頭の上にミカンをのせる

もうマンガの感想だけでいい気がしてきた

現在の世界秩序である「ペトロダラー体制」についてしっかりおさらいしておこう。

1974年にリチャード・ニクソン大統領とヘンリー・キッシンジャー国務長官がサウジアラビアとの間で締結した「軍事保護とドル建て原油決済」の相互互恵関係。

これが「ペトロダラー体制」の始まりだ。

そしてこの体制は長らくアメリカ合衆国の「一極体制」を支える経済的、軍事的基盤となってきた。

しかし、2024年6月にサウジアラビアが50年(あるいは実質的な80年)にわたるペトロダラー合意の更新を拒絶し多通貨決済へと舵を切った。

これによって、ドル覇権の土台は音を立てて崩れ始めた。

この地政学的な断層が広がる中で、急激な金価格の上昇が起き、さらに銀価格の上昇が続いたり、仮想通貨の暴騰につながってきたわけだが

長年続いていたペトロダラー体制はまだ維持はされている。

そしてトランプはこの不可逆的な流れに逆らおうとした。

ドナルド・トランプ大統領によるイランへの軍事介入、特に2026年3月のハルク島(イランの原油輸出の90%を担う戦略的拠点)への大規模爆撃は

ドル覇権を維持しようとするアメリカの最後の賭けとも言える強硬策であった 。

だが、イランが対抗策として提示した「ホルムズ海峡の通行許可と引き換えにした人民元決済の要求」は、トランプ政権にとって文字通り「最悪のシナリオ」を突きつけるものとなった。




