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傑作マンガ「ルックバック」における統合失調症っぽい人物の描き方について

ルックバック - 藤本タツキ | 少年ジャンプ+




私もルックバックは傑作だと思います。



ただ、あくまで舞台装置ではあるのだけれど、「統合失調症」と思われる犯人の描き方に対して抗議してる人がいますね




anond.hatelabo.jp

togetter.com


私はこういう視点は全くなかった。


なぜかというと、作中のあの犯人はあくまで藤野が事件の内容から妄想した架空の人物だからである。藤野という人間の偏見によって生み出された想像でしかないのだ。

作中でも架空のキャラクターである。ウマ娘で言えば「トウカイテイオーが妄想したスペちゃんが"あげません!"と言っただけで、本当のスペちゃんはそんなこと言ってない」という話と同じだと思ったからだ。


作者は最新の注意を込めて、犯人像を現実と結びつけないように二重のフィルタをかけているのである。(作品と現実の壁、そして作中内でも現実の人間を正確に描ずあくまで妄想の中でしか登場させないという壁)


しかし、よくよく考えれば、ウマ娘でもスペちゃんのあの発言、本当に言ってたと勘違いする人が結構いるように、あの作中描写を見て「統合失調症の人間はこういうことやりかねない」という話につながるリスクは確かにある。

ネットでバズった時、そのくらい短絡的な読み方をする人が実際にかなり多いのは想像に難くない。




そこで、当事者の人たちは、作品を否定しないまでも警戒せざるを得ないのであろう。第三者効果的な何かである。作品そのものよりも、作品によって踊らされる人たちが怖いのだと思う。

ja.wikipedia.org
実際、上記記事へのコメントに対して、統合失調症患者への差別や偏見をあらわにするコメントも確認できた。



こういう抗議が来るのも、それだけルックバックという作品に力があるからだろう

この作品、後半になるにつれて描写が細かくなっていくとか
作品が上手いだけでなくて絵による演出も神がかってますからね……。



「幻想的」でありながらも、ものすごく生生しい感情を漫画で表現してくれてるから
読んでる人がついつい「藤野の妄想部分の描写」でさえ現実と混同してしまうんでしょうね。
実際、作中では現実に起きたことと、藤野の妄想は同レベルの強度を持って描かれていると思う。




ただ、その圧倒的な描写の力によって傷つく人はいるのだろう。

yoshikimanga.hatenablog.com

大教大附属池田小学校での児童殺傷事件の報道後に精神障碍者およびその家族に起きた影響の調査の結果。

・症状が不安定になった 57.6%
・症状が再発した    13%
・入院・再入院した   16.3%
・自殺した       1.1%

この批判は否定されるべきではないと思います。



誰も傷つけないエンターテインメントだけが正しいわけではない

つくづくエンターテインメントとは、万人に配慮することは難しいものだなと思う。



www.tyoshiki.com

①批判されるべきところは批判されるべきである
②その批判は丁寧にされるべきである
③その批判を受け止めるかどうかは作者次第である

ただね、藤本先生は、こういった批判は当然覚悟の上で描いたと思います。

f:id:tyoshiki:20210719235634p:plain

だから、私はこういった問題を意識して尚、「ルックバック」は素晴らしい作品だなと思います。*1




*1:さすがに「やまゆり園がどう」とか言ってる人は一つの作品になんでもかんでも背負わせすぎな頓珍漢な意見だと思うけどね。