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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「くにはちぶ」 いわゆるクソ漫画に分類されがちだけれど、クソ漫画と切って捨てるに惜しい、王道ど真ん中をきちんと描いた物語

gendai.ismedia.jp

これで思い出したのですが、私は一時期
「まんが王国」の月間パスを使って
クソ漫画、特にデスゲームものをめちゃくちゃ読みまくってた時期があります。






私の最もお気にいりのクソ漫画は「王国ゲェム」という作品です。
www.tyoshiki.com
作品評価としてシグナル100」「生贄投票」についてに次いで個人的ワースト3位と書いていますが、
「面白くない」「虚無」という意味ではこの作品に勝るものはないと思っています。




最近クソ漫画をあまり読まなくなったのですが、自分が読んだ中で印象に残ってるのは「くにはちぶ」ですね。

この作品は「作者が描こうとしているものに作者の技量が全く追いついていない」という意味で間違いなくクソ漫画です。
特に3巻あたりまでは擁護の仕様もないほどのクソ。


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Amazonでも1巻のフルボッコぶりはすさまじいです。



でも、今から見たらまさにこのパターンですね。

たとえば新連載のときにバッシングがなければ畳みます。叩かれないホラーはバズらないからです。うちの場合はバッシングが「いいね!」ボタンみたいなものなんですね。
また、連載途中では「よくわからない」という感想を待っています。「どういうこと?」と書かれているのは良い傾向なので、そのまま突き抜けさせます。


でも、クソ漫画と切って捨てるには惜しい輝きも感じさせる作品でした。
というか、最初の3巻までのクソ展開を我慢できれば、結構面白いんじゃないかと思います。



さんざんネットで広告されてたので見たことある人も多いと思いますがだいたいこういう感じのあらすじです。

イジメによる被害者の気持ちを加害者にも分からせ、他者の心を思いやるための法律である『国八分』。

自殺などを起こさない強い国民性を獲得するという名目で「無作為選出対象者無視法」、通称『くにはちぶ』という国法が施行され、無作為に選ばれた対象者を1年間無視しなければいけない。無視しなかったと判断されれば、一律1年間の禁固刑に処されてしまう。

そんな法律に主人公の女の子「たんぽぽ」ちゃんが選出され、友達からも家族からも無視されることに…。無視しなければいけない状況で友情や命の重みはどう扱われるのかという作品です。


www.youtube.com




「車輪の国、ヒマワリの少女」のとあるキャラクターに対しても適用されていたこのルールをめぐって物語が展開するのですが……

やはりいろいろと欠点は多いです。

・中盤の「かざり」というキャラの描写に明らかに尺を使いすぎて間延びしまくったり

・キャラのしゃべりに依存しすぎて設定が無茶苦茶だったり

・大人のキャラクターがバカというか不自然すぎたり

とにかく行き当たりばったり。

設定がつごうよく切り替わったり、描写の説得性がなかったり、
展開の切り替えが唐突だったりと、読んでてめちゃくちゃストレスがたまりました。

マンガとしてはお世辞にも出来が良いとは言えない作品です。



でも、通しで読んでみたらこれが意外と面白かった。


伝えたいメッセージに技量が追い付いていない感じはあるものの、
マンガ描写が微妙さが、主人公のブレまくりな行動ともうまくマッチしていた感じなんですよね。

トータルとしては★つけてもいいくらいに評価結構好きになっちゃいました。
描こうとしていたものは間違いなくよかったので、
プロの人が上手くノベライズとかしてくれたらすごく良い作品になる気がします。



個人的に本作品を読んですごくよかったなと思う点を2つだけあげておきます。

①ゴールデンカムイの尾形みたいなキャラクターがいる

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ゴールデンカムイの尾形は親や異母弟を殺したトラウマをずっと抱えており、それ故に、他人を穢そうとする。
他人だって自分と同じ状況だったら同じことをするはずだと「試し行為」をずっと続ける。
そのためだったらそいつに殺されてもかまわないというほどに、自分を過去を肯定したくて仕方がない


実際、このキャラクター、作者の超お気に入りだったらしく4巻あたりから9巻くらいまでひたすらこいつが暴れまわる展開になっている。
はっきり言って物語上はそれほど重要ではないのだが、どうしてもここを納得いくまで描きたかったみたいで物語のバランスを崩してまで、とことんこのキャラの掘り下げをやっている。



②主人公が選んだ現政権との戦い方が、ネットにいる立憲民主党支持者よりはるかに賢い

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主人公は今の状況に適応したり法に従おうとする人をバカにしたり敵視したりしない。
あくまでも敵は「法律」や「慣習」であり、それを壊すことが目的だということからブレない。
そのために、「法律」だけに逆らい、自分の理想を語ることで、「今の法が嫌だ」という人の数を増やしていく。
その積み重ねによって、ついに「くちはちぶ」法を撤回させることに成功する。


今のネットのリベラルは、自分の意見と違う人に対してネトウヨとかレッテルを張って攻撃して
頑張れば頑張るほど敵を作り、支持者を減らすという活動を一生懸命頑張っているのと比べると
フィクションならではのご都合主義とはいえ、実に戦い方が上手だと思う。




描き方は本当につたなくてツッコミどころがめちゃくちゃたくさんある。

キャラクターを描き切れずに投げっぱなしで終わっちゃってるところも結構ある。

それでも、本筋の部分では王道ド直球の部分を描けていて、
そういう意味で、クソ漫画のなかでは圧倒的に読んでて面白い作品でした。

なんといっても、終わり方が綺麗であり、読後感が悪くない作品はそれだけでちょっと好きになっちゃいます。

この作品を支持して盛り上げたネットの読者さん、侮れないなあと思いました。