ホリエモンAI学校、2026年1月期決算公告、純損失1.02億円、利益剰余金マイナス1.32億円 pic.twitter.com/589d5X34Af
— ありゃりゃ (@aryarya) 2026年6月12日
X(旧Twitter)で、ホリエモンAI学校株式会社の第2期決算公告が話題になっていた。
バズった理由は「資産合計と負債・純資産合計がピッタリ同じ金額になっている、これは怪しい」というコメントが付いていたからだが、これは思わず笑ってしまった。
複式簿記の基本中の基本で、バランスシート(貸借対照表)は「資産 = 負債 + 純資産」になるように作られている。ピッタリ合わないとむしろ大問題なのだ。
ただ、この煽りコメントとは別に、決算書の中身自体は実におもしろい。
実際にチェックしながらホリエモンAI学校がどういう状態にあるのかを見ていきたい。
バランスシートの基本(知ってる人はこの部分は読み飛ばしてOK)
会社の決算書のひとつに「バランスシート(=貸借対照表)」がある。
これは、ある時点での会社の「持ち物」と「お金の出どころ」を一覧にしたものだ。
資産:会社が持っている現金、設備、権利などすべて
負債:将来誰かに返さなければいけないお金(借金、未払い、前払いで受け取ったお金など)
純資産(株主資本):資産から負債を引いた、いわば会社の「正味の取り分」
①この3つには「資産 = 負債 + 純資産」という関係が必ず成り立つ。
これが先ほどの「ピッタリ合うのは当然」の理由だ。

②さらに、純資産(株主資本)の中身はおおまかに「資本金 + 利益剰余金」に分かれる。
資本金:株主が出資したお金。会社にとっては返済義務のない資金で、簡単に減らすことはできない
利益剰余金:これまでの利益(または損失)の積み重ね。
事業が儲かれば増え、赤字が続けば減っていく(マイナスにもなる)
純資産がマイナス=「債務超過」だったり、流動負債が総資産の倍くらいあって面白い
ホリエモンAI学校(第2期、2026年1月期)の数字を見てみよう。
総資産:約1億4,717万円
流動負債(短期間で返済・支払いが必要な負債):約2億7,002万円
固定負債:約760万円
純資産(株主資本):約マイナス1億3,118万円

「資産 = 負債 + 純資産」の式に当てはめると、資産(約1.47億円) < 負債(約2.78億円)となっておりその差額がマイナスの純資産として表れている。
これは「債務超過」と呼ぶ状態だ。
「資本金をしっかり入れた会社が、こんなマイナスになるはずがない」と感じる人は多いと思う。
だが内訳を見ると、
資本金:約1億3,100万円(プラス)
利益剰余金:約マイナス1億3,218万円(うち当期の純損失だけで約1億283万円)
となっており、累積赤字(利益剰余金のマイナス)が資本金のプラスを上回ったことで、純資産全体がマイナスになっている。
資本金は一度入れたら簡単には減らせないが、赤字はどんどん積み重なっていく。
設立からまだ2期(2024年3月設立)の会社が、ここまで大きな累積赤字を抱えているというのが、このバランスシートの最大の特徴だ。
とはいえ、上場企業ではまずお目にかからない形なので「債務超過じゃん!」って言いたくなると思うが設立直後のベンチャー企業、特に教育・サブスク系の事業ではそれほど珍しいことではない。
流動負債2.7億円の正体は「前受金」?
ここからが本題だ。
会社法上、非上場の中小企業が決算公告で開示する義務があるのは、バランスシートの「要旨」だけで
売上高や利益の詳細(損益計算書)は公開されない。
だから「売上がいくらあるか」は、この公告だけからはわからない。
ただ、流動負債の中身は推測できる。
スクール事業でよくあるパターンを踏まえると、この2.7億円の多くは「前受金」、つまり生徒や法人から「将来のサービス提供のために、先に受け取ったお金」だと考えられる。
このホリエモンAI学校の料金設定を調べてみると、
個人向け:入会金約16万円 +月額1.63万円 = 年間受講料が約34万円程度
法人向け:1人あたり年間31万円程度
人材開発支援助成金などを使えば、最大で受講料の75%程度(個人なら最大25万円前後)が補助される設計になっている。
「補助金で実質負担をかなり抑えられる」ことを意識した価格設定だと考えられる。
さらに、フランチャイズ展開も大きな柱になっている。
加盟店は受講料1,200万円+加盟金200万円、合計1,400万円程度を本部に払う仕組みのようだ。
これも一括で入れば、決算上は「前受金」として負債側に計上される。
なぜ「前受金が多い」と赤字になるのか
ここで重要なのが、「いつ売上として計上するか」という会計のルールだ。
受講料を先に受け取っても、その時点ではまだサービス(講座)を提供していない。
会計上は、実際にサービスを提供したタイミングで初めて「売上」として認識する。
決算時点でまだ提供していない分は、売上ではなく「前受金(負債)」として処理する。
つまり、
広告を打って受講者・FC加盟店を集める(広告費というコストが先に発生)
↓
受講料・加盟料を一括で前払いしてもらう(キャッシュは先に入る)
↓
しかし講座提供が追いついていない分は、まだ「売上」にならず「前受金」のまま
↓
結果、コストは先に出ているのに、対応する売上はまだ計上されない → 会計上は大赤字に見える
という構図になる。

これは脱税のような不正な操作ではなく、発生主義会計という普通のルールに従った処理だ。
決算書上の「赤字」と、実際に会社に入っているキャッシュの量は、必ずしも一致しないということがこのケースからよくわかる。