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「うみねこのなく頃に」は、発売直後は「手品エンド」のほうが評価が高かったというお話

今週前提によって作品の評価が大きく変わる、という話を書いたのですが
ネットにおいては同じ話題でも情報格差が大きすぎると全く意見が異なってくるという話 - この夜が明けるまであと百万の祈り

この「人によって評価が大きく変わる」というのが最も如実に出ているのが、今頃になって自分の中でブームが来ている「うみねこのなく頃に」ですね。

この作品、当初はかなりボコボコにたたかれた挙句「手品エンドのほうが良い」という人が多かったのです。

【うみねこのなく頃にEP8プレイメモ:07】 手品と魔法 - 雛見沢研究メモ(仮)

「手品」ルートは、唯一縁寿が生き残る可能性のあるルートなんじゃないかと思ったりします。非常に厳しい展開になるでしょうけど、それでもまだマシかも。梨花でいうと、皆殺し編ぐらいの展開ですかね。

「魔法」ルートでは、もっとアッサリ殺されるんじゃないかと思うんですよね。別に事故死や病死でも構わないんですけど、やっぱ殺人の方がネタとして面白いですし。例えば……「海の見える町」についた段階で、天草がやっちゃってもいいですし、幾子が轢いてもいいです。こっちもやっぱり1998年に縁寿は死ぬと。「魔法」ルートは「魔法」だけあって、その事件がウソで塗り固められているのを見せられているという感じです。

なぜこのような批判になっていたかというと、「魔法エンド」がこの作品のテーマとして「白い魔法」を描き切れていなかったからだと思います。(読者が、作者のいじわるに負けずに推理して真相を理解した場合のみ、白い魔法エンドを体感できる)

原作の魔法エンドは「白い魔法」というよりは「黄金の魔法」止まりだったような気がする……


【ネタバレあり】漫画版「うみねこのなく頃に」Episode8が素晴らしかったので、いいところも悪いところもまとめて語りたい。 - うさるの厨二病な読書日記

うみねこ」が批判される原因のひとつは、「作者が持っていきたい方向への、アンフェアな誘導」を行っている点にあると思う。(縁寿が作内で指摘している通り。)

(中略)

自分の考えでは、

①「絵羽犯人説」=「黒い魔法エンド」
②「留弗夫・霧江犯人説」=「手品エンド」
③「(一なる真実の書を読んでも、なお)何もなかったと信じる」=「白い魔法エンド」

である。今までの物語や読者を信じて、この三択で選ばせて欲しかった。

この通りかなとおもいますね。


個人的には②と③の間に「真実を知っている人が、優しい嘘で真実を隠ぺいする」という黄金の魔法があると思っており、原作の二択は「手品エンド」と「黄金の魔法」エンドになってましたよね……。エピローグでは縁寿が「白い魔法」を選び取り、生き延びた可能性が高いわけですが、これは作者がプレイヤーにつきつけた二択と関係ないんですね。だって、プレイヤーには「黄金の魔法」しか選ばせてくれなかったんだから。


「黄金の魔法」は当事者の自己満足どまりであり、それで終わるのはプレイヤーにとっては不誠実だったと思いますね。
ねこねこブログ : 雛見沢研究メモさんのうみねこEP8解釈が素晴らしい。推理小説のメタ推理「作者の作風から推理する」うみねこ=笑ゥせぇるすまん。 - livedoor Blog(ブログ)

『愛がないから見えない』の言葉の意味がやっと分かったような気がしてきました…。つまり、キャラクター(殺人の犠牲者達)に愛がない=真相を必要としない読者にとっては、『愛がないから見えない』終わり方はハッピーエンドになる…。でも、真相を解き明かそうとした読者、『愛があるから(殺人事件と犠牲者が)見える』読者にとっては、究極のバッドエンド…。

