2012年8月に改正され、2013年4月から施行されている改正労働契約法。当時もさんざん「これ絶対悪用されるよね」と話題になってましたね。
個人的には楽観視してたのですが、実際には悪用?する企業が出始めているようです。
月270時間無給労働で使い捨て!「ガイアの夜明け もう泣き寝入りしない!~立ち上がった働く若者たち」(井上伸) - 個人 - Yahoo!ニュース
5,000人をこえるバイト・パート従業員に対して、改正労働契約法の悪用と、「鮮度が落ちる」という驚くべき理由で不当な雇止めを強行。
(後に書きますが「悪用」というよりは、改正労働契約法についてちゃんと理解されてないような気がします)
労働契約法の改正の基本的に内容はこんな感じです。
労働契約法改正のあらまし|厚生労働省
改正労働契約法は改善なの?改悪なの? - トランジスタ経営コンサルタントのメルマガコラム - Yahoo!ブログ
労働契約法改正まとめ 無期転換ルール7つのポイント - 人事労務コンサルタントmayamaの視点
「有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため」の改正だそうです。今回の改正労働契約法のポイントは3つあります。
①無期労働契約への転換
有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みの導入が必要となります。
②「雇止め法理」の法定化
「雇止め法理」が明文化されました。有期労働契約反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態の場合や、有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき合理的期待が認められる場合に雇い止めが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新されたものとみなされます。
③不合理な労働条件の禁止
有期労働契約者と無期労働契約者の労働条件の相違に不合理な点があってはならないことになりました。「同一価値労働同一賃金」という視点です。
その企業の契約社員の位置づけ、無期転換後の位置づけをはっきりさせた上で労働条件を就業規則、規程、雇用契約書に明記し、社内の転換ルールをはっきりさせなければ後々トラブルの火種となります。雇止めの有効性の判断もますますシビアになってきますし、今回改正点の「不合理な労働条件の禁止」とも関係してくるところです。
これについて、結局この改正によって状況は良くなるのか悪くなるのか、というところがよく議論されたのですが、私はこれについて、結構楽観視してました。雇い止め法理の明文化が大きく、全体としてはパートの人たちの状況は良くなるというか、企業がちゃんとパートの人を使い捨てではなく会社の一員として考えるようになると思ってたところある。
改正労働契約法への企業の対応: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
日本と欧米の雇用システムと問題点 - 文人商売
最近文人商売さんの記事でメンバーシップ型とジョブ型の働き方の違い及び日本の労働者の特殊さについて話題になっていましたが、この労働契約法改正は、ジョブ型の働き方導入への転換のきっかけになりうるものとして考えていました。
「改正労働契約法への反応が浮かび上がらせる日本型正社員感覚」 @『月刊社労士』5月号: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
日本の特殊性は、無期契約でフルタイムで直接雇用であれば「正社員」であるとは言えないところにあります。パート法8条1項に裏側から規定されているように、日本の「正社員」(パート法上は「通常の労働者」)とは「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が・・・変更すると見込まれるもの」なのです。 職務や勤務場所が決まっていないのが「正社員」なのですから、有期契約労働者が無期契約になっただけでは「正社員」にはなりません。今回の改正では、無期化しても労働条件は同一とわざわざ明記していますから、これは日本型「正社員」とは異なる無期契約労働者になったということのはずです。それは、日本以外の国の普通のレギュラー・ワーカーと同じということでもあります。わたしはそれを「ジョブ型正社員」と称し、会社のいうがままに働きすぎになりがちな「正社員」とは異なるオルタナティブとして提示してきましたが、現実の労働社会が日本型「正社員」と非正規労働者に両極化されている状況では、その導入はなかなか難しい面があります。もし労働契約法改正で入口規制が導入されていたとしたら、またもや有期契約でなければ日本型「正社員」でなければならないという不毛な二者択一が出現した可能性もあります。その意味で今回、入口規制なしの出口規制で、有期契約から転換される非日本型「正社員」タイプの無期契約労働者が明確に出現することになるわけで、ある意味では怪我の功名とも言えるのではないでしょうか。
ところがまぁ、この件はてブで追いかけていると、「悪用」の件ばかり話題になる。解説もその「危険性」ばかりまとめているものが多い。
無期雇用労働者を増やすはずの「改正労働契約法」がなぜ「5年有期雇い止め促進法」になってしまうのか
労働者派遣法の大改悪に反対する共同をよびかけます――「生涯ハケン」、「正社員ゼロ」社会への暴走を許さない
《5年で雇い止め》労働契約法改正、改正高年齢者雇用安定法のポイント - NAVER まとめ
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早くも表面化。労働契約法「改悪」の余波 - 人事労務コンサルタントmayamaの視点
http://www.recordchina.co.jp/a73793.html
全体的な実態として、どっち方向に進んでいるのかはわかりませんが、どうしても悪い印象を持ちつつ有ります。全体的な実施状況の統計データとかがみたいです。大局的にはどっち方向に動いているんでしょうか・・・。
ところで「悪用」の実例についてですが今回の(株)シャノアールの件を見ても他の例を見ても、「5年越えたらパートや派遣を正社員にしないといけないけど、5年越えてなければ今までどおりいつ解雇してもいい」という勘違いをしている経営者の方が問題を起こしているだけのような気がします。
シャノアールは、「バイト・パートに休まれると店舗が回らなくなる」と労働強化をつづけていたのにかかわらず、“雇用の安定を図る”という法改正を脱法的に逃れるため「4年で使い捨て」を強行した。
とありますが、脱法的に逃れるためと書いてますが、こういう抜け道を許さないようにするために今回の雇い止め法理の明文化があるはずです。多分経営者の方は、そこを理解してないか、あえて無視してる気がします。そもそもこの会社の労働実態をみると、明らかに経営者の都合で恣意的にルール改変が行われており「就業規則」がないのではないように思われます。就業規則がないこと自体は違法ではないですが、そんな会社では正社員であろうがなかろうがろくな扱いを受けない気がします。
有期雇用 上限5年の法改正を批判する - 人事労務コンサルタントmayamaの視点
結局のところ、法律を軽視して、自分の都合の良いように従業員を扱う「ブラック企業」の経営者を野放しにしたままで労働契約法を改正しても、「そもそも法律をちゃんと理解するつもりがないし」「理解してたとしても知らないふりをして勝手な解釈で悪用する」ということなんじゃないかと思います。
このあたり、財政改革を進めようにも、結局利権に群がって甘い汁をすおうとする人々を駆除するのが先だ、という議論と似ている感じがしますね。まだ自分の意見を強くいうほど情報が集まってないので保留しますが、この件は結構興味深くウォッチしてます。