ストーリーについては前回の記事ですでに書いたのでこの記事は枝葉末節の部分。
残りは個人的に印象にのこった部分についてのメモというかチラシ裏落書きです。
アークナイツの世界の科学技術の描写は正直よくわからない
特に通信技術の描写はいろいろとよくわからない。
9章最後でのクロージャ―と謎の人物とのやり取りなんかを見ていると、普通にわれわれとおなじようなレベルでの通信が可能なシーンも描かれるが、基本的にはインターネットも存在せず、無線通信も「定時連絡」のような電報レベルのような印象がある。
まぁ我々の世界では、通信技術は莫大な設備投資が必要な代わりに一度インフラが確立し、顧客獲得に成功すれば安定した収益基盤を得られるからこそ発展しているのであり、天災によってインフレが容易に破壊されるテラの世界では大掛かりな通信設備への投資が難しい……とかいろいろ理屈はつけられるのだろう。とはいえ、さすがに「移動都市」みたいなものまである世界で通信技術が弱いってのはちょっと納得がいかない。オリジニウムの特性とかでなんか説明がつけられるんだろうけれど、このあたりはどこかで説明されているのだろうか?
なんかアーミヤやMiseryが極端にドクター依存になるのがわかってしまうくらいに組織としてのロドスに不安を感じるシナリオ
それはそれとしてウォルモンドである。
このエピソードの中では、基本的にロドスメンバーはロドス本拠地との連絡がほとんど取れない状況になっている。
ゆえにケルシーの弟子ではあるが精神的にはまだ未成熟なフォリニックとガチの子供であるスズランの二人が、ロドスの支援をあまり得られない中で、ウォルモンドの複雑で一触即発となっている危険な状況に対処しなければいけない。
そのあとグレースロートらのメンバーも助力に訪れるが、根本的にロドスに支持を求めることもできない。それでいて、現地のメンバーはロドスの看板を背負い、それなりに権限を認められて行動することができる。
……うーんこれはちょっと。一人一人のエージェントが「マスターキートン」「紛争でしたら八田まで」みたいなレベルならともかく、ちょっとこの体制はどうなんだ?って思ってしまう。何か起きても基本的には状況を覆す力はないから、ただ惨劇を眺めることしかできず無力感に打ちひしがれるだけになるだろう。
みんなで悲劇を止めようとしたのに、悲劇は私たちのことなんてものともしていなかった。この大地は善行に報いてくれるほど甘い存在じゃないってのは分かっているけれど、でもこんな内部崩壊あまり見なかったから……。
私は「失敗した」わけじゃなくて「最初からできなかった」んじゃないかと思ってる
そりゃそうなりますよ。
今回の話でも結局惨劇は止められなかったけど、これはアークナイツの世界観が残酷とかそういうのもあるけど、ちょっとマネジメント体制の問題もあるのではないかしら。
「反差別」は口実に過ぎない?
このエピソードで最も印象的だったのはこのセリフ。
このエピソードでは「冬霊人」を自称する人たちが反乱を主導しているのだけけれど、この人たちは途中までは差別を撤廃するとか街の不正を糺すとか公正を主張してたんですよね。でも、暴動が鎮圧され、諦めて街を出ていくことになった後に捨て台詞のようにいう言葉がある。
この町は諦めよう、「冬霊」の同志達よ、貧困にあえぐ者たちよ、そして感染者の仲間たちよ。
俺たちの怒りは別の場所で晴らせるはずだ。ウォルモンドはこのまま死んでいけばいい
まぁ実際そうなのだろうけれど、戦いの最中で主張していたもろもろが全てうまくいかなくなっても、これだけが残るのだ。
まぁ現実のtwitterにおいてもいますよね。「とりあえず怒りを抱えていて、そのうっぷんが晴らせるなら対象は何でもいい。理由もすべて後付けだ」ってなってる人。個別の議論ではひたすら負け続けて、そこでまた鬱憤を抱えて、また別の場所で暴れ続ける。どんな話題にも首をつこっこんで騒ぎを大きくするだけの人。左で言えば「正義厨・フェミ厨・ポリコレ厨」、右で言えば「ネトウヨ・アンチフェミ」みたいな言葉で表現できる人達。こういうのは、もはや当初の怒りが何だったかも忘れてネットをさまよって他人に迷惑をかけるだけの存在なので、「悪霊」と一緒だと思います。
その人たちはあたかも反差別やら正義をうたっているように見えるけれど、実際は全く別の恨みが原因であったり、単なる自分のうっぷんを晴らすサンドバッグを求めてるだけのことが多い。そういう連中の口だけ立派な言葉にいちいち踊らされるのって、あまりにあほらしくないですか?私はもう、本当にネットで反差別とかポリコレを主張しながら毎日暴力的な言動をつぶやきまくってる人に対しては、このシナリオの「自称冬霊人」たちと同じようにしか見えなくなってきてますよ。
一方で、実際の「冬霊人」はこのように発言している。
憎しみに火がついて、初めて彼らは血統を語りそれを口実にするんじゃ。彼らが憎んでいるのは別のものじゃ。
