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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「ヒロインは絶望しました」(完) 個人的には2021年最高傑作です。でも他人にはお勧めしません

個人的お気に入り度★★★★★(お薦め度 ★なし)
お泊り先で読んでたら最後まで一気に読み切ってしまった。おかげでもう3:40だよ!明日の朝がつらそう・・・・・。



見事なタイトル回収だし、素晴らしい終わらせ方だったと思います。




一度50話くらいまで読んでた時は前作「異常者の愛」と同様にB級作品だと思ってました。

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実際、作品構成のまずさとか、描写の不足などマイナス点は結構多いです。

*1


でも、そんなの関係ねえ。


個人的にはこれ2021年最高傑作です



個人的には「私が読みたかったものが読めた」という感じが凄くあります。

70話くらいから私の中では大化けして、最後はかなりグッとくる展開になりました。

まさかこの作品で感動すら覚えることになるとは全く予想してなかったぜ……。途中までは文句いうつもりで読んでたからね。







この作品を読むまでは「アスペル・カノジョ」が今年の最高傑作でした。

どちらも違った形の良さがあると思っています。

「アスベル・カノジョ」以上に劇毒要素が強いですが、効能というかインパクトも「アスペル・カノジョ」以上に強いです。

「アスペル・カノジョ」はかなり現実よりであり、それ故に学べることが多かったし、何度もじっくり読み返したい作品です。




それに対して、こちらの「ヒロインは絶望しました」は、「これぞマンガ作品だからこそできること」という感じです。

本作品から学べることなんか何もないし、読み返したいとも思いません。

でも終盤の展開は多分この先もずっと覚えていると思います。そういうグサリと刺さる作品でした

容赦ないバイオレンス、いじめ、虐待、支配、洗脳など負の要素が要素が遠慮なく描かれます。

絵はとてもシンプルですが、それが逆に救いになっていて、これリアルな絵柄でやられたら読んだ人が耐えられない作品だったかもしれません。

その分、最後の解決も、「現実では絶対に許されない形」で行われます。

現実もこうであってほしいという「祈り」すら感じます。




前の記事でも書いた通り、秋葉くんという人間の異常性がとてもよく描けていた

前作「異常者の愛」ではストーカー女に対してとにかく異常なところを描こう、ほらこの子異常でしょう?って感じの描き方をしていて

あまりにも「浮いた」感じだったので、読者としても一線を引いて読んでおりそこまでインパクトはありませんでした。


本作の秋葉くんは、虐待、いじめ、支配、などなどこの世の悪要素を数多くを詰め込んだような、ある意味前作以上に厄介な人格の持ち主でありながら

現実でもこういうやついそうだな・・・なんかのきっかけがあれば近くに出没するかもしれないという怖さがあります。


秋葉君の厄介なところは、ひたすら人を不幸にしておきながら、自分が一番不幸だと思ってるから、自分がやってる行為に何の罪悪感も抱かないところです。

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次々と関わる人々の大切なものを壊していきながら、その時の秋葉くんは自分を憐れんでいるんですね。


自分の些細なミスを隠すためだけに、何の罪悪感も抱かずクラスの生徒全員を皆殺しにしようとした教師を描いた「悪の教典」を思い出します。
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ジョジョの奇妙な冒険に登場し、「真の邪悪」「人を巻き込んで不幸にする最悪」と評されたマックィィーンというキャラがいますが精神性がまさにそのマックィィーンに近い。

しかも、マックィィーンと違って被害者意識から「積極的に人を壊しに来る」。しかも知能は凄く高い。有害度はけた違いです。


この秋葉くんに対して、渋谷さんというこれまたトンデモないキャラクターを中心として、周囲の人間が秋葉くんに振り回されつつもコミュニケーションを取ろうとします。

でも、待ち受けるのはタイトルの通り「絶望」です。

この「絶望」はダブルミーニングになっていて、その意味が分かると「おおおお!」ってなります。



作品メッセージなのかどうかはわからないけれど、私はかなり救われた気持ちになりました

作者が意図したものかは知りませんが、私はこの作品を読んで

「絶対に変わらない人間はいる。そういう人間にいくら真剣に向き合っても絶望させられるだけである。何をやっても反省しないし殺さない限り絶対に止まらない。

自分が救われるチャンスがいたら、そいつのことは切り捨てて生きよう。そいつのためなんかに死ぬ必要はない。生きよう!生きられるところまであがいてみよう!」


とか


「この世界には、死んだ方がいいやつがいる。絶対にかかわってはいけないブラックホールみたいな人間がいる。そういう人間に対しては100%完璧に絶望する必要がある。ちょっとでも希望を残してはいけない。本当に絶望しきったところにはじめて希望が生じる」