もちろん、原作だけでも「魔法エンド」を選び取ってる人はいましたが、こういう人は、自力で推理を重ねて「真実」にたどり着いたからそういうことが言えるのであって、真実にたどり着くことなく「黄金の魔法」で真実の追及を否定されたら、そりゃ怒りますよね。

読者をここまで導くことなく「愛がないから見えない」だの「恋をしたことがない人には理解ができない動機」だの言いだして、無理やり魔法エンドを選べって言われても……ってなりますよね。

私は先人たちの考察の恩恵を受けることによって、原作だけでもこれは素晴らしいな、と思うことができるようになりましたが、私一人でプレイし終わったときは「どっちの選択肢も微妙…どっちかといえば手品エンドのほうがつらいけど納得はできる」となっていました。



マンガ版まできて、ようやく読者が誰でも「白い魔法エンド」に到達することができるようになったのが本当に素晴らしい

そういう意味で、マンガ版は、読めば誰でも「白い魔法エンド」に到達できるようになっています。

僕にとっては答え合わせを楽しめましたし、明かされない物語を隅から隅まで楽しめた原作と明かす事による王道なミステリー的面白さを味わえた漫画版。どっちも僕は好きです。まぁどっちかというと原作の方が思い入れがあるので好きなんですけどw

僕はEP8は「答え合わせのゲーム盤」ではなく「縁寿の心を追う、ただそれだけをやるべきエピソード」と思ってるので原作の方が好きです。

漫画版の8巻は縁寿がやっとあの境地に至ったのが凄く感動的で好きです。真実を知るからこそ、魔法が視えるようになるんですよね。戦人が紡いだ86年の物語は魔法だったんだと。魔法には当然手品という真実がありますけど、真実を知るからこそ分かる魔法の温かさ。

実は「白い魔法エンド」は、「黄金の魔法エンド」と違って「手品エンド」を内包しているのですね。そもそも二択にならない。 単に嘘で真実を隠すとか目を背けるということではなく、真実を受け止めたうえでそれでも「幸福」になれる選択をするってことです。

さらに言えば、真里亞のエピソードを見れば「白い魔法」を理解して使いこなせていたとしても、それだけでは、魔法を共有しない人間に簡単に踏みにじられます。それを真の意味では有効にするために「自分だけ幸せになればよい」という自己満足なものではなく、周りの人にも目配りをした上で、広い目線でそれが有効となるようにする。そのためにも「白い魔法」を使う人間は、真実を直視する必要がある。


①真実(手品エンド)だけでは生きるのがつらい。
②しかし「真里亞の白い魔法」は不完全だった。
③「黄金の魔法」だけでは自己満足にすぎない。
④ヤスのように「黒い魔法」に染まってはみんなが不幸になってしまう。


マンガ版のEPISODE8では戦人(八城一八)の助けを借りて「白い魔法」を完成にまで導き、それを選び取る。そういうことがちゃんと感じ取れる内容になっているのがとても良いです。
そういう意味で、うみねこの原作を長時間かけてプレイしたにも関わらず不満を感じている人は、本当にEpisode8だけでも読んでみてほしいなと思います。



事件の推理部分に関して興味ある人は、マンガ版Episode7と合わせて私の記事も読んでみてくださるとうれしいです。

……さて、残りはEpisode5~6だな。最後までガンバロウ。








それはそうとして、これ面白そうだから読んでみたいです。

うみねこのなく頃に」と同じ終わり方しているミステリがあります。これは非常に後味の悪い不気味なミステリなので、その分、うみねこに比べると正道というか、捻ってはいない直球ミステリですね。

小林泰三「妻への三通の告白」です(短編集「肉食屋敷」収録)。

うみねこをプレイしたプレイヤーさんは、読んでみるのも一興かと…。うみねこと同じこと(正しい真実よりも誤った幻想を自己の幸せの為という理由で選ぶ)を描きながら、全く違った読後感覚を受ける作品なので、うみねこ的思想(正しい真実より誤った幻想の方が重要という思想)に対する良い解毒剤小説でもあると思います…

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