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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「ホワイト・ホット」|企業はどこまで「これがうちのブランドだ。嫌なら買わなきゃいいだけ」といえるか問題

You don’t want your brand to run white-hot, because white-hot brands always burn out. (急いで成長しようとしたブランドは必ず衰退する)

「ホワイト・ホット アバクロンビー&フィッチの盛衰」という映画を見ました。

吉野家の「生娘シャブ漬け」騒動の際に記事を書いたときに「この動画どうぞ」とマシュマロで紹介していただいた作品です。ものすごく面白かったです。紹介してくださった方、本当にありがとうございます。これは別の機会にもう一度見返すかもしれません。


アパレルの世界でウルフ・オブ・ウォールストリートのような企業があったんだな……


前半は「マイク・ジェフリーズ」という天才が老舗のアパレルブランドに入社し、わずか数年で売り上げを10倍以上に伸ばし、全米に名だたる人気ブランドにまで育て上げるお話。

途中で従業員視点から「アバクロ」での働き方や、マイク・ジェフリーズのカリスマぶりがこれでもかと語られる。そこで語られるアバクロは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」をきれいにしたようなイメージで描かれる。つまり、若くて、自由で、猥雑で、夢や希望にあふれてキラキラしている。寝る間も惜しまず「世界を自分たちの価値観で染め上げていくのだという壮大な計画」を一丸となって達成しようとした若者たちのストーリーだ。


途中から一転して負の側面が語られ始める。

まず手初めに、広告のイメージを作り上げていたトップのカメラマンがゲイで若い男性モデルたちを性的に搾取するような人間であったことが語られる。日本でいうと、園子温やジャニー氏の話で聞いたような話である。
www.wwdjapan.com

次に、労働環境における「排他性」が明らかにされる。ピーキーなブランドイメージを保つために徹底的に外見にこだわった採用を行っており、その徹底ぶりは日本における「サイバーエージェント」や「サマンサタバサ」のエピソードがかわいく思えるほどであった。有色人種は雇われず、雇われたとしても掃除夫など限られたところだけ。アバクロンビーの世界には立ち入ることすら許さなかったことが語られる

If I didn't at least say that it wasn't not racist.(控えめに言っても、差別的「でなくはなかった」)

アバクロのやり方は効果的であったが、アバクロはやりすぎた。

マーケティングとは客を差別化することである。差別は必須であるともいえる。アバクロは徹底的に客層を絞り、「イケてる」イメージをこれでもかと広告でばらまいた。そうした排他的な姿勢は商品にも反映されており、最初は若者たちの熱狂的な支持を得ていた。

しかし、アバクロは、やりすぎたのだ。

www.tyoshiki.com

例えばある時には「中国人をネタにしたTシャツ」で炎上した。さらに店舗における従業員の差別が問題視されてかなり大きくニュースでも取り上げられた。

このあたりから向かうところ敵なしといわれていたアバクロに対して世間の目が徐々に厳しくなってきた。

アバクロは「排他」の哲学を改めることができなかった

They rooted themselves in discrimination at every single level. (差別こそが彼らのアイデンティティーだった)
And exlusion itself stopped being quite so cool. (「排他」はもはやクールではなくなった)

アバクロはそのころには株式上場も果たしていたので、さすがにこうした批判を完全に突っぱねることはできず黒人の専門家を役員に迎え入れて「ダイバーシティー」を重視することを宣言し、実際に店舗レベルでは白人以外を多く採用するようになった。しかしこうした改善はあくまで店舗レベルにとどまっており、マーク自身の考えは変わっていなかった。実際その後も役員レベルでは上記の1名を除き全員が白人で固められ、ブランドメッセージも全く変わっていなかった。

そして、2013年になったとき、数年前にマークがインタビューに答えた記事を見たユーザーの抗議をきっかけにして過去最大の炎上が発生した。さらにイスラム系の女性に対して「ヒジャブを着ていたことを理由に不採用を決定した」ことがバレてイスラム関係評議会から提訴されることになり、最高裁まで持ち込まれた上でアバクロは敗訴して「差別的企業」の烙印を押されることになった。

