彼が買い煽れば、どんな株でも上がりまくる。そんな魔法使いのような存在として、ここ1年ほど強烈な影響力を持っていた投資家がいる。レオポルド・アッシェンブレンナー。バフェットを遥かに上回るパフォーマンスを叩き出し、投資界隈で話題になっていた人物だ。
ところが最近、この人物が「資金繰りに困っている」と報じられた。
数倍以上に儲けているはずの人が、そこから多少下がった程度で資金難になるものだろうか。
普通に考えれば、10倍になったものが5倍に戻っただけなら、まだ十分すぎるほどのプラスのはずだ。
それなのになぜ、資金調達に奔走するような事態になっているのか。
・そもそもアッシェンブレナーとは何者かという基本的なところから
・直近の開示ポジション
・7月に何が起きたのか
・そして「儲かっているはずなのになぜ困っているのか」あたりについて情報を整理しておく。
1. レオポルド・アッシェンブレンナーとは何者か
まず、初めてこの名前を聞いたという人のために、簡単な経歴を押さえておく。

アッシェンブレンナーは、かつてOpenAIのスーパーアライメントチームに所属していた人物だ。
2024年に同社を解雇されているが、その後に発表した「Situational Awareness」という論文で一躍有名になった。
AGI(汎用人工知能)の到来がいかに近く、それがもたらす影響がいかに大きいかを論じたこの論文は、AI業界の内外で大きな反響を呼んだ。
そのアッシェンブレンナーが設立したのが、Situational Awareness LPというヘッジファンドだ。
AI関連、特にインフラ・電力・メモリ・neocloud(AI専用クラウド事業者)といった領域に集中投資する運用戦略を取っている。
このファンドが単なる「勢いだけの新興ファンド」でないことは、出資者の顔ぶれからも窺える。
Jane Street、Stripeの共同創業者であるコリソン兄弟(Patrick & John Collison)、Nat Friedman、Daniel Grossといった、テック・金融業界で名の知れた人物たちが名を連ねている。

つまり、相応の目利きを持つプレイヤーたちが、このファンドの戦略を評価して資金を投じていたということだ。
2. 圧倒的すぎるパフォーマンスの実態
このファンドの何がそこまで話題になったのか。数字を見れば一目瞭然だ。
2024年後半、数億ドル規模でスタートしたこのファンドは、パフォーマンスと資金流入によって急拡大を遂げる。
2026年5月末時点で年初来+270%程度だったリターンは6月末には年初来+439%(ネット、手数料後)にまで達した。
設立以来のトータルリターンで見ると、+1,000%を超えるという報道もある。

AUM(運用資産総額)も、数億ドル規模から約200億ドル規模へと膨れ上がった。
これほどの規模と成長スピードを両立させたファンドは、ヘッジファンド業界全体を見渡しても稀だ。
「買い煽れば何でも上がる魔法使い」という評判が生まれたのも、この実績があってこそだろう。
3. 直近の開示ポジション——何を、どれだけ持っていたのか
ヘッジファンドの実態というのは基本的にブラックボックスだが、アッシェンブレンナーのファンドについては、ある程度中身が見える。
米国株・オプションの主要ポジションは、四半期ごとの13F提出によって開示される仕組みになっており
熱心な追跡アカウントやサイトがそれを詳細に分析・可視化しているためだ。
2026年第1四半期(直近の開示、5月中旬前後に提出)の13Fによれば、ファンドの公開ポジションはおおよそ次のような構成だった。

主力ロング(買いポジション)
Bloom Energy(BE)——オンサイト燃料電池による電力供給がテーマの銘柄
SanDisk(SNDK)——AIデータセンター需要を支えるメモリ(NAND)関連銘柄
CoreWeave、IREN、Core Scientific、Applied Digitalなど——neocloud、あるいはビットコインマイナーからAIデータセンターへ転換した系統のインフラ株
Nebius(NBIS)——のちに13Gで別途大口開示されたneocloud銘柄ヘッジ(売りポジション)
NVDA、AMD、Oracle、Broadcomといった半導体大手に対する大口プットオプション
つまり、電力・メモリ・neocloudという「AIインフラの川上」に強気の集中ロングを持ちながら
半導体大手という「川下」側には一部プットでヘッジをかける、というペアトレード的な設計になっていたことがわかる。
なお、これはあくまで公開されている米国株・オプションの部分に限られる。
報道によれば、ファンド資産の約2割はAnthropicなど非公開企業の株式で構成されているとされ、そちらは開示対象外だ。
彼のポジションを追跡できるサイト
すべての保有銘柄が一覧できるサイト
https://13fai.com/funds/situational-awareness-13f-holdings.html
ダッシュボード形式で分析しているサイト
https://tracefour.com/trackers/aschenbrenner
公式HP。最新情報は5月18日
4. 7月の急落——開示ポジションで何が起きたか
そして7月、状況は一変する。