「グリザイアの果実」13話はオリジナル展開でしたね。
相変わらずのシリアスの皮をかぶった超頭の悪いシナリオ(褒めてます)でとても満足です。
さて、続編が発表された今後のグリザイアシリーズについて
グリザイアの迷宮は主人公の過去編
「グリザイアの迷宮」では主人公の過去編として、くっそ重たい設定などシリアスな展開がベースとして提示されます。
シスコンで純粋なショタの男の子の魂がどんどん過酷な現実によって汚されていく過程は、一部の層の方々が鼻血を出して興奮される出来になるのではないかと想像されます。
逆にその後「果実」において存在をほのめかされていた「師匠」「麻子」さんが登場してくるので、今度はまた別の層の方々が興奮されるのではないかと思います。
とまぁ、いろいろ過去があって「果実」に続き、その後「果実」の後日譚として「楽園」に突入するわけです。
過去編から「楽園」に至る際に発生する逆転現象
さて、「果実」では、雄二がヒロインの女の子を救っていくという、昔ながらのギャルゲー構造を踏襲したものになっています。主人公の心の問題を投影したかのようなヒロインの問題を解決することによって、主人公の心も癒やされ、そして二人は幸せに…という展開ですね。
ですが「迷宮」を経由して「楽園」にたどり着いた時にはこの構造が逆転しています「あれ、これって雄二くんが全然救われて無くね?」「一番助けなくてはいけないのって雄二くんじゃね」となります。
そして、この感覚を後押しするように、とある事件が起こり、そこでは雄二くんが救われるべきヒロイン的ポジションになります。そして、それを、かつて雄二に助けられたヒロインたちが「とある存在の助けを借りて」助けに行くという展開になります。
この「男が女を救っちゃうんだぜ」な作品ばかりのergに対して、別に「女が男を救ってしまっても構わんのだろう?」という逆転現象がおきるのが、このシリーズの特徴です。ergだと結構珍しいと思います。
というわけで、ここから先は「男が女を守って活躍するタイプの厨二病」は一旦終わり、ここから先は「厨二病の担い手は女の子」な展開になります。
さて、迷宮からはそれなりに暗い雰囲気で、シリアスに推移していた展開は、一転してわけのわからんハイテンションとなり、荒唐無稽なシナリオをむりやりゴリ押ししてくことになります。ギャグ展開でないと納得出来ない無理のある展開やコミック力場が発生しますが、いいんです。やってるのは女の子だから。かわいいは正義!
…これが有りと思えるか、ないと思えるかでグリザイアの評価は大きく変わると思います。「迷宮」はまぁだれでも楽しめると思いますが、「楽園」は正直かなり人を選ぶかな、と。私としては、ただ「果実」のヒロインが暴れるだけの作品だったらそんなに好きじゃなかったと思う。(ファンの人には申し訳ないけど、私「果実」の5人のヒロインですきなキャラ一人もいないんですよ…。エンジェリック・ハウルに出てきたキャラのほうがよほど好き)
それでも私が「楽園」好きな理由は
このシリーズの最大の魅力はあくまで「楽園」で登場する、とある人物
(※個人の感想です)
とはいえ、グリザイアの「果実」のヒロインは、変なやつばっかりですが、別に強いわけではない。散々強キャラとして描かれた雄二を上回る力を持つ相手に、単にヒロインが力をあわせた程度で勝てるわけがありません。
いくらギャグ補正やコミック力場を活用しても限界があります。
そこでヒロインたちを助ける存在が必要になるわけですが、その存在こそが、この作品の最大の魅力になります。
風見一姫です。
生きてます。
エンジェリック・ハウルの時は天才ではありつつも、環境のせいもありまだその能力を発揮しきれなかった一姫ですが、「楽園」でようやく本領発揮です。チート全開です。
「果実」のヒロインは雄二を救うために頑張ります。確かに彼女たちがいなければ雄二は救えません。ですが、雄二を真の意味で救うのは、お姉ちゃんこと一姫です。風見一姫なのです。
そう、この作品は「一姫の、一姫による、雄二を救済するための物語」だったのです。
グリザイアの果実ではまるで「魔法科高校の劣等生」の司のように万能に見えた雄二。
でも実は彼は心に大きな穴を抱えており、死に向かっていた。
さらに、本人に生きる意志があっても、世界がそれを許さない。
雄二の力だけではどうしても過去の束縛からは逃れられない。
このままではどうやっても、雄二は助からない。
そういう状態を救えるのは、世界でたった一人、お姉ちゃんだけだったのです。
そのお姉ちゃんこと風見一姫が、全てをかけて愛する弟を救うために執念でありとあらゆる準備を整えて、雄二を救うために世界を敵に回して戦う。それが「グリザイアの楽園」、ひいては「グリザイアシリーズ」のスタートラインなのです。
完璧で在り続けた姉に、決定的な矛盾が発生した瞬間だった。
ここまで弟を溺愛してしまえば、もう変わることは出来ない。
変わることが許されない。
自分を帰ることが出来ないのなら、周りを変えればいい、世界を作り変えればいい。
その瞬間、この世の全てが、何もかも、全部、どうでもよくなってしまったのだ。
新しく世界を作り変えることができればいいと思った。
この世に楽園なんてない。
なければ作ってしまえばいい。
弟と、自分の為に、新しい世界をつくろうと、姉は決めた。
そのために、ここまでの苦労を1から組み立て、実行したのだ。
さらにいうと、お姉ちゃんはあくまで準備を整えるだけで、雄二に選択を与えるのですが、雄二がどういう選択をするのがは作品をプレイしてのお楽しみ。
私は「カルタグラ」の上月 由良のように、頭が良くてかつ執念がめっちゃ強い人が好きです。
(逆にただのヤンデレは嫌いです。頭の悪いヤンデレは最も嫌いです)
そんなわけで、一姫というキャラの存在だけで、とても満足する作品です。
「エンジェリック・ハウル」で一姫が好きになったとか、一姫にもっと活躍して欲しかったのに、物足りない、という人は是非に「楽園」までプレイしましょう!
蛇足。
正直、「楽園」のテキストは大味すぎて好きになれません。一つ一つまじめに読んでたら発狂しそうになるくらい頭悪くて無理のある展開がたくさんあります。「魔法科高校の劣等生」の方がよほど真面目だ、と思えるほどです。読む人の厨二病に対する寛容性だとか、「面白ければ細かいことはいいんだよ!」と言い切れる悟りのような心が要求されるのではないかと思います。
私は、申し訳ないけど「迷宮」や「楽園」における細かい描写やギャグ展開などは読むのが苦痛すぎて飛ばしたのであまり把握してません。もはや私はそこまで厨二力は高くないのでした。
大事なのは何を描きたかったのか、です。それでもそういうリアリティ度外視の、ともすれば白けるようなテキスト描写を持ってしてもたどり着きたかった、このシナリオの終着点は結構好きなのです。
このあたりを、アニメでどう映像化するかはとても楽しみにしております。