こういうマクロ経済の流れは皆さんご存知だと思うけれど

せっかくだからリアルタイムで歴史が動いている今、過去の歴史を振り返ってみましょう。



ぶっちゃけ過去に学校で学んできた歴史って

「現在」を考えるのに使わなければただのおもしれー物語とか、「知ってるといろんなことが楽しめる教養」でしか無いのだけれど

このあたりは今後の生存を考えるために必須の必須科目だと思ってます。

ちゃんと「公民」の授業でやってる話なんだけど、多分みんな学校で学んだときは理解できなかったのではないでしょうか。

このあたりを高校の時点で理解できてたら、多分生き方が全然違ってたと思う・・・。




ちょっと前置きが長すぎたので(前置きは後で消すかも)、そろそろ本題に入っていきます。





第1章:ブレトンウッズ体制の崩壊とペトロダラー体制の誕生

ブレトンウッズ体制の崩壊とニクソン・ショック

第二次世界大戦後の世界経済を規定したのは、1944年のブレトンウッズ協定であった。

この体制下では、米ドルが1オンス=35ドルの固定レートで金と交換可能であり、他のすべての通貨は米ドルにペッグされていた 。

これにより、米ドルは「金本位制のもとでの世界の基軸通貨」としての地位を確立していた。

しかし1960年代後半になると、ベトナム戦争の戦費拡大や社会保障支出の増大、そして金準備の減少により、ドルの金への兌換性を維持することが困難となった 。

そこで1971年、ニクソン大統領による金・ドル交換停止が行われることになった。

いわゆる「ニクソン・ショック」である。

金という実物資産に裏打ちされた通貨体制を終焉させ、ドルを純粋な不換紙幣(フィアット通貨)へと変貌させた 。

この瞬間、ドルの信用力は著しく低下し、世界的なインフレと通貨不安が広がることとなった。



日本では通貨=国の信用とかいう理屈で説明する人がいるが、ぶっちゃけそんなに甘い話はない。

結局通貨というのはなにかと交換するためのものなので、現物の裏打ちは必要になる。

ドルの信任は一度吹き飛んだのだ。


そこでアメリカが次に考えたのが「1974年合意」で生み出されたペトロダラー(石油本位制)である。


石油を金の代替とする「石油本位制」の確立ドルの価値を再担保する。


そのためにキッシンジャーらが編み出したのが、石油という「世界で最も重要な商品」とドルを直結させる仕組みであった。


1974年6月8日、アメリカとサウジアラビアは歴史的な協定を締結した 。


その核心的な内容は以下の3点に集約される 。


1️⃣決済通貨の独占化: サウジアラビアは、同国が輸出する原油のすべての決済を米ドルのみで行うことに同意した。

2️⃣軍事・安全保障の提供: その見返りとして、アメリカはサウジアラビアに対して最新鋭の兵器を供与し、サウード家による統治の存続と油田の安全を保障した。

3️⃣ペトロダラー・リサイクリング: サウジアラビアは石油輸出で得た膨大なドル余剰資金を、米国債の購入やアメリカ国内への投資に還流させることを約束した。



このシステムは翌1975年までに他のOPEC諸国にも広がった。



これによって、ようやく事実上の「石油本位制」が確立されたのだ。


ドルでの独占的決済だけでなく、中東の平和をアメリカが保証し、さらに中東がアメリカにドルを供給し続ける仕組みだ。


これにより、世界中の国々が石油を購入するためにドルを保有しなければならなくなり、ドルに対する永続的な需要が創出された。(その後日本の米国債購入もドルの基軸通貨体制を維持するために重要な役割を果たすようになるがそれは省略)



第2章:アメリカの絶対的な強さは、ペトロダラー体制によって得られる発行益を前提とした赤字ファイナンスと「法外な特権」にある

ペトロダラー・リサイクリング経済

アメリカが長年にわたり多額の貿易赤字と財政赤字を抱えながらも破綻を免れてきたのはペトロダラー体制が提供する「還流(リサイクリング)」のメカニズムのおかげなのだ。

原油価格が高騰するたびに、産油国には莫大なドルが流入する。

しかし、これらの国々は自国内でそのすべてを消費しきれないため、安定した投資先として米国債を選択する 。

このプロセスによって、アメリカは以下の「法外な特権」を享受してきた。

日本も「円」という独自通貨と中央銀行を持つがゆえにその発行益(シニョリッジ)を享受しているがアメリカのそれは日本の比ではない。


1️⃣低金利の維持:
外国政府による米国債への絶え間ない需要が、長期金利を抑制し、アメリカ国内の借入コストを低く保った 。

2️⃣インフレの輸出: アメリカが発行した過剰なドルは、世界中の外貨準備高として吸収されるため、アメリカ国内でのハイパーインフレを回避することが可能となった 。

3️⃣「銃とバター」の両立
莫大な軍事予算(銃)と国内の社会プログラム(バター)を、他国の貯蓄を活用して同時に賄うことができた 。

IMF(国際通貨基金)の分析によれば、ペトロダラーのリサイクリングは、世界的な経常収支の不均衡を調整する重要な役割を果たしており、産油国がドルを資産として保持し続けることが、米ドルの基軸通貨としての地位を支える王道となっていたのである 。



赤字ファイナンスへの依存構造

しかしこれにより、アメリカの経済覇権は、「借金で運営される国家」としての性格を強めていった。

ジェム・ベンデルが提唱する「通貨成長の義務(Monetary Growth Imperative)」によれば、この利子付き負債システムを維持するためには

社会が望むかどうかにかかわらず、絶え間ないGDP成長とドルの供給拡大が必要となる 。

ペトロダラー体制はこの拡大を支えるための「外部吸気装置」として機能してきた。

もしこの装置が停止すれば、連鎖的なローン不履行、破産、そして国家規模の不況が訪れるという構造的な脆さが、現代の米国経済には内包されている 。

つまり、ペトロダラー体制の維持こそがオルカンの右肩上がりの成長の源泉であり、ペトロダラーの限界こそがこそがオルカンの限界でもある。





第3章:2024年6月 ペトロダラー体制の綻びとサウジアラビアの離反

アメリカは21世紀に入ってから、ペトロダラー体制の柱である「中東の産油国安全」へのコミットを減少させ、

さらにイスラエルとの関係性を強化することでアラブ諸国からの反感を強めることになった。

さらに2022年のロシア中央銀行資産の凍結の際、特に欧米以外の国ではドルというよりはアメリカという国への信頼が大きく損なわれてしまった。

長い年月の中で関係性がほころび、むしろアメリカへの不信や不満が高まり続けた結果、ついに恐るべき事態がおきた。


2024年6月9日、サウジアラビアは50年間続いてきたアメリカとのペトロダラー合意を更新しないという決断を下した のである。


これは、世界金融秩序における劇的なシフトの始まりを告げるものであった。

もはやサウジアラビアは原油の販売において米ドルのみに固執する必要がなくなった。

中国人民元(RMB)、ユーロ、日本円、さらにはデジタル通貨での取引を選択できるようになったのである 。

この背景には、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MbS)が推進する「ビジョン2030」がある。

