私は自分は利用していないものの、結婚相談所のシステムにはちゃんと優位性があると思っている。
実際この記事で言及している友人はこのあと見事に結婚することができた。
世間的にはネガテイブなイメージを持たれがちな「40を過ぎた鬼畜系エロ同人作家」という属性の人でも、ちゃんとした結婚相談書に通って、9ヶ月妥協なく活動すれば結婚できたわけで
一般的な仕事についているサラリーマンの人であればなんとかさせるくらいの力はあると思っている。
(まあ彼がめちゃくちゃ賢くてストイックで性格もいい人だという要素がでかかったのは否定できないが……)
一方で、SNS上で見かける結婚相談所系の記事や婚活コンサルはまじで事実に反しているケースが結構多い印象がある。
例えば1つ例を上げてみる。
SNSを眺めていると、婚活界隈では定期的に「一目惚れで結婚した夫婦は離婚率が低い」という話が流通する。

語り口はさまざまだが、パターンはだいたい決まっている。
「アメリカの調査会社によると」「データでわかった」「特に女性から男性への一目惚れだと離婚率が激減する」といった枕詞がついて、感動的なエピソードとともに拡散される。
読んだ人は「そういうものか」と思う。直感と合致するし、ロマンチックで気持ちがいい。リポストされ、いいねがつき、また別の婚活アカウントが同じ話を少し言い換えて投稿する。
問題は、この話の根拠がきわめて薄いことだ。
「アメリカの調査によると」と言いつつ、まともなソースが見当たらない。
辿り着けるのは、北ブリスベンの心理士が運営するポピュラーサイエンス向けのウェブページで、査読を経た科学論文ではない。
自己申告式の小規模調査を参照しているとみられる。
こういうクソみたいなソースしかないのにAllAboutや「数字ラボ」といったサイトが「一目惚れからの離婚率は10%以下」と断言しているが、そこにも一次ソースはない。
どのサイトもソースを記載していないのは、おそらく記載できる信頼性のある出典が存在しないからだ。
一方、「じっくり交際してから結婚した方が離婚しにくい」という方向性の研究は複数の大学から出ている。
エモリー大学のFrancis-TanとMialonによる2015年の大規模調査(米国の結婚経験者3,000人超を対象)では
交際期間が長いほど離婚リスクが下がり、3年以上交際してから結婚したカップルは、1年未満でプロポーズしたケースと比べて離婚リスクが約40〜50%低下するという結果が出ている。
ペンシルバニア州立大学のTed Hustonによる168組の新婚カップルを14年間追跡したPAIR Projectでも婚前交際が平均25ヶ月以上あったカップルが最終的な夫婦満足度が最も高かった。
もちろん、これらの研究も「一目惚れ効果を完全に否定している」わけではなく、あくまで「傾向」を示すものだ。
しかし、信頼性の水準がまるで違う。
一方は自己申告の小規模サンプルを参照したウェブサイト
もう一方は大学が長期追跡したピアレビュー研究だ。
情報の非対称性にもかかわらず、SNS上で広まっているのは前者の方である。
なんでかというと婚活コンサルとかが一生懸命こっちのクソ情報の方を拡散するからだ。
なぜこうした現象が起きるのか。
結婚相談所とデータの本来の関係
結婚相談所の本来の強みは、データに基づいたマッチングにある。
プロフィールの年齢・年収・学歴・価値観・ライフスタイルといった変数を多数収集し、相性が良さそうな相手を絞り込む。
感情や直感ではなく、統計的な適合性を軸に候補を提示する仕組みだ。
実際、大手の結婚相談所はシステムへの投資を続けており、成婚率や交際継続率をKPIとして管理している。
会員が増えれば増えるほどマッチングの精度が上がるネットワーク効果もある。
「出会いの質をデータで担保する」というのが、結婚相談所が婚活市場に存在する根拠のひとつだ。
ところがSNS上の婚活コンサルを見ると、データの話はほとんど出てこない。
代わりに出てくるのは「直感を信じろ」「ビビッときた相手がいい」「一目惚れは本物のサイン」といったナラティブだ。
本来データを武器にすべき業界の人間が、なぜ検証不能な感情論ばかり流通させているのか。
SNSでバズってる婚活コンサルはほぼ間違いなく信用しない方が良い構造的な理由
理由1:バイラルになるのは「感情に刺さる話」だから
SNSのアルゴリズムは、エンゲージメントを最大化するように設計されている。
エンゲージメントが高いコンテンツとは、リポスト・いいね・コメントが多いものだ。
そしてそれらを誘発するのは、論理的に正確な情報ではなく、感情的に共鳴する情報である。
「3年以上交際した方が離婚リスクが約40%低下する(エモリー大学調査)」という情報は正確だが、インパクトが弱い。
意外性がまったくないからだ。そりゃそうでしょという内容だ。
一方で「一目惚れで結婚した夫婦は離婚率がわずか10%!特に女性からの一目惚れだと激減!」という情報は根拠が薄いが、ロマンチックで強烈だ。
その結果後者の方がリポストされ、婚活垢のフォロワーが増え、コンサルへの問い合わせにつながる。
婚活コンサルのSNSアカウントは基本的にマーケティングツールだ。
フォロワーを増やし、認知を広め、有料サービスへの入口にする。
そのためにはバイラルになるコンテンツが必要で、バイラルになるコンテンツは感情に刺さる話でなければならない。正確さはこの目的と必ずしも一致しない。
しかし、これだけが理由ではない。
