全四部作。
「絶対の宣伝」はナチス時代のありとあらゆる映像作品や広告・宣伝の資料を収集して整理・分析した「資料集」「写真集」として読みました。
資料集の体裁を取っているため、ナチスのやってることを頭ごなしに否定するようなことはせず、
いかにナチスが自分たちを「格好良くて」「魅力的で憧れるべき存在である」と見せるために様々な工夫を行ってきたかを見せてきます。
4冊で2000ページ近いボリュームがあり、膨大な数の資料でぶん殴ってきます
現代の我々は、とかくナチスドイツについてヒトラーのカリスマ性を強調することにより、ナチスの恐ろしさを矮小化してしまっている
映画「帰ってきたヒットラー」なんかまさにヒトラー個人のカリスマの強さ文脈で作られてますよね。
国民の不満が溜まってる状況であれば、一人でもナチスの災禍を再現できる、と。
東浩紀の暇空茜さんに対する分析とかもなんかそういう感じでしたね。
暇空旋風は不満を持ってるやつがいたからおきた。リベラルは反省しろくらいの文脈になってる。
一見もっともらしいですが、ヒトラーの圧倒的な人気はそれだけで説明できません。
ヒトラーはあの熱狂的な演説がなにかと注目されがちであるが、本書は「宣伝戦略」にこそ重点を置いて研究している。
・どうやって「我が闘争」の様な大衆を馬鹿にし尽くした自著を国民に買わせたのか、
・どうやってヒトラーユーゲントを組織し、統制したのか
・どうやって子供とのスキンシップを宣伝に活用したのかこういうメディアに対するメッセージの発信のしかたとその狙いの分析に重点を置いている。
1 「我が闘争」は読ませる為では無く、自宅に「聖書」の様に飾らせる為に買わせたこと、もっとも、愚かな大衆は「本など読みはしない」と見抜いていた。
2 ヒトラーが眼鏡を掛けないのは、人と対峙する時に、魅力的に凝視する為である。
3 ヒトラーユーゲントは、大衆を機械人形の様に操作するなら子供の時から行うべきと見抜いていた(この辺が大変悪魔的!)。
※特に子供がしたいことを十二分に理解して、実施されたカリキュラムが現代の教育機関より優れているのが何より怖いところ!
4 彼が独身であったことは「女性」への戦略であった。女性からの支持を獲得したからこそ独裁が成立しえた。
※当然のことではあるが、当時の女性層の人気の高さはすさまじかった!
5 ムッソリーニが不徹底だったことを、ヒトラーは徹底化出来たこと。そこがヒトラーの怖さであり、限界であった。
この本を読むと「当時の宣伝がいかに強烈だったか」「いかに当時のメディアの統制が徹底されていたか」を思い知らされます。
とにかく宣伝の視覚効果が強い強い。
いかに見たものの感情を増幅させ、理知的な思考を停止させ、
信じるものの気持を高揚させ、気持ちよくさせ、一方で敵対する勢力の心を折れた状態にするか
ナチス政権の執拗で徹底的な試みが、暴力的な数の資料とともに語られていました。
ぶっちゃけ文章はちゃんと読めていませんが、
写真を眺めているだけでもナチス支配下のドイツというものはこれほどまでに恐ろしかったのかと感じさせられます。
私が作ったtogetterにホイホイ釣られるようなチョロいはてブ民たちは
この当時ナチスの作り出した空気にNOということは絶対に不可能だったと確信を持っていえます。
このプロパガンダ戦略を見ていくと、石丸伸二は非常に侮りがたいと感じます。
ナチスドイツのプロパガンダ戦略は7つの要素に集約される、極めてシンプルなものでした。
しかしシンプルだからこそ国中のあらゆる場面においてそれを実践することができたのです。
石丸伸二は大衆を扇動するためにこの7つの要素のうち5つまでを効果的に活用していることがわかります。
彼は「実務能力」において有能ではない、ということはすでにみなさん周知のとおりですが
だからといって、彼を侮るのは非常に危険です。
石丸信者は確かにほとんどバカしかいませんし、何より石丸自身が信者をバカにしまくっています。
しかし、信者がバカばかりであることは、リーダーや信者を侮っていいことを意味しません。
彼は支持者をバカに絞り、バカを最も効果的に扇動する方法を愚直にやっています。もう少しその危険性を理解したほうが良いと思いますね。
彼は本人の中身は空っぽです。
それ故に「宣伝100%の人間」になりうるのです。
石丸伸二の最も恐ろしいところは「大衆を愚民だと思っているから、どんないい加減なことでも平気で言い続けることができる」です。
その「最悪な方向での一貫性」こそがプロパガンダにおいては最強の武器になります。
そして、1930年代よりも広告の力がはるかに強力になっている現代では
こういう「中身がないのに宣伝力が高い人間」に対しては歴史上もっとも警戒すべき時代だと言えます。
ナチス・プロパガンダの7つの柱について
1:単純化: 複雑な政治・社会問題を、極端に単純な善悪二元論に落とし込みます。「悪いのは全てユダヤ人だ」「ヴェルサイユ条約が諸悪の根源だ」といった分かりやすいメッセージを提示しました。
2:反復 : 同じスローガン、敵対イメージを、飽きるほど繰り返し提示することで、人々の意識に深く浸透させました。「嘘も百回言えば真実になる」という考え方に通じます。
3:感情への訴求: 理性や論理ではなく、人々の恐怖、憎悪、怒り、不安、希望、誇りといった感情に直接訴えかけました。
特に、第一次世界大戦敗北の屈辱感や経済危機への不安を利用し、敵への憎悪を煽りました。
4:敵の創造とレッテル貼り: ユダヤ人、共産主義者、自由主義者などを「民族の敵」「裏切り者」「寄生虫」といった否定的なレッテルを貼り、非人間化することで、迫害や排除を正当化しました。
明確な「敵」を設定することで、国民の不満や憎悪を特定の対象に向けさせ、内部の結束を高めようとしました。