サウジアラビアは石油依存の経済から脱却し、投資と経済の多角化を目指している。

アメリカ一辺倒の外交から、中国やインド、ロシアといった新たな大国とのバランスを取る方向へと転換している 。

IMF COFERデータによると、世界の外貨準備高におけるドルのシェアは、過去20年間で着実に減少している。

IMFの「公式外貨準備の通貨構成(COFER)」データによれば、2025年第1四半期のドルシェアは57.74%であったが、第3四半期には56.92%まで低下している 。



ここから世界の中央銀行はドル覇権体制の崩壊への備えを加速し始めた。

特筆すべきは、金の存在感の増大である。

2025年末時点で、中央銀行の外貨準備に占める金の割合は27%に達し、ユーロ(20.33%)を抜いて第2位の準備資産となった 。


BRICS+の台頭と決済の独自化

ペトロダラー体制に対する最大の組織的挑戦は、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の拡大によってもたらされている。

2025年初頭までに、エジプト、エチオピア、イラン、インドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)が正式に加入したことで、BRICS+は世界人口の45%、世界GDPの35%を占める巨大勢力となった 。

BRICS諸国は、ドル依存を脱却するために「国別通貨決済」の拡大を進めており

さらに独自の決済システム「BRICS Pay」や、金を40%、BRICS通貨バスケットを60%の割合で裏付けとするデジタル通貨「ユニット(Unit)」の試験運用を開始している 。

これは、西側諸国主導のSWIFT(国際銀行間通信協会)に対抗する並行金融インフラを構築しようとする試みでありドルの「武器化」に対する防衛手段としての側面が強い。

ドル覇権国家の恩恵が非常に大きい日本にいると感じにくいが、

世界の国は、ドル覇権によるアメリカの横暴に対して、強い反発を感じていたということである。





第4章:ドル覇権を維持しようとするトランプの横暴な外交の果てに2026年イラン紛争がおきた

(※説明の簡素化のために、あえて中東におけるイスラエルの問題や、イスラエルとトランプの関係については省略する。文句がある人はコメントなどで追記してください。)

1️⃣トランプの戦略とハルク島爆撃

2026年2月28日、トランプ大統領の指示により、アメリカとイスラエルはイランに対して大規模な共同軍事攻撃を開始した。

攻撃の第15日にあたる3月13日、トランプはイランの経済的生命線であるハルク島(Kharg Island)の軍事施設を「完全に粉砕した」と発表した 。

トランプの公式声明によれば、この攻撃はイランによるホルムズ海峡の封鎖や船舶への妨害に対する報復であり

イランが海峡の自由航行を認めない限り、石油インフラそのものも攻撃対象にするという強烈な警告であった 。

トランプのこれまでの強引な行動は、原油をベースとしたドル覇権を死守し、中国人民元への覇権委譲を阻止するための「実力行使」として理解できる。

イランを徹底的に叩くことで、産油諸国に対して「ドル体制に逆らう者には軍事的代償が待っている」というデモンストレーションを行う狙いがあった。




2️⃣イランの逆襲:ホルムズ海峡の「人民元ゲート」

しかし、イラン側はこの軍事圧力に対し、極めて巧妙な経済的カウンターを仕掛けてきた。

「イランはホルムズ海峡を通過する石油タンカーに対し、その積載貨物が中国人民元で決済される場合に限り、限定的に通行を許可することを検討している」と述べた 。

www.cnn.co.jp

news.yahoo.co.jp

これはトランプ政権にとって以下の3点において致命的な意味を持つ。

・ドルの独占的地位の崩壊: 世界の石油の約20%が通過するホルムズ海峡において、「人民元でなければ通さない」というルールが確立されればエネルギー安全保障のために人民元を保有せざるを得ない国が続出し、ドルの需要が急減する 。

・同盟国の離反: 韓国、日本、インドなどのアジア諸国は、エネルギー供給を維持するために、アメリカの対イラン制裁を無視して人民元決済に同意せざるを得ない状況に追い込まれる 。

・中国への覇権委譲の加速: イランが自らの意思で「人民元の代弁者」として振る舞うことで、中国は自らの手を汚すことなく、ドル覇権を無力化する実効的なツールを手に入れることになる 。




これはこれで、中東の支配権を失っているのでペトロダラーの崩壊を意味する。






今後の世界の覇権はBRICSに移ってしまうのか、それともアメリカは別の手で覇権を維持できるのか

ペトロダラー体制が綻びを見せる中で、アメリカは原油に代わる新たなドル覇権を維持するための構想をすでに公表している。

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