だからわしらは(迫害された仲間のために)骨身を惜しまず動いた。しかし若者たちは傍観するだけじゃった。彼らからすればそんな復讐は常に必要ないものだったんじゃ。そしてわしらは諦めてウォルモンドに逃げ込んだ。
(中略)
最後に残ったのは無力感だけじゃった。
「復讐や戦いを急ぐな」わしの言葉を胸に刻んで行ってくれ・・・お嬢さん。
冬霊人は、この紛争の原因ではない……少なくとも今はもう違う。
当事者はとうに恨みを捨てていた。というより、当事者は最初は自分たちの誇りのために戦っていたが、若者たちは生活が保障されている時は争いを冷えた目でみて傍観しているだけだった。
差別とか民族の誇りなどは、大勢が戦う理由ではなかったのだ。
「マイノリティ憑依」する人たちの切実さと節操のなさ
実際に、反乱を起こした「自称冬霊人」たちは、「マイノリティ憑依」そのものとして描かれている。エピソードの中でも、最初は冬霊人を名乗っていたが、後半では「レユニオン」を名乗ろうともしていた。
彼らにとって、反差別は口実に過ぎなかった。
そして、それによって矢面に立たされたのは、もはや恨みを捨てていた冬霊人だった。
ただの口実であっても「冬霊」の名を出した彼らが残虐行為を働いたことに変わりはない。次には食料庫を開け全てを奪い尽くすだろう。さらにこいつらはユニオンも名乗ろうとするかもしれない。
というわけで節操がない。大義など何もないのだ。こういうものに騙されてはいけない。
一方で、ツイフェミやポリコレ民のような「人を殴りたいために反差別を名乗ってるだけのファッション反差別厨」とは違い、本シナリオにおける反乱者たちはもっと切実だ。
私達が平和的に主張してれば、あの悪人達は家や住む街を用意してくれたのか?あいつらは誰か枕で眠り理想を語る時代を避難して騒ぎ立てるくせに俺達みたいな敵は遠ざけてすぐ近くにある問題の見て見ぬふりをするんだ
とても節操なしではあるが、節操なしでもなんでも行動するのももちろん理由はある。前の記事で述べたように、もはやウォルモンドは全員が生存できる道は閉ざされている状況だった。その中で黙っていたら現在社会的に弱い位置にある冬霊人の子孫や感染者たちは淘汰されるリスクが高かった。だから何でもいいから口実を付けて立ち上がる必要があった。これ自体は否定できない。
俺たちはただ生き延びようとしているだけだ。それで他の奴らが死ぬ結果になってもな。自分の命がかかってるのに慈善家なんかやってらんねーんだよ!
俺達は感染者が非感染者から迫害されず、貧乏人が貴族のために命がけで働かなくてもいい世の中を望んでいるんだ。冬霊人だって自分の国を取り戻す権利がある!
なんにせよ冬と飢饉が訪れれば君たちの負けだ。これは生存者の存在しえない茶番劇にすぎない。
もちろん、だからといって他の人間から奪っていたら「ウルサスの子供たち」と同じ状況になっていたわけだが。
それでも建前を放り投げてただ他人から奪うことを正当化するだけの「汚れた進軍」の後には希望も命も残らない
彼らの行いは立場とは関係がない、彼らは本当に解放を求めているわけじゃない。ただ自分の利益を他人よりも優先しているだけだ。彼らが求めたのは混乱に乗じた略奪だけで、彼らは共に苦境を乗り越える選択をしようとはしなかったし、本心から真相を知りたいと考えてもいなかった。
理由はいつだって正当化される。
お前たちは不平不満を叫んで暴れ回っただけだ!問題解決をするには暴力じゃなくて話し合いや助け合いが必要だったのに!お前たちはただ権利を掠めとりたいだけだ!強者の後ろでおこぼれにあずかる権利をな
今回の紛争の本当に恐ろしいところは、みんな戦士じゃなくてただの一般市民だってことよ
「私たちの後ろには希望も命も残らない。感染者達は声高に声高らかに解放を求めているが、怒りと憎しみが解放されるだけだ。
どこにでもある汚れた進軍だ。」
「この街は一度だって一致団結したことはないんだろう。ボロボロに切り分けられたケーキみたいに」
「そして最後に残った一切れももうすぐぺちゃんこになる。無力だな」
戦い始める前はわからないが、いざ戦いを始めてしまったあと理想を保ち続けられる人などほとんどいない
戦場では一瞬という恐ろしい速さで命が流れ去っていく。本来議論や罵り合いをする余地などない。戦う人々もお互いに何を言い争うべきかすらわからないので戦場に出る意味も無駄死にするわけもわからない。
武器を掲げてなお揺るぎない理想を持ち続けられるものは実はほんの一握りなのだから。
今彼らは私の前で彼らを争い互いを殺そうとしている一方で、罵声を浴びせ罪を擦り付け責任押し付けあっている
戦いを始めた後に掲げた理想や信念をうしなってしまったのであれば、立ち去るしかない
争う者たちよ!
憎しみと争いから脱却して生きてゆけ!
今がここを去る最後のチャンスだ。俺たちが目指したのは「非感染者や抵抗者の死」ではない!俺たちの生だ!
それがわからないなら、残念ながら俺たちはもうお前たちとは同じ立場にいない
などなど、このシナリオは単体でも楽しめる内容なので興味ある人はこのシナリオだけでも読むといいと思います。