全米の若者のあこがれのブランドだったアバクロは、全米で最も嫌われるブランドとなり、そして「工事現場で着る服」になった

なんかこの流れを見ていると、「ワタミ」を思い出しますね。

「私たちの中心顧客は、たくさんの友達がいて素晴らしく魅力的な態度で、いかにもアメリカ的なティーンです。多くの人たちは私たちの服に馴染まないですし、馴染むこともできないのです」の発言で、同氏に批判が巻き起こりました。当時はLサイズまでしか女性服がなく「デブお断りブランド」にもされました。極めつけは「ホームレス御用達ブランド」運動のYouTube動画です。アバクロは「おさがり」「おふる」から「ホームレス」と、さらに貧乏くさいイメージに晒されるようにもなったのです。

今までの炎上と違い、会社の体制から思想まですべてが批判の目にさらされることとなった。対外的に発表していたダイバーシティーの取り組みも実態としては十分に実行されておらず、それどころか圧倒的な批判にさらされ続けたアバクロの社員がむしろ反動的な動きをみせる始末だった。(嫌なら買うな的なやつね)

こうして問題が解決しない中、ダイバーシティーを担当していた唯一の黒人役員はさじを投げて退職し、係争が長引く間にブランドイメージは大幅に悪化し、もはやマイクをクビにしてトップを入れ替えねば回復は不可能ということになった。

こうしてわずか10年足らずで「世界でもトップクラスのアパレル帝国」を築き上げ、その後も君臨し続けていた異才マイク・ジェフリーズは表舞台から追放されることになった。
www.fashionsnap.com

さらに、マイク・ジェフリーズの最大の支援者であり、アバクロの筆頭株主「ヴィクトリアズ・シークレット」のCEOであったレス・ウェクスナーは、エプスタインへの関与を疑われて辞任した。
forbesjapan.com

現在は新CEOの下で、マイク時代とは真逆の「ボディ・ポジティブ」のイメージを積極的にアピールしている

https://strainer.jp/companies/3549/performance

そのころの私たちは、自分たちのまぶしさに目がくらんでいた。私たちは最高!ってね。
SNSもなかったしね。

たぶんだけど、当時から今と同じくらい私たちのことを嫌いな人たちはいた。排除されていると感じていた人たちがね。
ただ、その声の受け皿がなかっただけ。
新しい意識が芽生えたわけではない。でも、今はみんなの声に耳を傾ける時代なのよ。

企業はどこまで「これがうちのブランドだ。嫌なら買わなきゃいいだろ」といえるのか

アメリカという社会ではたった10年前でも白人や美人がそうでない人たちを排除して喜ぶことが受け入れられている社会だったからこそ、今これほどまでにmetooや反差別が強く叫ばれている。

日本のネット民はアメリカを人権において先進国のように語るけれど、アメリカ駐在の知人は「何言ってんだ。そう思うならアメリカに来てみればいい。そういう人ほどえげつない差別を受けて日本に逃げ帰るだろうから。夢見るのはいい加減にしろ」といっていた。日本人でアメリカのほうが良いといえるのは「相当優秀な男女だけ」らしい。私のような人間ではたぶん耐えられないだろう。

アバクロは特殊なケースではなく、そもそも企業の営利活動、特にアパレルのような小売りは常に「差別化」と「多様性」の綱引きで悩んでいる。
何よりも顧客自身が「自分だけは特別だ」と思いたい。「自分は愛されている」と思いたい。

差別というのは悪い存在が生み出しているものではなく、こういう「自分が愛されたい」という気持ちから生まれていることを考えるべきだ。
「ありふれているものであるからこそ気を付けなければいけない」という点から考えて全体の意識変容が必要だ。

They dind’t invent evil. They didn't invent class. They just packaged it. (彼らが悪や差別を生み出したわけじゃない。彼らはそれを前面に押し出しただけ)

なので、今のように適当に目についたやつを雑にぶん殴るようなネットの動きは気持ち悪いし間違っていると感じる。良くも悪くも社会のイメージが考え方を作っていくのが企業である以上、その企業に対してはポジティブチェックを中心に望みたい。