をなかったことにするため、
一河あやめが生んだ双子の内の片方を死んだことにし、本当の天咲皐月として天咲家に引き渡す。
つまり、一河あやめと天咲皐月は本当の双子。
④天咲皐月、一河あやめ、鹿井兆司はそれぞれ違った事情で親からネグレクトを受ける。
⑤一河あやめは自分に似ていて自分に親切にしてくれる天咲皐月に恋をする。
⑥鹿井兆司が天咲皐月に恋をする。
同時期に樋本阿礼が鹿井兆司に接触を開始する。
⑦一河あやめ、鹿井兆司ともに天咲皐月に近づきすぎてクラスから排斥される。
鹿井兆司は一河あやめに親近感を抱く。
⑧天咲皐月、一河あやめが入れ替わり、天咲皐月は身を隠す。
鹿井兆司は一河あやめが天咲皐月を殺して入れ替わった(一体化した)と勘違いし
自分も一河あやめと一体化したいという欲求を抱く。
⑨天咲皐月は蓮見璃々に保護されて幸せな生活を送る。
一河あやめも、天咲皐月の立場で悠々自適な引きこもり生活を送る。
⑩天咲皐月は一河母の動画配信の時の言葉から自分と一河あやめの関係に気づき
真実を確かめるために樋本病院長のもとを訪れる。(3年前)
⑪樋本阿礼は事件隠ぺいのため天咲皐月を殺害。四肢切断して山中に埋める
⑫鹿井兆司は樋本阿礼とともにゲーム「クライムパーティー」を開発する。
⑬一河あやめが「クライムパーティー」のゲーム配信を開始する。
ーーーーーここから本編開始ーーーーーー
①鹿井兆司は一河あやめと一体感を感じたいという欲求から
樋本阿礼にそそのかされる形で見立て殺人を始める。
②一河あやめが鹿井兆司の正体を突き止める。鹿井兆司は逮捕される。
③山中に埋められた天咲皐月の死体が発見される。
④一河あやめは天咲皐月の敵を討つため、犯人である樋本阿礼の家に押しかけるが……
という感じです。
類似の作品に「死にあるき」という作品があります。
- 作者:了子
- 発売日: 2018/08/17
- メディア: Kindle版
こちらは現在の盛り上げはよかったのですが、逆に過去編が軽すぎていまいち盛り上がらず、結果として現在進行形の物語もあっさり終わってしまった印象です。
そういう意味で、過去が影響するサスペンスものって、バランスがすごく難しいなと感じますね。