頭の上にミカンをのせる

もうマンガの感想だけでいい気がしてきた

「炎上」という言葉の解像度の低さがもたらす弊害を理解したい

インターネットで何かを発信していると、こういう場面に出くわすことがある。

「特に間違ったことを言っているわけではない」
「事実に反しているわけでも、誰かを傷つけているわけでもない。」

それなのに、大量の冷笑的なコメントがつく。皮肉、上から目線のツッコミ、揚げ足取りのようなリプライが積み重なっていく。

そしてある一定の量を超えると、それは「炎上した」と呼ばれるようになる。

ここで奇妙なことが起きる。

「炎上した」という事実だけが独り歩きし、「では発信者が何か悪いことをしたのだろう」という推定が働き始めるのだ。

本来であれば、間違ったことを言っていない相手に対して冷笑でマウントを取りにいく側のほうがおかしい、というのが筋のはずである。

しかし日本のネット言論では、なぜかそちらが問われることは少ない。

この歪みがなぜ起きるのか、しばらく考えていたのだが、行き着いた答えは意外とシンプルだった。日本語が「炎上」という言葉しか持っていないから、ではないかということだ。




「炎上」がすべてを吸い込んでしまう

試しに、日本のネットで「炎上」と呼ばれている現象を分解してみると、実際にはかなり性質の異なるものが混ざっていることがわかる。


  • 正当な批判が集まっているだけのケース
  • ただの冷笑や皮肉が集中しているだけのケース
  • 誤解や文脈の切り取りに基づく攻撃のケース
  • 意図的な煽りに対する反応として広がったケース
  • 単なる意見の対立が可視化されているだけのケース

これらはどれも「炎上」の一言で片付けられてしまうが、本来は全く別の現象である。
正当な批判と、根拠のない冷笑と、誤解に基づく攻撃を、同じ言葉で呼んでしまえば、区別がつかなくなるのは当然だ。

そして区別がつかないまま「炎上した」という結果だけが可視化されると
「ネガティブな反応がついた=発信者が悪い」という短絡が自動的に発生してしまう。
本来なら「これはどのタイプの炎上なのか」を問うべきところを、「炎上した」の一言で思考が止まってしまうのである。



一時期は企業もこのことに対応がしきれずに炎上が起きただけで弱腰な対応を取るようなケースもかなりあったし

とにかく難癖をつけて炎上を起こせば要求が通ったり、正義側に立てると勘違いした集団が増長して様々なトラブルを起こすケースもあった
(2016年~2019年ころのツイフェミや、その反対側のアンチフェミなどがとてもわかり易い)


英語圏はもう少し語彙を持っている

この点で参考になるのが、英語圏における語彙の細かさだ。

ここでは一つ一つを深く解説するつもりはなく、あくまで「これくらいのグラデーションがある」ということを知ってもらえれば十分だと思っている。


1️⃣まず、起きている現象そのものを指す言葉

そもそも「炎上」という、最初っからネガティブな意味を持つ言葉を当てはめようとしない。

controversy(賛否の分かれる論争)という言葉がまずベースになる。

日本語だと炎上がおきた時点ですでになんか火元が悪いみたいな雰囲気があるが、あくまでこの時点では「議論が起きている」という扱いだ。



そのうえで、「なぜその論争が起きたのか」という原因で分類が行われる。

backlash(強い反発)、outrage(怒りの爆発)、scandal(実際に問題のある行為が発覚した場合)、discourse(単なる議論の応酬)などがある。

これらは「炎上」と一括りにされがちな現象を、性質ごとに切り分けている。


2️⃣次に、コメントする側の態度を指す言葉もある。

ベースはsnarky(皮肉っぽく見下す)だ。

そこから以下のように分類される。

sneering(鼻で笑うような態度)、cynical(冷笑的)、condescending(上から目線)、smug(自己満足的な訳知り顔)といった言葉が、状況に応じて使い分けられる。

「冷笑する側」にもちゃんと名前がついているということだ。

はてブ民は普段は小心者のなのに「炎上」を見つけたら急に気が大きくなるカスみたいな性質を持つ人が多いが、自分の行為をちゃんと見る鏡はあったほうがよいだろう。



3️⃣さらに、発信者側を分類する言葉も豊富にある。

もちろん、発信者側に問題があることは多い。ただこれについても今までは「どう問題なのか」を説明する語彙が少なすぎた。

意図的に論争を狙うprovocateur(煽り屋)、怒りを煽って反応を稼ぐrage-baiter、過激発言で注目を集めるedgelord、論争を金やフォロワーに変えるgrifter、単に反応を楽しむtroll、極端な意見でバズを狙うhot take artist、誠実に議論する気のないbad-faith actorなど。

なんでもかんでも全部等しくあつかうと、より悪質なやつが得をする。

ちゃんと分類して、より悪質なものをちゃんと認識すべきだ。

このあたりの区別をせず、ただ自分の快楽のためにどんなものでもひとしくぶん殴るだけの無思慮極まりないはてブ民の行いは、意図せず炎上した人を殺し、「炎上させようとして炎上した人」をより増長させている。

はてブ民は正義心・・・はもともとないだろうが、いずれにせよ彼らがやってることは悪を増長させる行為であり、はてブ民そのものが悪である。

ともあれはてなブックマークは滅びるべきである。




動機や振る舞いの違いごとに呼び方が変わる。

つまり英語圏では、「何が起きているか」「誰がどう反応しているか」「発信者はどういうタイプか」という三方向から
現象を立体的に見る語彙が用意されている。


日本語の「炎上」が一枚岩で覆っている領域を、複数の言葉で分割して見ているようなイメージだ。



こうして言葉を知ってみるだけで、日本人はネットの言論空間で起きている減少に対する解像度がやたらめったら低いということがすぐに理解できるだろう。


この語彙の少なさに寄る解像度の低さのせいで、インターネットにおける議論は極めて不毛なものになりがちだ。


議論において、正確に事象を切り分けてくれる言葉は交通インフラのようなものであり、インターネットにおける日本人の言論空間は、先進国とは思えないほどのインフラ整備の弱さを示している。


欧米だけでなく中国でも日本と違ってちゃんと言葉があると思わせる記事も話題になっていた。 

note.com



この交通インフラの未整備さで恩恵を受けるのはせいぜい「ひろゆき」みたいにしたり顔で交通整理の役を勝手にやろうとするネット論客の方々くらいであろう。



みんな、言葉を持たないから、いつまでたってもゼロから考えるしかない。

何度でも何度でも同じような事例を見ては好き勝手に言葉を発するだけ。

そこから何も積み上げることなくまたリセットし、一向にレベルアップしていかない。


賽の河原みたいな不毛な時間を永遠にすごすだけだ。 



それにしても、なぜ日本では世界で一番多くの人間が毎日毎日インターネットで言葉を紡ぎ続けているのに語彙が育たないのか?

ではなぜ日本語では、これほど便利な言葉が一つしか定着しなかったのか。

いくつか理由が考えられる。

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