2024年4月~現在に至る米価格高騰問題について
その背景や構造を多角的に分析・解説してくれている
MRIのレポートがとても興味深かったので内容を整理することにします
文章読むのがだるいという人は例のごとく音声でどうぞ
と、その前に・・・。
はじめに:「先物市場が原因」説の否定:
noteの記事で「先物市場の開始(2025年8月)と価格高騰はタイミングが一致している!価格上昇の原因は米先物市場だ!」というデマが流れていた。
そして、例のごとく参政党・れいわ・国民民主党という情弱御用達政党三銃士の信者がこれを一生懸命拡散させている。
この話がすぐに嘘だとわからない人は、米問題についてネットの意見を見るのを控えるべきである。コロナのときと同じようにノイローゼになるだけだ。
・価格上昇は、先物市場が本格稼働する前から始まっており、(2025年4月からすでに上がっている)
時系列データ(グラフ)を見れば、8月の先物市場開始と価格急騰の直接的な因果関係はないことが明らかである。
他にもなぜ米先物が原因でないと断言できるかについてはこちらのnoteで説明しているので読んで。
興味がなければ「ほな米先物は違うんかー」とだけ納得していれば良い。みるくぼーいのように。
ただ、米先物が原因でないことをいくら説明しても
「2023年産は不足していたから2023年~2024年6がつ頃まで米価格が上がったのは理解できるが
2024年産は生産は不作ではなかった。なのに2024年産の新米が出回り始めた2024年9月からも高騰が続いた理由がわからない」
という人がいるだろう。
これがわからないから「断片的な情報をもとに」一生懸命犯人探しをしている人がいるのだが
ぶっちゃけ今回の米上がりの要因については結論は出ている。
ただ、値上がりの原因は複数(具体的には4つ)あり、それが連鎖している。
これが問題で、
「ネットで断片的な知識をよせ集めて自分で勝手に理屈を作って理解したつもりで発言する」という行動様式に慣れている人たちには
この手の問題が理解できないのだ。
1ツイート内で解説されない問題についてついていけない脳になってしまっている。
目の前に答えがあるのに、「答えはシンプルな1つだけ」という思考のロックがかかっているせいで見えてない
このことに気づくことがまず何よりも重要だ。
小泉進次郎劇場もこの錯覚に拍車をかけている。
彼が問題を1つだけに見せかけ、その1つだけ対応すれば解決するようにみせかけているためますます人々の認知が歪められていっている。
別にこの問題は興味がないなら理解しなくても良いが、
それよりも「シンプルな1つの答えを求める脳」になっていた人は、もう少し危機感を持った方が良いと思う。
というわけて米価格高騰の原因の説明をする前に、今回の記事ではまず押さえておくべき最低限の事実と最低限の業界の知識を整理しておく。
そのうえで次の記事で原因の説明をする。
1. 価格高騰の現状と経緯
現状: 2024年のコシヒカリ(5kg)の店頭価格は前年比1.7倍にまで高騰している。
発生経緯:
伏線(2022年〜): ロシア・ウクライナ紛争以降、国際的に小麦などの穀物価格は上昇していたが、
米価格だけは低位安定していた。この「抑えつけられていた」状態が、後の急騰の一因となった。
品質問題(2023年秋): 記録的な猛暑の影響で米の生産量(作況指数)は平年並みだったものの、品質が著しく低下。これが将来の米不足懸念を煽る。
不安の増大(2024年8月): 南海トラフ地震の臨時情報発表や台風被害が重なり、食料備蓄への意識が急上昇。買いだめが発生し、店頭での品切れが連鎖した。
2. 需給バランスと過去の騒動との比較
需給の実態: 2023年の需要量(約702万t)が供給計画(約670万t)を上回った。
需要増はインバウンド効果ではなく、品質低下を見越した業者による「予防的な多めの調達」が主因。
過去の米騒動(1993年, 2003年)との違い:
過去: 明確な不作(冷害など)による大幅な供給不足が原因。翌年の生産量が回復したことで、約1年で価格は沈静化した。
今回: 供給不足の幅は比較的小さく、本来は政府の備蓄米で十分対応可能なレベルだった。
にもかかわらず、新米が出回った後も価格高騰が続いている点が異例。
3. 米の流通構造と価格決定メカニズム
流通の現状:米の流通は2004年に完全自由化されている。
JAグループが扱う流通量は全体の約4割であり、市場を完全に支配しているわけではない。
農家からの直接販売(直売)など、多様なルートが存在する。
複雑な価格決定:
米の価格には大きく3つ
①JAが農家に支払う概算金
②JA等が卸売業者に販売する相対取引価格
③消費者が購入する小売価格)が存在する。
一般的には「生産コスト→卸売→小売」という価格決定の流れだと考えられているが実際は逆で起点となっているのは「小売価格」である。小売市場の動向を見て、卸売価格や農協が農家に提示する金額(概算金)が逆算的に決まっていく構造になっている。
※ほとんどの人は、ここで認識が逆になっていて、それをもとに推理をするのでだいたい的はずれな出力になってしまっていた。
実際のところはJAは大量の取引を抱えるため、個別の取引で価格を柔軟に変更することが難しい。
一方、民間の業者はJAよりも高い価格を提示して農家から米を買い付けることが可能であり、JAは価格競争において有利な立場にはない。
※JAが2024年度新米の概算金をあげたのは事実であるが、JAが価格を支配しているという勘違いが非常に多く、これまた的はずれな推理につながっていた。
4. 問題の核心:今回の価格高騰は、単純な需給ギャップだけでは説明がつかない。
次の記事に回すが、ざっくりいうと
「2025年以降も生産量は回復するのか?」という将来の供給に対する構造的な不安や
上記のような複雑な流通・価格決定メカニズムが複合的に絡み合った結果である。