みたいなメッセージを勝手に受信しました。
*2



この作品読んだことで、明日からもうちょっとインターネットに前向きな意味で「絶望」できるといいな。





私が好きな、「なぎさ」や「CARNIVAL」を思い出します。
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私が「CARNIVAL」という作品がどのくらい好きかは過去記事で何度も取り上げていることから察してほしいのですが
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本作品は、CARNIVALより途中経過がエグイぶん、CARNIVALよりも救いのある結末になっていてそういう点でも自分の中に刺さりました。

いやほんとにこの作品はすごくおススメしにくいし、お勧めしていいのかわからない。お勧めしない方がいいのかもしれない。


表紙の絵を見て微妙だなと思った人、
前作最後まで読んだけどがいまいちだったと思った人、
今作序盤を読んでものすごく不愉快な気持ちになった人、
今作途中まで読んでいまいちだと思った人

などなどがいるかと思いますが、仮に興味を持って読み始めたのであれば、ぜひ最後まで読んでみてほしいなと思います。



とにかく、私は本作品のことをめちゃ好きといっても過言ではありません

*1:多分ですが本作品は打ち切りというか、編集者の意見によって途中で軌道修正があったのだと思います。まどマギのパクリじゃん!といいたくなるような種明かしといい、1巻まるまる使って壊されたキャラがキス一つで目覚める展開といい、終盤の駆け足具合はかなり不自然です。秋葉くんの元の世界でのゲームランクが世界2位であった点もおそらく伏線だったのでしょうが全く回収されずに終わっています。おそらく作者自身は秋葉くんを使ってもっと遊びたかったのだろうと思います。しかし他のキャラのプロットが軒並み完了してしまった時点でこの作品は終わらされることになった。サブキャラはエンジェルビーツのような陳腐な展開で次々退場させられ、物語もあっさり幕を閉じる。「新キャラを投入してしさらなる描写をする」ことで秋葉くんをもっと活躍させるよりも、渋谷さんの物語として結論が出た時点で秋葉くんは使い捨てのゴミみたいな扱いにされる。秋葉くんを中心に考えるのであれば、渋谷さんたちの物語を終わらせたあとでも秋葉くんの物語を紡ぐことはできた。ヴァルキリープロファイル2のレザード・ヴァレスのようなキャラに昇華させたり、羊の沈黙シリーズのレクター博士のように第二幕を展開させることもできた。執着の対象を変えて無限に同じことを繰り返す概念にすることもできた。でもそういったことはせず、渋谷さんたちの物語が終わったと同時に、用済みになった秋葉くんはあっさりと物語から切り捨てられる。散々ストレスフルな展開を描いておきながら、最後はカタルシスもなにもない、穏やかであっさりとしたエピローグが描かれるだけだ。秋葉くんは、メルブラのタタリのようにラスボスとして機能することさえ許されない。ただの路傍の石としてその役割を終える。こういう感じで、エンタメ作品としてみた時に、客観的な評価ではそんなにめちゃくちゃいい作品ではないかもしれません。

*2:Amazon評価では終わり方について不満の人が結構多いようですが、私は、この終わり方「だからこそ」良いと思ってます。復讐やザマァ的なカタルシスがないのが良い。エンタメ路線を突き詰めるならカーズ様やアンジェロ岩みたいにすることも可能だったと思います。本作で言えばゲームの世界に閉じ込めたり奴らと一緒に向こうの世界に飛ばしたりね。でも、あえてそうせず、一方的に線を引いて自分の世界から締め出し、あとは自分の知らないところで勝手に死んでもらうという展開は私にとって最も理想的です。はてなブックマークにいる秋葉くんもどきたちもこうであってほしい。アニメ「サニーボーイ」もそうでしたが、私は悪を倒さなくても本人が自分との戦いに打ち勝つことができれば次第で厄介なものから決別できるという描き方が好きみたいです。